~認知症と二人三脚 ~
ガーリック康子
その日も、いつものように、認知症関連のオンライン記事を探していました。ポータルサイトに掲載されたコラムの後に、関連記事を読んでいると、偶然、その両方に「要介護認定」の「不服申し立て」というキーワードが登場しました。
すでにご存知かもしれませんが、「介護保険制度」のサービスを利用するための最初のステップが、「要介護認定」です。最寄りの市区町村の担当窓口で、介護保険要介護(要支援)認定申請書の他、介護保険被保険者証、身分証明書、マイナンバー確認用の書類、主治医の氏名や連絡先などの情報、そして印鑑を持参して申請を行います。認定を受ける対象者本人、または、その家族が行うことができます。
「要介護認定」の申請が済むと、必要な介護の程度を判断する「認定調査」が行われます。「認定調査」では、まず、対象者への「訪問調査」が行われます。事前に調整した日時に、市区町村の職員、または市区町村から委託されたケアマネージャーなどの認定調査員が、対象者が普段生活している場所を訪問し、対象者への聞き取り、心身の状態の確認、介護者への聞き取りを行います。
「訪問調査」が終わると、その結果と、市区町村からの依頼により作成される「主治医意見書」の内容を元にしたデータを分析し、「一次判定」が行われます。入浴や排泄等の介助が必要か、洗濯や掃除などの家事の援助が必要か、認知症の症状があるか、歩行や日常生活などでの機能訓練か必要か、医療的な補助が必要か、という観点から判定されます。「一次判定」の後に行われるのが、「二次判定」です。この判定は、医師、看護師、副書職員など、保健・医療・福祉の学識経験者5名から8名ほどで構成される「介護認定審査会」によって行われます。
これら3つのステップを経て、「非該当(自立)」、「要支援」1または2、「要介護」1から5のいずれかに認定されます。要介護度が認定されると、「介護サービス計画書(ケアプラン)」が作成され、実際にサービス利用が始まります。
前置きが長くなりましたが、「要介護認定」を受けたものの、その結果に納得できない場合に行うのが、「不服申し立て」です。認定結果を受け取った日の翌日から60日以内に、前述の「介護認定審査会」に、「不服申し立て」を申請します。審査により、認定結果が不当だと判断されると、「認定取り消し」となり、改めて「認定調査」が行われます。また、体調に大きな変化があり、介護がより必要になった場合は、要介護度の「区分変更申請」を行います。認定の有効期間が切れるのを待たずに、申請することができます。
このように、介護保険サービスは、「要介護認定」を受けて初めて利用できるようになるサービスで、介護保険料を支払うだけで自動的に受けられるわけではありません。「要介護認定」を受けた後も、原則として1年毎に認定を更新する必要があること、要介護度によって受けられるサービスが決まっているため、受けたいものを自由に選べるわけではないことなど、心に留めておく必要があります。また、保険の給付は現物支給で、介護サービスや、バリアフリー工事・補修費などの実費として支給されます。現金支給ではありません。
アルツハイマー型認知症を患っていた母も、生前、介護保険サービスを利用していました。母の場合、たまたま私の一時帰国中に、開封されずに溜まっていた郵便物の山から、更新期限をとっくに過ぎた「要介護認定」更新の案内通知を見つけたことで、更新されていないことを知りました。最初の申請は母が自ら行っていたため、母が「要介護認定」を受けていたことすら知りませんでした。慌てて最寄りの地域包括支援センターに連絡し、申請し直しました。介護保険サービス利用の知識は、まさに一夜漬け。限られた滞在期間を考慮し、判定期間を前倒しにする便宜を図っていただいたおかげで、デイサービスにも通い始め、一安心してカナダに戻ってきたのを覚えています。
介護者がひとりで頑張り過ぎ、体も心ももう限界。そうなる前に、将来、介護度が増すことを想定し、転ばぬ先の杖として、できるだけの準備をしておくことで、心の準備にもなるでしょう。
日本のご家族やお知り合い、大丈夫ですか?
参照
厚生労働省「要介護認定」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/index.html
厚生労働省「サービス利用までの流れ」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
*当コラムの内容は、筆者の体験および調査に基づくものです。専門的なアドバイス、診断、治療に代わるもの、または、そのように扱われるべきものではないことをご了承ください。
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定。