バンクーバー朝日元選手上西ケイさん100歳誕生日、巨大ケーキで祝福

上西ケイさんを囲んでAsahiの選手たちと記念撮影。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo
上西ケイさんを囲んでAsahiの選手たちと記念撮影。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo

 今年100歳を迎えたバンクーバー朝日元選手上西ケイ(Kaye Koichi Kaminishi)さんの誕生日を祝うパーティが、日系文化センター・博物館で3月5日に開催された。

 会場には現在の朝日チームの関係者ら約100人が集まり、戦前の「朝日軍」を知る唯一の元選手の長寿と健康を祝った。

 上西さんは「こんなによくしてもらってね、うれしいですね」と照れ笑い。これからやりたいことはと聞くと「色々やりたいことがあるけど、なかなか体がね」と笑ったが100歳になってもやりたいと思っていることはたくさんありそうだ。ここまで多くの人に支えられ健康でこられたことに「ありがたいですね」と感謝し、「Asahi」のユニフォームを着た若い選手たちに目を細めた。

 隣に座っていたグレース・エイコ・ソムソンさんは「私にとっても朝日は重要な歴史なんです」と話した。日系文化センター内にある博物館でバンクーバー朝日の展示会を手がけた。「子どものころは父がよく試合を見に行って、私も一緒に朝日の野球を見に行っていたの」と楽しい思い出を振り返り、「上西さんは100歳でもお元気でね。私ももうすぐ追いつくわ」と笑った。

 在バンクーバー日本国総領事館多田雅代首席領事は、朝日のスピリットが今の世代に引き継がれ、日系社会の発展に貢献していると思うと語り、「朝日は日系コミュニティにとっての誇りであり、上西さんにはこれからもお元気でいていただきたいです。お誕生日おめでとうございます」と祝福した。

若い「Asahi」選手たちへ、「朝日」の精神が引き継がれる

Koichi Kaminishi Award 2022を受賞したワイリー・ウォーターズさん。上西ケイさんと一緒に。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo
Koichi Kaminishi Award 2022を受賞したワイリー・ウォーターズさん(右)。黒ユニフォームはジャパンツアーに参加した選手が着用している。上西ケイさんと一緒に。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo

 胸に「Asahi」と書かれた真っ赤なユニフォームを着た若い選手たちも朝日の大先輩を祝福した。会場正面に設置された大画面には選手たちからのビデオメッセージが紹介されていた。すでに朝日を巣立っていった選手たちもいる。みんな口々に「朝日で学んだことが自分の中で大きな財産になっている」とチームでプレーできたことに感謝した。

 戦前バンクーバーで活躍した日系人野球チーム「朝日」のモットーは、スポーツマンシップとフェアプレー精神。

 この日発表されたKoichi Kaminishi Awardを受賞したワイリー・ウォーターズさんは、朝日チームの一員でいられたことは(自分にとって)すべてですとあいさつし、「上西さん、ぼくたち選手に朝日の野球を吹き込んでくれてありがとうございます」と感謝した。ウォーターズさんは2019年ジャパンツアーに参加、曾祖父は戦前の朝日でプレーした広島出身の土居健一投手。2021年9月に開催されたレガシーゲームではAsahi Alumniとして参加した。

ジャパンツアー、2023年に延期へ

朝日ベースボールアソシエーション会長ジョン・ウォンさん。この日は司会も務めた。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo
朝日ベースボールアソシエーション会長ジョン・ウォンさん。この日は司会も務めた。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo

 今回の誕生会は朝日ベースボールアソシエーションが主催した。当初は上西さんの誕生日1月11日ごろに予定していたが、新型コロナウイルス感染防止規制のため2度延期になったと、ジョン・ウォン会長が説明した。準備がなかなか大変だったと苦笑しながらも「それでもようやくお祝いできてよかった」と満面の笑みを浮かべた。

 同アソシエーションは毎年メンバーが年に1回集まる懇親会を行っているという。今年は上西さんの100歳の誕生会が重なった。

 ウォン会長は今年3月に予定していたジャパンツアー2022チームの監督も務める予定だった。しかし新型コロナ規制のため今年もツアーを断念。来年に再延期が決まった。

 2年ごとに実施している朝日選抜チームによる日本への野球遠征ジャパンツアー。2021年に続いての延期となった。

 それでも来年への「準備のための期間ができた」と前を向くウォン会長。「メンバーは21年遠征予定だった選手の約半数と23年選抜選手を合わせて約25人、2チームになる予定です」。

 日程はまだ正式に決まっていないという。2021年には広島への遠征も考えていたと話す。広島は上西さんの出身地であり、自分たちにとっても「特別なところ」と笑った。

 朝日は3月で今年度の活動を終え、選手たちは各地域のチームへと散っていく。そして今年8月に再び朝日として結集する。ツアー選抜チームはその中から選ばれる。

 毎回、選手も、受け入れる日本側も楽しみにしている朝日のジャパンツアー。野球だけでなく、文化交流などを通して日本そのものに魅了されて戻ってくる選手も多いという。

 野球を通して行われる日加の交流こそ、戦前の朝日が最も希望していたことだろう。若いAsahiはその希望をも引き継いでいる。

朝日ベースボールアソシエーション

 2016年に発足。当時の名称はカナディアン日系ユースベースボールクラブ。2015年に最初のジャパンツアーを実施し、これを機に2016年に創設した。現在は約200人が登録している。

朝日チーム・ジャパンツアー

 2015年を第1回として、2年に一度、同アソシエーションでプレーする選手から選抜チームを結成し日本に野球遠征している。2021年、22年は新型コロナ感染拡大の影響で実施できず、23年に延期されることが決まった。2017、2019年の遠征では、横浜、静岡、滋賀、奈良などで親善試合を行なっている。毎回3月の春休みを利用して実施している。

朝日ベースボールアソシエーションウェブサイト: https://www.asahibaseball.com/

元朝日選手上西ケイさん(前列中央)、家族と一緒に。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo
元朝日選手上西ケイさん(前列中央)、家族と一緒に。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo
巨大バースデーケーキのロウソクを吹き消す上西ケイさん。Photo by Vancouver Shinpo
巨大100歳バースデーケーキのロウソクを吹き消す上西ケイさん。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo
日系文化センター内にある博物館の初代キュレーターを務め、バンクーバー朝日の展示会を手がけたGrace Eiko Thomsonさん(左)と上西ケイさん。Photo by Vancouver Shinpo
日系文化センター内にある博物館の初代キュレーターを務め、バンクーバー朝日の展示会を手がけたGrace Eiko Thomsonさん(左)と上西ケイさん。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo
上西ケイさん(左)と、お祝いに駆けつけた、映画監督の原田徹さん(中央)、笠原由紀江さん。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo
上西ケイさん(左)と、お祝いに駆けつけた、映画監督の原田徹さん(中央)、笠原由紀江さん。2022年3月5日、日系文化センター・博物館で。Photo by Vancouver Shinpo

(取材 三島直美)

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