現在、メイクアップ・アーティストとして活躍している澤渡祥子さんは、ノースバンクーバーのサザーランド・セカンダリースクールに高校留学後、ニューヨークでメイクについて学んだ。
これまで、「Harper’s BAZAAR Thailand」や「Harper’s BAZAAR Bulgaria」など、世界のファッション雑誌で仕事をしている澤渡さんにZoomで話を聞いた。2回に分けて紹介する。
後半
メイクアップ・アーティストとして、世界に挑戦する澤渡祥子さん 2
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メイクの道に進むきっかけは、カナダへの高校留学
– 澤渡さんはノースバンクーバーのサザーランド・セカンダリースクールに高校留学、卒業したとのことですが、留学を考えた理由を教えてください。
実は留学を考えていたのは兄でした。家族でハワイに行ったとき、兄がハワイ大学のキャンパスツアーに参加しました。その際に、私も一緒に見学して、海外の学校の自由な雰囲気に魅かれました。
帰国してからエージェントに相談して、教育水準が高いということでカナダに決めました。
– カナダの高校を卒業するのは、日本人など外国人留学生には簡単なことではないといいます。数学や理科、社会など主要科目もカナダ人学生と一緒に英語で学ぶことになりますし、単位を落とす生徒もいると聞きます。
高校留学中はものすごく勉強しました。特にカナダの「国語」にあたるEnglish、英語の授業が一番大変でした。放課後も毎日、図書館が閉まるまで勉強、ホームステイ先に帰ってからも、ほぼ徹夜で勉強。寝坊して遅刻してしまったこともありました。
– メイクアップアーティストを目指そうと思ったのは?
高校時代からメイクに関心があり、サザーランドで友人にメイクをすることがありました。外国人は日本人と似合う色が違っていておもしろかったということもあります。
また、高校の授業でアートに興味を持ちました。ただし絵を描く場合、白くて広いキャンバスがまずあって、インスピレーションで作品を仕上げます。一方、メイクは、もともとの顔が土台で、そこにさまざまな色を使って、個性やイメージを作り上げていきます。
顔がまずあって…というのが私には合っていました。メイクに進んだのは、白黒、モノクロではなく色が好きだったこともあります。
アメリカでも東と西で異なるメイクアップスクールの傾向
– 高校を卒業してから、すぐにメイクの学校に行ったのでしょうか?
卒業して、半年日本に戻ったあと、ニューヨークのファッションメイクの学校に願書を出しました。
学校はロス(ロサンゼルス)にするかニューヨークにするか迷ったのですが、調べたところ、西海岸のロスはハリウッド系のメイク、東海岸のニューヨークはヨーロッパに近いこともあり、ファッション系メイクに強いことが分かりました。
私はショーなどクラシックなメイクが好きなので、ニューヨークの学校を選びました。
厳しかった日本での下積みが今につながる
6カ月学校に行き、卒業後、一度日本に戻り、アシスタントとして仕事をしました。
ニューヨークのメイクの学校を卒業して、そのままアシスタントの仕事を探している現地の人は大勢います。私はまず一度、日本で仕事をして経験を積むことで、そんな多くの「アーティスト」とは一線を画すことができるのではないかと考えました。
日本で仕事を始めると、コロナ前でしたので外国人のモデルもたくさんいました。おかげで、カナダの高校を卒業した私の英語力を買ってもらえたりました。
– 日本での下積み生活は厳しいというイメージがあります。
1日の睡眠時間が3時間という日もありました。体力勝負でしたね。
その上、日本のアシスタントはお金(報酬)が出ません。でもアルバイトをする時間もありません。金銭的にもきつかったです。
アシスタントは「勉強させていただいている」、雇うほうは「勉強させてあげている」という感じで、仕事も厳しかったです。
でもおかげで、海外でどんなに厳しいという評判の人のお手伝いをしても、日本と比べると天国というか…。日本でみっちり仕込んでいただいたので、「ちゃんとしている」と言ってもらえます。
– メイクアップアーティストの仕事は、メイクのスキル以外にもコミュニケーション能力も必要と読みました。
話がおもしろい人や場をなごませる人は、この世界で上がっていけます。
気遣いができること、周りが見えることも大切です。撮影のセットは狭いんです。ここに立っていると、モデルの視界をさえぎるのではないか? 寒くはないか? など、モデルやクライアントに気配りができると次の仕事につながります。
空気を読んでいるか、礼儀正しいか、ということも見られています。自分は今、することがないから携帯をずっと見ているなんて論外です。
こういうことは、日本で仕事をしたときに、厳しく教えられました。それが役に立っています。
(後半に続く)
メイクアップ・アーティストとして、世界に挑戦する澤渡祥子さん 2
(取材 西川桂子)
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