日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会(NSHCHS)のレジデント・サービス・マネージャーに長谷川宏美さんが就任した。
長谷川さんは日本で大学や一般病院で形成外科医として活躍していたが、2015年に休職して子ども3人を連れて渡加。2018年からクワントレン・ポリテクニック大学(KPU)でビジネスを学び、途中、教授の勧めでトリニティウエスタン大学の大学院に転校。リーダーシップの修士を取得した。
2018年に一度日本に帰国、臨床医として復帰していたが、今年9月に再渡加。長谷川さんに話を聞いた。
– まず自己紹介をお願いします。医師免許を持っているということですね。
はい、日本で形成外科医として褥瘡(じょくそう)・難治性潰瘍、糖尿病性の足潰瘍の治療も行ってきました。カナダの医師免許は持っていないため、カナダでは治療などはできません。
– 日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会のレジデント・サービス・マネージャーとのことで、新さくら荘と日系ホームの両方を見ているのでしょうか。
新さくら荘はシニアが自立した生活をする集合住宅のIndependent Living、一方、日系ホームはAssisted Livingで介護付き住宅になります。業務は日系ホームと新さくら荘の両施設に関してで人事やスケジューリング、両施設の入居や退居手続き、入居者の管理など、多岐にわたります。
9月14日にオンラインでトレーニングを始めて、22日から日系ホームで勤務を始めました。
– 日系ホームは認知症があると、退居しなければいけないそうですよね?
はい。ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の介護施設にはAssisted LivingとLong Term Careの2種類があり、日系ホームはAssisted Livingになります。
Assisted Livingは自分で受けたいケアを決めることができる人が入居します。軽度の認知症なら入居を続けることができますが、進行するとご自身でそのような決定ができなくなるため、長期療養施設、Long Term Careなどのほかの施設に移動していただくことになります。
ご存知ない方が多いのではないかと思うのは、Assisted Livingは自由度が高いことで、飲酒も可能です。
基本的には、入居者の独立した行動に対して、私たちが入居者を注意深く見守り、必要なお手伝いをしますが、行動制限をすることはありません。私は介護や家事のサービスのある「アパート」と同じような感覚だと思っています。居室はご自宅として自由に過ごしていただけます。
日系ホームでは個人に応じたケアプランをたて、その方に合わせた身体的介助と朝夕2食やお掃除やシーツの交換の家事サービスがつきます。昼食は、お部屋のキッチンでご自身で作ることも可能ですし、オプションのランチプログラムもご利用いただけます。
現在は、コロナ下で制限がありますが、通常であれば、お友達や家族を招くことも、家族の訪問宿泊も可能です。
また、入居者向けのアクティビティプログラム以外に、「いきいきプログラム」のようなZoomを用いた、入居者以外の地域のシニアの方向けの生活機能維持や改善のためのプログラムがあります。こちらの地域向けのプログラムにも入居者の皆さんに参加いただけ、地域の方との交流が可能となっています。
入居者の独立した生活を尊重していて行動制限がないので、高度の認知症を発症されると、Assisted Livingで暮らしていただくのは安全上難しくなります。
現在のところ、Assisted Livingよりも高度な医療ケアに対応できるLong Term Careで、日本語に対応する施設はBCにはなく、カナダではトロント辺りに1カ所あるだけと聞いています。
認知症を発症した日系の入居者が、日本語対応の施設が良いと、日系ホームからトロントに移られたこともあるそうです。でも、多くの方は、バンクーバー周辺の日本語対応していない施設に入居します。今後、BCにも日本語対応のLong Term Careができるといいと思います。
– 日系ホームで暮らすには費用はどれぐらいですか。
家賃は収入と個人資産の約70%と、個人の資産に応じた割合で計算されます。例えば、年金生活の方でしたら、年金の約7割です。
– 日系ホーム、新さくら荘は人気が高くてなかなか入居できないイメージがあります。
確かに新さくら荘は長いwaitlistがあり、入居に平均8~9年お待ちいただいていますが、日系ホームはそんなことはありません。比較的すぐに入ることができます。
– カナダ人の義理のお母さんが、歩けなくなっているのと、オムツが必要になっているので、介護施設への入居を考えているという人がいます。日系ホームは日系人が中心ですよね。
日系ホームは民間施設ではなく、フレイザーヘルス傘下の施設になるので、日系人に制限したものではなく、日系人を含むアジア人はもちろん、そのほかの民族の方も入居されています。
食事も日本人以外の方にも楽しんでいただけるように日本食と洋食から選んでいただけます。最近見学されて入居を決められた方も日系人ではありません。
- 日系コミュニティにメッセージがあれば。
日系ホームを高齢になったときの住居として、もっと気軽に入居を考えていただければと思います。
現在は、1人で暮らすのには不安がある方や、ほとんどのことは自分でできるけどお風呂などに手助けがいる方、あるいはご夫婦のどちらかの身体が弱って、老々介護では自宅で暮らすのが困難になったということで入居されている方が多いです。
我々の日系ホームのような施設の認知度が低いために、介護付き住宅(Assisted Living)の利用をされずに、何とか自宅で暮らし、Long Term Careへ入居される方がまだ多いように思います。
先に、お話したとおり、Assisted Livingは自由度が高い施設です。家賃は支払っていただく必要はありますが、入居後もご自宅としてお友達や家族を招いたり、旅行で留守にしたりすることも可能です。
入居中に、認知症やご病気になり、長期療養施設、Long Term Careに移っていただくことになったとしても、入居先が見つかるまでは日系ホームに残っていただけます。是非、我々の存在を広く知って、もっとたくさんの方に利用していただきたいです。
日系シニアズ・ヘルスケア住宅協会
Nikkei Seniors Health Care and Housing Society
6680 Southoaks Crescent
Burnaby
TEL:
604-777-5000
E-mail:
Srhousing@Nikkeiplace.Org
ウェブサイト:
https://seniors.nikkeiplace.org/
合わせて読みたい関連記事