~グランマのひとりごと~
サンフランシスコの娘から数日前に小さなプレゼントが届いた。
今日は2020年12月23日、まだ「それを開けてはいけない!」、25日に家族でZOOM パーティーを開くのだ。東京の次女と家族、バンクーバーの息子とグランマ、皆が揃ったら一緒にプレゼントを開ける。
へぇー、3ケ国別々の国に住む家族が、プレゼント交換写真を見ながら開るのかぁ。凄い世の中になったものだぁ。
1946年東京大空襲でやっと焼け残った小さなお寺、グランマはそこで小学校1年生になった。しかし、教科書も無い、帳面も無い、鉛筆も無い、無い無い尽くしだった。
1960年代、香港で航空会社へ入社、トレーニングで若いグランマは真冬のハンブルクへ行った。
授業内容は主に計算だから、算盤(そろばん)を持って行った。しかし、初日に使用禁止。他の受講者の邪魔だという。計算機はない時代だ。 全員筆算だ。
1970年、移民したカナダから東京の実家へ電話をすると、1分「1500円?」。あっと言う間の1分だった。
こんな事、グランマが孫達に話したら、彼等、ただ、はっはっはと笑っている。
コロナコロナ騒ぎ、世界中で大勢の人が亡くなり、更に感染者が増えている。
3密の生活が余儀なくなった。思えば昨年3月頃から1年近く家の中でじぃーと暮らすグランマ。
やれることは病院通いと指圧、温室の花や犬の世話、「終活」身の回りの整理。大好きなオペラにもコンサートにも行けない。以前は行きたい時に一人でニューヨークへ行きYMCAに寝泊まりし、メトロポリタン オペラを観て、時にはロンドンのローヤル オペラに、サンフランシスコ オペラにも一人で行った。
ああ、今はもう何処へもいけない。
「それでは機械で音楽を聞けばいいじゃない?」「オーディオで観ればいいでしょう?」と人は言う。
しかし、このグランマは難聴だ。音の発信から受信迄、幾つもの機械を通しやっと耳に音が届く。そして、届いた音はもう本来の音ではない。だから、楽しくない…とほほほ。
しかし、難聴グランマをふっーと救ってくれたのが、読書の会だ。
2011年から「バンクーバー日系女性企業家の会」の一行事として『ブック クラブ』が始まった。
それから10年ずっと出席している。素晴らしいのは、自分では、まず何らかの理由で「選ばない」、又は「選べない?」ような本を、メンバーの誰かが選んでくれる。それ等の本はグランマを未知の世界へサーっと連れて行ってくれる。自分の知識も倍になる。
10年前に最初に読んだのは『ガラスの城の子どもたち』。
これは今でもストリーを覚えている。そして、『スティーブ・ジョブズ』スタンフォード大学の卒業式に学生へ送った「人生で得た3つのストリー」等々。
コロナで3蜜の今、難聴グランマは自宅で存分本を読み、読後感をZOOMで仲間と話せるのだ。やっぱりすごい時代になったのだ。
毎日雨、太陽が恋しい! 又、気分が落ち込む。そして、ふっと思い出し、読みたくなった本がある。
何故って?不思議な本なのだ。何だかその本の読後、ずっと「心が温まり、幸せ気分に浸っている」そんな自分がいたのだ。
早速、本棚から『やまばと』を取り出した。本は著者、唐沢良子さんの自費出版だ。今何処で入手できるか分からないが、聞くところ、日系会館へ全売り上げは寄付されていると言う。
グランマも随分前に、誰かの勧めで「日系会館の売店」で買った気がする。
内容は、山間のある部落の人達が貧しさを「しっかり受け入れ」ながら、互いに助け合って明るく生きている。人々の心の温かさがジーンと伝わって来る。グランマが読み始めて511ページ2日間、夢中で読んだ。
読後感は、改めて初回と同じ「心ホカホカ、顔ニコニコ」。
文中、サイパン島で終戦を迎えた青年が、記憶喪失症になって帰国する。数年の病院生活中、やっと家族との再会が叶い、少しずつ記憶が戻ってくる。彼が運転手の仕事についたある日、3人兄妹弟の戦争孤児に出会う。
住むところの無い3人を、その青年は自分で引き取り、色々な人の助けを借りながら生活して行く。そんな彼の一言と生き方が、なんとグランマの大好きな「ダライラマ」の言葉と同意だった。
「私達はこの地球への訪問者です。
それはせいぜい90年、長くても100年の間です。
その間、できるだけ良いことをしましょう。
もし、誰かを助けたり、喜ばせたり出来たら、 それで、その人の人生の目的は果たせたのです」
ダライラマ14世
グランマ澄子
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好評の連載コラム『老婆のひとりごと』。コラム内容と「老婆」という言葉のイメージが違いすぎる、という声をいただいています。オンライン版バンクーバー新報で連載再開にあたり、「老婆」から「グランマのひとりごと」にタイトルを変更しました。これまでどおり、好奇心いっぱいの許澄子さんが日々の暮らしや不思議な体験を綴ります。
今後ともコラム「グランマのひとりごと」をよろしくお願いします。