カナダde着物
第9話 季節*歳末
今年もあとわずかとなりました。今まで経験したことのないコロナ禍の中での冬を迎えております。まだまだ予断の許さない状況とは理解しておりますが、この現実の中でも「いつも心に花束を…」と思いながら、静寂と平安の中で年末年始を過ごせたら幸いです。
「年末年始に映える着物姿」
年末年始は1年のうちでも一番着物が映える時かも知れません。忙し時期でもありますが、少し頑張って着物で出掛けましたら、気持ちは着る前とかなり違うと感じられるかと思います。
人が精神的に影響されるものは、自分から一番近いものだそうです。ということは、毎日身にまとうものに私たちは何かしら影響を受けているということでしょうか。制服姿などは、その職業になりきることができますね。どこか演じているようでもあります。
着物姿の時は他の自分になれるのかも知れません。年末年始はいつもより少しだけ華やかな着物を選んでみませんか。表情などが変わると同時に肌の色つやも明るくなると思います。
「ハレとケ 日本人の心の習慣」
日本には”ハレとケ”(*1)という考え方が生活の中にあるようです。ハレが非日常で、ケが日常となります。良い日もあれば上手く行かない日もある。それでもハレの日は華やかに過ごすことで、ケガレを落とし、また日々の生活を繰り返していくという、古くからの日本人の生き方なのでしょう。
”晴れの日”とも呼ばれる中で代表的なものは、結婚式、成人式、七五三などですね。あとは昔ほどではないのですが、宗教的な儀式を通してハレの場を一生のうちに何度か経験するかと思います。もちろんハレばかりでもメリハリがなく、つまらないものになってしまいます。ケと言われる日常があっての晴れの日なのですね。ちなみにお葬式はケガレと呼び分けているようです。
ハレとケという感覚は着物にも深くかかわりがあり、目的によって着物の種類を分けてきた日本人にとっては、ドレスコードの基本となります。私もそれを意識して日々の着物選びをしております。
さて、当地カナダ事情はどうでしょうか。私はカナダに移住してから、夫のルーツであるヨーロッパ系の慣わしや儀式を教会ですることが多いです。カナダの皆さんは、儀式といっても参加者はビジネスぐらいの装いで、ネクタイ姿が正装に見えるほどカジュアルで気楽な感じですね。
日本人ほどハレとケという感覚は強くはないようです。私が一番に思いつくのは、カナダでは隣組のようなコミュニティーはないので、町内のお祭りなどはほぼ皆無です。「隣は何をする人ぞ…。」という感じで、コミュニティーは各自のバックグランドや宗教別で、それぞれが集まっているように見えます。
もしかして、そのグループの中ではハレとケというような習慣があり、それぞれの儀式や活動ではそれに伴い民族衣装などを着ているのでしょうか。
私が始めました”和の学校@東漸寺”では、まさに日本の歳時記を通してハレとケを継承する活動をしております。今年の夏は中止になりましたが、お寺でのお盆参りや過去にしました子どもの地蔵盆などは、普段着ない浴衣や着物で盆踊り、スイカ割り、お茶会をして、ハレの日を楽しむものです。
コロナが収束し、皆さまと集まることが可能になりましたら、”ハレとケ”に習い、また年中行事をしていきたいと思います。皆さまも是非ご参加くださいませ。
「ハレの日の着物」
コキットラムにあります東漸寺では、残念ながら今年の大晦日の除夜の鐘、元旦の初詣は中止及び延期となりました。いつもですと何百人の参拝者で賑わうそうです。これからの状況によりますが、またお寺が再開した際には着物でお参りにお出かけしてみませんか。
そうです。ハレの日の着物ですね。着物と帯、どちらもおめでたい柄は沢山あります。その中でもお正月に合うものは、松竹梅、橘、南天、宝づくし、鶴亀などの文様が代表的なものでしょうか。華やかで格式高い図柄は、周りの皆さんにもとても喜ばれることでしょう。
「ゆく年くる年」
今年は多くのイベントや行事がキャンセルになり、着物どころか洋服でも出かけられない日々でした。2021年はどのような年になるでしょうか。丑年は「我慢(耐える)」、「これから発展する前触れ(芽が出る)」というような年になるといわれているそうです。
新しい年が皆様にとりまして 幸多き年となりますよう心よりお祈り申し上げます。
コナともこ
(⋆1)ハレとケ 暮らしの歳時記より http://www.i-nekko.jp/
古来より、日本人は、普段通りの日常を「ケ」の日、祭礼や年中行事などを行う日を「ハレ」の日と呼び、日常と非日常を使い分けていました。「ハレ」の日には、晴れ着を着たり、神聖な食べ物である餅や赤飯を食べたり、お酒を飲んで祝ったりして、特別な日であることを示します。古来より、日本人は、木にも火にも水にも神様が宿っていると感じ、これを「八百万の神」といって大切にしてきました。そして、身辺で起こるよいことも悪いことも、神様のおかげ、神様のせいと考え、人々は祭り(祀り)をつかさどるようになりました。祭りの華やかさ、行事の晴れやかさ、ケガレを落とした後の清々しさが「ハレ」であり、「晴れ晴れ」「晴れ着」「晴れ姿」など「ハレ」の気持ちを表した言葉がたくさんあります。
コナともこ
アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
10年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。
カナダ人の夫+高校生と大学生3人娘+老犬1匹と暮らしております。バンクーバー近郊在住。
和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/
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