新たに造園された日本庭園
現在、羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事が暮らす総領事公邸。総領事が暮らす場所であるだけでなく、レセプションや食事会などを開催するなど、外交の場でもある。天気の良い季節には公邸の庭園を会場として利用したりと、庭園も重要な役割を担っている。
羽鳥総領事に公邸の日本庭園を案内してもらった。
「今回、造園することになったのは、植栽した草木が成長して庭が荒れていたり、老朽化した部分もあって、メンテナンスが必要だったりしたからです」と羽鳥総領事は説明した。公邸は日本文化を紹介して、日本に親しみをもってもらい、さらに関係を深めるための場でもある。そのために、本格的な日本庭園を造営しようということになり、計画が進められた。
数社に見積もりを取った後、業者を選出。その後、造園案を出してもらい、総領事館スタッフの声を聞いて決定したという。
コンクリートから石畳のアプローチに
公邸の敷地に足を踏み入れたときに、まず目に入るのが、玄関まで続く石畳のアプローチだ。大小の乱形石を配してあり趣きがある。不揃いな石を敷き詰めているため、施工した人のセンスの見せ所だと感じた。
アプローチ部分の工事を行っているときは、石を切る機械を搬入して、カッターの音がずっと鳴り響いていたという。とても手間のかかる作業だったようだが、魅力的な仕上がりになっている。
もう一つ目を引くのは、庭の奥にチラリと見える竹垣だろう。羽鳥総領事は「公邸の建物が西洋風であるため、外国のゲストが訪れたときに、和を感じさせるものが見えるようにしたいと思い、この竹垣を設置しました」と語った。「比較的大きな竹を使っているので、曲げるのが難しかったそうです」
そして日本庭園の入口にあるのが、おなじみの鹿威しだ。涼やかな水音に心が洗われる。前述の竹垣の竹、そして飛び石やつくばいなども全てカナダの業者から調達した。
「つくばいは茶道の大切なアイテムで、配置などは流派によって異なるため、できるだけ一般的なものをお願いしました」(羽鳥総領事)
裏庭へのアプローチも石畳になっていた。洋館と日本庭園とのバランスをとるため、目隠し代わりに笹を植えたそうだ。
裏庭に入ると、枯山水の庭が迎えてくれる。大きな石を配して、水を使わずに滝を表現。静けさを感じさせられ、心が落ち着く。
池を模した部分。この枯山水の向こうに、実際の池を作るという話もあったそうだが、かなりの面積が必要となり、芝生部分の4分の1ほどを潰してしまうことになる。つまりは屋外でレセプションを開いたときの収容人数に関係してくる。
さらに水のある池となるとメンテナンスの問題もある。総合的に考えて、池造りは実現しなかったという。
海外から日本の城を訪れる人の多くが、感銘を受けるのが石垣。公邸にも今回石垣を築いて、日本の石積み技術もアピールする。
コンクリートに石を埋めていくだけのところが多いが、実際に石を積んで造った。
石垣は土を止める役割も果たしていて、さらに石を積んで隙間があるために空気も届く。羽鳥総領事は「石垣をバックにパフォーマンスしてもらうこともできますし、背景と考えても魅力的です」と語った。
海外の日本庭園となると、中国っぽくなることもあるので、バンクーバー日系ガーデナーズ協会に依頼し、純日本風になるようにしたそうだ。
日本庭園は今年3月に完成した。春から夏にかけてガーデンレセプションでお披露目をしたかったのだが、大勢で集まることができないため、小規模な会食などで訪れた人に見てもらっているとのこと。「早く新型コロナウイルス感染が収束して、より多くの人に日本庭園を楽しんでもらえる日が来て欲しいと思います」
(取材 西川桂子)
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