令和2年度外務大臣表彰を受賞したJALTA日本語教育振興会(JALTA)への伝達式が7月27日、在バンクーバー日本国総領事公邸で行われた。受賞はJALTAが1974年の設立から約50年にわたり、カナダにおける日本語教育の推進に寄与した功績が評価された。
冒頭にあいさつした羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事は伝達式が受賞の翌年になったことについて「長年にわたり地道に活動されてきたJALTA関係者の方々をできる限り多くお招きすることで、その貢献に感謝したいという気持ちと、JALTAの功績をできる限り多くの方に知っていただく場にしたいとの考えから、規制緩和を待ちました」と述べた。
日本語学習者への優しさや愛情があふれる活動
JALTAは1974年の設立以来、日本語教育の振興、日本語教師の育成、日本語教材の開発などを目的として、さまざまな活動を行ってきた。
カナダの日本語学習者に特化したオリジナルの教科書づくり、日本語能力試験がバンクーバーで実施されていなかったころには日本語能力試験を独自に作成、実施した。
ほかにも専門家を招いての研修会や勉強会、卒業生による講演会や日本の大学の受験情報などを提供する「日本語教育講座」など、さまざまな活動を行っている。
「これら一つ一つの地道な活動を、長きにわたって続けてこられ、また、すべての活動がボランティアで行われていることに、改めて敬意を表します」と羽鳥総領事はスピーチした。
さらに「これらの活動の根底には一貫して日本語学習者への優しさ・愛情があふれているという点に、強く感銘を受けています」と語った。
JALTAを代表してあいさつした会長のベイリー智子さんは「栄誉な外務大臣賞を受賞したことは正直いまだに信じられません」と心境を語った。「先輩方のご活躍やバンクーバー総領事館のみなさまの心温まるご支援のおかげです」と感謝した。
独自の教科書作成、勉強会など開催
JALTAは日本語教育の振興、日本語の普及、向上、日本語教師の育成、関係外部機関との情報の交換を目的にして、1974年4月に当時のスティーブストン日本語学校校長横山赳夫さんを会長に、ブリティッシュ・コロンビア大学名誉教授曽我松男さんを副会長として役員9人でスタートしたという。
ベイリーさんはJALTAが行ってきた活動を挙げて、これまでの歩みを紹介した。
1977年 カナダ日系移民100年を記念して加盟校5校が集まり合同学芸会の開催。
1978年 独自の日本語教科書を作成するための委員会発足。カナダの学習者の生活に密着した内容のJALTA日本語教科書は1998年に全巻完成。21年かけて作成した教科書は経験の浅い教師にも指導しやすい内容となっている。
1985年 第1回研究会を5日間にわたりブリティッシュコロンビア大学(UBC)で開催。
1986年から10年間はJALTA日本語能力試験を開催。国際交流基金の日本語能力試験は、当時はバンクーバーで開催されていなかったため、地域の学習者の指標となる独自の試験を開発・実施。
1999年からは日本語学習者に日頃の成果を発表する場としてお話発表会を開催している。「会には毎年、在バンクーバ―日本国総領事も出席して、生徒たちに励ましの言葉をかけてもらっています」と感謝の言葉を述べた。
「昨年からはリモート学習へのシフトという困難な状況を迎えましたが、これまでと同じ日本語教育にかける思いで続けています」とベイリーさん。「バンクーバーから日本語教育の推進を積極的に発信、多言語、多文化の背景を持つグローバルな人材の育成、日本語教育を通して、共生社会の実現、諸外国との交流や友好関係の維持、発展に寄与していきたいと思います」と決意を示した。
新型コロナウイルス感染拡大で昨年からは会員間の情報交換などもZoomで行われていたということだったが、伝達式にはJALTA役員ら代表者が出席して実際に顔を合わせて、和気あいあいとした祝賀会となった。
外務大臣表彰は、多くの人が国際関係のさまざまな分野で活躍し、日本と諸外国との友好親善関係の増進に多大な貢献をする中、特に顕著な功績のあった個人や団体について、その功績を称えることを目的としている。
令和2年度は、206人の個人、63団体が受賞。ブリティッシュ・コロンビア州では、JALTA日本語教育振興会のほか、グレーター・バンクーバー日系カナダ市民協会会員メアリー・キタガワさんが受賞した。
JALTA日本語教育振興会
日本語教育の振興、日本語教師の育成、日本語教材の開発などを目的としている。1974年4月に発足した。http://JALTA.ca/
(取材 西川桂子)
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