移民定住支援団体S.U.C.C.E.S.S.によるオンラインワークショップ「カナダの住宅ローンとクレジット制度」が4月23日、開催された。講師は、ファイナンシャルプランナーのアンディ伊藤さん。クレジットスコアの重要性、スコアをアップさせるヒント、モーゲージ(住宅ローン)についての概説と、カナダでの生活において知っておきたい情報が得られる講演となった。
実は重要なクレジットスコア
クレジットヒストリーとは、銀行などの金融機関などとの取り引き、金額、支払い状況などの記録。クレジットスコアは、こうした記録から算出され、いわばその人の財政的な信用度を数値化したものといえる。このクレジットスコアやヒストリーは、モーゲージや自動車のローンなどを組むときに大きく影響してくる。
クレジット(信用貸付)には、リボルビングと固定の2種類がある。前者はクレジットカードやLine of creditのこと。限度額の範囲であれば、返済をきちんとおこなっている限り、借り続けることができる。後者は自動車ローンやモーゲージなどで、貸付金額は固定されており増額できない。
クレジットスコアを高めるためには、早くからクレジットカードを取得することが勧められる。カナダはクレジットカード社会だが、クレジットヒストリーがないとカードの取得が困難となる。新移民や学生はこうしたヒストリーがない状態でも開設が可能だが、移民になってから年月がたっているとか、学生ではない場合、通常Secured credit(担保付きのクレジット)を取得する。個人のクレジットカードは19歳以上であれば作ることができる。19歳になったらカードを作り、親のモニタリングと管理のもとに使用させる。また、カードは使わずに持っているだけでも、クレジットヒストリーに記録が残るので、まずは作るところから始めてみてもいいだろう。
また、古いカードはキャンセルせずに持ち続けた方がよい。持っているだけでもスコアをアップする助けになる。ただし、あまりにもたくさんのカードを持つのは逆効果となるので気をつけたい。
クレジットカードには利用限度額が設定されている。カードの利用金額を限度額の50%以下に抑えるようにするのも有効。可能なら限度額を上げてもらうことで、限度額に対する利用金額の率が少なくなり、スコアアップにつながる。なお、限度額は上げても利用金額を増やさないことが大切。
月々の支払いをきちんとおこなうことが大切なのはいうまでもないが、期日ではなく月末までに支払うようにしたい。月末のバランスもスコアに反映されるためである。
クレジットヒストリーやスコアの算出・管理をしている機関は、EquifaxとTransUnionの2社。この機関を通して、クレジットのレポートを取得したり、スコアの確認をすることが可能。
モーゲージの基礎知識
モーゲージとは、家を担保にして銀行からお金を借りるということ。Amortization(元利均等返済)は、モーゲージの返済期間であり、Termは銀行と契約している期間を指す。
Fixed rate term mortgage(固定金利住宅ローン)という期間中に金利が変わらないタイプと、Variable rate term mortgage(変動金利住宅ローン)という金利の変動があるタイプのものがある。どちらのタイプを選ぶのがよいかについては、個人の考え方、状況、ローンを組むタイミングなどにより異なるので、専門家に相談を。
家を買うために必要となってくるのがDown payment(頭金)で、住宅の価格の20%が一般的。頭金が20%以下の場合、Mortgage insurance(住宅ローン保険)が必要となる。
賃貸料を払い続けるより、住宅を購入してモーゲージの支払いにあてるほうが、長期的には得なのではないかと考える人も多いだろう。住宅を所有すると、モーゲージの支払いだけでなく、固定資産税(Property Tax)や、管理費(タウンハウスやコンドミニアムの場合)、家屋の保険などの支払いも発生するので、賃貸より必ずしも得になるとは限らない。そういった点も含めて住宅購入を検討したい。
もっと身近に考えたいクレジットスコア
質疑応答ではいろいろな質問が寄せられた。
クレジットスコアは何点あればよいとされるかという質問では、EquifaxとTransUnionとでは点数の計算が多少異なるものの、「Good」とされるのは680点以上で、「Excellent」は720点以上というのが大体の目安とのこと。620点以下だと、モーゲージなどローンを組むことが難しくなる。
また、デビットカードとクレジットカードの違いについても質問があった。デビットカードは使用すると銀行口座から直接引き落としされる。デビットカードの使用に関しては、クレジットヒストリーやスコアに反映されない。
クレジットスコアやヒストリーが、カナダでの生活に重要な意味を持つことを改めて認識させられた今回のワークショップ。特に将来、住宅や車などの購入にあたってローンを組む可能性が高い人ほど、意識しておきたい点だといえるだろう。
(取材 大島多紀子)
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