ICBC交渉などを扱う楠原良治弁護士~野球好きの性格に合った弁護士の仕事

 ICBC(ブリティッシュコロンビア保険公社)関連を専門に扱う弁護士の楠原良治さん。日本生まれで10歳まで大阪で育ったあと、カナダに移住。約3年間、弁護士事務所で勤務後、2019年6月に独立した。

 ICBCが今年5月1日に自動車保険で導入したノーフォルト(No Fault)制度や、楠原さんがそのほか取り扱う内容、さらに弁護士になろうと思った経緯などについて聞いた。2回に分けて紹介する。ノーフォルト制度に関する前編に続き、後編は楠原さんが取り扱う業務など。

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-ICBC以外で対応している案件について教えてください。

 不動産に関する諸問題、民事上の請求、名誉毀損、就業関係など、幅広い分野の法律に対応します。 

-民事上の請求というのはどういったものでしょうか。

 いろいろあります。例えば引っ越し会社に「ぼったくられた」とか、詐欺にあったとか、そのような問題にも対応していますので、困ったことがあればご相談ください。

 雇用問題については、いろんな分野に対応しています。日本人は言葉の問題もあり、困ったことがあっても声を上げることができずにいることもあるようです。職場でいじめがあったときなど、弁護士が必要なときにご相談ください。

 メトロバンクーバーには日本人、または日本語を話す弁護士が少ないと個人的に感じています。

 このコミュニティで10歳のころから育ってきたということもありますし、日本人や日本語を話す方のコミュニティに恩返しをしたい、できれば力になりたいと思っています。

-以前、知人が働いていた会社が倒産したとき、カナダ人の従業員は小切手をすぐに入金したので給料を支払ってもらえたのに、日本人は小切手がバウンスして(不渡りになって)もらいそびれたと聞きました。カナダ人は「アブナイ」と思っていたので、昼休みに銀行に駆け付けていたそうです。

 倒産した場合も、会社の役員に支払いを請求することができます。ただし請求する期間があるので早めに相談してください。

-遺言、遺言執行などはどうでしょう。扱っていますか?

 私は問題があったとき法廷での弁論などを行うバリスターで、書類の準備をする遺言関係はソリシターの分野になります。しかしながら、ソリシターと連携して対応することも可能です。

-弁護士費用は高いというイメージがあり、なかなか相談できない人もいると聞きます。

 最初の相談はほとんどの場合、無料です。ただし、依頼によっては有料の場合もありますので、まずEメールなどで問い合わせください。そこからカウンセリングをして、費用についてもお話します。

 争議で裁判まで行くケースについては、裁判所も2種類あります。一つはSmall Claim Courtで、もう一つはSupreme Courtです。Small Claim Courtは賠償金が3万5000ドル未満の場合でBC(ブリティッシュ・コロンビア)州の管轄です。3万5000ドルを超えると連邦政府管轄のSupreme Courtになります。

 Small Claim Courtで争われる案件だと弁護士費用は5000ドル、Supreme Courtだと2万5000ドルからです。

-最後になぜ弁護士になろうと思ったのか、聞かせてください。

 私の父は歯科医で、若いときに父の手伝いをしたことがありました。その際に父から「おまえは不器用なので歯医者としての素質はない。歯科医はやめておけ。弁護士はどうだ?」と言われました。

 それで弁護士になりました。子どものときはプロ野球選手になりたいとか、そういう夢もあったのですが、現実的な道を選んだ結果です。

 また、私は野球が好きで、弁護士の仕事は野球の試合と似ているところがあると感じています。野球ではこちらが攻撃したら、次は相手の攻撃…と交代しながら続けていきます。また打者が順番にバッターボックスに立って攻撃します。裁判も同じようなところがあります。

 一方、たとえば、政治などはいろんな政治家が同時に話をして騒いでいるイメージがあります。それは苦手でした。今思うと、そのため野球のように「ターン制」の弁護士になってみようという思いがあったのかもしれません。

楠原良治弁護士
Ryan Kusuhara
・トロント大学理学部分子細胞学科卒業
・ウィンザー大学法学博士課程修了(ロースクール)
・日系文化センター博物館でボランティア活動に尽力

Panorama Legal LLP
309-5577 153A St. Surrey, B.C.

TEL:236-513-0167(アシスタントの大瀬麻衣さん)
Fax:604-372-4505
www.panlegal.ca

(取材 西川桂子)

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