企友会とバンクーバービジネス懇話会が1月27日、Zoomによる2021年新春懇談会を共催で行った。谷口明夫企友会会長のあいさつのあと始まったパネルディスカッションでは、6つの業界から参加した6人のパネリストから、コロナ禍をどのようにして乗り越えてきたか、苦労したか、そしてポストコロナの計画や戦略について生の声を聞くことができた。
パネルディスカッション後は、参加者全員が小部屋に分かれて、少人数ずつでの交流会も行われた。
懇談会は最後に懇話会の田村耕造会長があいさつをして閉会した。
パネルディスカッションを2回にわたりリポートする。
パネリスト
*氏名の下は講演会での自己紹介の内容。
・不動産―フレッド吉村さん(リマックス不動産)
2002年からリマックス不動産で不動産仲介業、不動産管理など。
・小売―猪田雅公さん(Suzuya Japanese Market)
日系文化センター・博物館に隣接する日本食料品店Suzuyaと、アバーディーンセンターでラーメンレストランの経営。
・旅行―山田圭哉さん(HIS Canada Inc.)
1995年からカナダに。トロントや日本への転勤を経て現在はバンクーバー。
・飲食―増田新梧さん(Kamei Royale Japanese Restaurant Group)
1972年に開設とカナダで50年以上の歴史を持つバンクーバーの老舗日本食レストラン。
・貿易商社―吉浦隆行さん(Itochu Canada Ltd. )
1998年伊藤忠株式会社入社。2015年4月からバンクーバー。木材、住宅建材業界が専門。
・留学―田中覚弘さん(Jpcanada留学センター)
2000年にカナダに来て、ウェブサイトJpcanadaを立ち上げたが、主要な事業は留学センターで、バンクーバーの業界最大手。
・モデレーター―企友会理事、岡本裕明さん(企友会理事)
総合建設会社(ゼネコン)勤務の1992年に来加。その後独立してマリーナや商業不動産、駐車場の所有・運営。日本の書籍の販売事業など。
(順不同)
***
岡本さん「(新型)コロナと付き合って約1年がたちました。皆さん、どのように乗り越えてきたか話を聞かせてください。また、そろそろポストコロナでどう動くか注目が集まってくるのではないかと思っています。
本日は6業者を招いて、各業種がどれだけ苦労してきたか、またコロナ後の戦略について話を聞かせていただきます。
コロナでも比較的順調だったビジネスと、コロナで極めて厳しい状況となったビジネスがあったと思います。
まず伊藤忠の吉浦さんからお願いします」
吉浦さん「扱っている商品、部署により売り上げに大きな差が出ました。その代表格が衣料で、売れません。
また、伊藤忠が傘下に持つファミリーマートは、コロナで会社に行かなくなるとコンビニにも行かなくなり大苦戦をしています。
一方で私の専門の木材・建材業界は北米ではよく売れていますが、日本では売れていません。
これは住宅が建っているかどうかで、日本はコロナで住宅は建っていません。これは日本は元々金利が低かったのに対して北米では住宅金利が4%から2%へと引き下げられて、ようやく手が届くなるようになったたためです。その結果、家を買う人が増えました。また、家の改築をしようという人がいたため、5月から6月にかけてはホームデポのようなホームセンターは入店するために1時間待ちということも普通で、木材業界に恩恵がありました」
猪田さん「コロナになって今までとは違ったものが売れました。工場が動かなくなり、供給が入ってこないこともありました。
入店者数を制限しなければならず、来てくださったお客様に外で待っていただくことになり、申し訳なかったです。売り上げは伸びましたが、おにぎりやジュースなどはあまり売れませんでした。並んで待って買うほどのものではないためです。
基本的にはSuzuyaは家で作って食べようというお客様に利用いただいています。買い物をするのに並ぶので、予定外のものも買ってしまう、まとめ買いをするお客様が増えています。また、家にいる時間が長くなったために、買ったものをすぐに食べてしまうので、また買いものに来てくださっているようです」
吉村さん「去年の8月以降、不動産売買は回復しています。
住宅市場は通常は春が活発ですが、コロナで売買は2020年については3月~7月頃までは控え気味でした。8月から市場が動き、秋にずれこみました。通常、秋のシーズンは短く、春に比べて件数も少な目なので、昨年と比較すると劇的に回復したように見える数字にいます。
今、家を買っているのはファーストタイムバイヤーです。賃貸に2000ドルとか払っていた人が住宅を購入しています。
サレーやラングレーの郊外型物件は売りにだしてすぐにオファーが入ります。コロナ前に売れ筋だったリッチモンドやバーナビーのブレントウッドといった都市部のコンドミニアムからのシフトです。例えばブレントウッドの2BRで70万ドル前後の物件を購入していた層にとって、コロナでテレワークになって通勤がない、通勤は週2回程度となると、都市部に住む必要がなくなってきました。
それから財産保持のため中国人が不動産投資として買い支えていましたが、今は送金の問題があり、投資家マーケットがストップしています。
人気があるのはノースバンクーバーやバーナビーの1.7~1.8Million(170~180万ドル)、サレーの1.2Million(120万ドル)の物件です。
増田さん「飲食業界は苦しい一年でした。ロックダウンで営業ができなかった店やお客様の数が3分の1ぐらいになった店もあると思います。
亀井グループも大きな影響を受けました。テレワークが増えて、店舗の近くのオフィスで働く人が減ると、レストラン利用者も減ってしまいます。
ただ、亀井グループは営業の内容、メニューの縮小はせず、コロナ前と同様のサービスを提供してきました」
田中さん「留学業界は学生さんたちは来たくても来られない状態でした。当初は6月末までだった海外からの渡航者の制限も秋まで長引き、また学生ビザを申請してもビザが下りない状態が続いていました。今は申請から1週間程度でビザが取れるようになりました。
私たちの場合、国境が閉まった段階で来られなかったお客様が200人ほどいました。来られるようになっていらっしゃったのは30~40人です。ビザが出ても今は様子を見ている方が多いです。
一方、オーストラリアに行けないのでカナダに来る人もいます。日本は留学生の数がそもそも下降線でしたので、コロナはそれに追い打ちをかけたようなかたちです。
プラス要素としては、一部の語学学校はオンラインでの授業に力を入れています。うち1校はタイムスロットを6つ作って授業をして、どこの国からでも参加できるようにしています。この学校は料金が安いこともあって、集客できています」
山田さん「HISは95年にアウトバウンド事業からスタートして、97年にインバウンドも始めました。2000年から2012、3年まではアウトバウンドのほうが強かったのですが、その後、インバウンドにシフトしました。
今は日本から観光で来ることができないので、インバウンドは極めて厳しい状況です。
アウトバウンドは3月中旬からキャンセル、変更で、人手が足りないくらいでした。現在、業務渡航でどうしても行かなければならないケース、それから一時帰国が多少あります」
後編につづく
(取材 西川桂子)
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