2022年1月28日
桂川 雅夫
岸田政権はコロナの早期終息と共に、最重要課題として「新しい資本主義」の実現を目指している。その道筋として述べられていることは、政府は積極的に医療従事者や看護職員等の賃金アップを図るが、民間企業も積極的に3%を超える賃金引き上げを行い、国民の所得を増やし、消費活動を活発にすることで、日本経済の好循環を実現するのだということだ。そうすることで、現在の多くの日本国民が持つ将来に対する不安や疑問を取り除くのだと説明している。
そして1月25日から所謂(いわゆる)労使の春闘が開始された。経団連の十倉(雅和)会長と連合の吉野(友子)会長の直接会談の内容が、26日のNHKの朝7時のニュース番組「おはよう日本」で放映された。それに先立ち19日には日本の年金の将来見通し、20日には二千通を超えるNHK視聴者の投稿(老後の年金や生活不安を憂う声)、21日には不況に伴って実際に起きている退職金の減額の実情で老後の設計がくるったという切実な声、24日には一般的に高い賃金水準の日本のIT企業ですら、最近は海外から優秀なIT技術者を獲得できないという実情、25日にはNHK が日本を代表する企業100社に問うた今年の賃上げに対する見通しの回答、26日には何故日本は賃金が上がらないのかを複数の経済評論家たちに聞いた話を放映した。
日本の平均賃金に関する、「日経ニュースメール」の2021年10月21日では、「韓国に抜かれた日本の平均賃金、上がらぬ理由は生産性か―――」で紹介されている内容は、OECDの2020年の調査では、1ドル110円として、日本の平均賃金は、424万円、米国は763万円で339万円の差がある。1990年と比べて日本は18万円しか上がっていないが、韓国は1.9倍も上がり、2015年に日本を抜き今やその差は、38万円だと説明している。追記であるが、この時点で日本の平均賃金は、世界の22位だったが、最近のOECDの発表では26位になったという報道も聞いている。
この関連でのNHKの放映の内容であるが、先ず1月19日と20日は、集められた二千を超える視聴者から寄せられた疑問や声に対し、経済アナリストの森永卓郎氏が答えていた説明では、視聴者の質問の第1、「日本の年金の将来は」については、現在の厚生年金平均支給額は夫婦一世帯で、月額約21万円だけれど、将来は13万円ぐらいになるだろう、そうならその範囲での生活を考えるしかない、自分は都心で生活していたが、しばらく前に埼玉県の田舎に移った、結果として生活費は約3割ぐらい少なくて済むようなことを実感している。食費も近所の農家から借りた土地で野菜を作ったりしておりそれで十分賄える。
視聴者の質問第2「老後に備えていくら貯蓄をする必要が有るか」は、森永氏は強いて答えるとすればで、笑いながらの表情で、5,000万円だと答えていたが、即座にアナウンサーが2,000万円という数字が以前財務省だったかで発表されていましたねと、説明を加えていた。
次の質問、第3問「なぜ日本は賃金が上がらないのか」では森永氏は、消費税が賃金の上がらない原因だと、あまりよく理解が出来ない説明をしていた。日本の消費税は現在10%だが、欧州では20%前後の状態の国もありで、それでも多くの国の平均所得は、日本より高いという状態を、森永氏はどう認識しているのかであろうか、そういう話題は出なかった。処で、翌日の文字の大きさで現代の日本の視聴者の関心の度合いを示す活字では、圧倒的に「年金」とか「老後」とかという活字が大きかった。
その翌週の1月24日には、最近は日本のIT産業が外国人の優秀なIT技術者を以前の様に確保できないということを、日本語をある程度話すベトナム人の30代だとかというIT技術者の話を具体例として放映していた。彼は日本在留を今後継続しても、自分の将来にはあまり良い可能性を見つけられず、ベトナムで起業したという事であった。
日本ではIT企業でさえも諸外国に比べて賃金が安すぎるのと、日本語が或る程度話せても、外国人は日本企業では役職に登用されないし、一方企業内の言語が英語で行われるという事はIT企業でも日本では期待できないし、日本人で英語を流ちょうに話す人は、海外に行ってしまい日本では働いていないとかと云っていた。同じ番組でNHKが示していたIT技術者の日本と海外(中国を含む)との賃金の比較が下記の様に示されていた。
年俸比較 (単位:万円)
日本のIT 産業 | 世界のIT 産業(円換算) | |
係長クラス | 530 | 730 |
課長クラス | 770 | 820 |
部長クラス | 870 | 1,300 |
役員クラス | 1,230 | 3,250 |
1月25日には、現在の日本の一人当たりの年収が低い理由について、有識者(経済評論家やアナリスト)3氏(石川、野口、再登場の森永)の見解が披露された。各氏の主張の結論だけが放映されたが、石川氏は日本は技術立国なのに技術革新を怠ってきたからだ、野口氏は日本企業は賃金アップより雇用を優先してきたからだ、森永氏は前記と同じく消費税のためだ、という主張であった。
(後編に続く)
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