数字で見るカナダのアジア人 5月はアジアヘリテージ月間

 毎年5月はアジアヘリテージ(文化遺産継承)月間で、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州をはじめカナダでは、アジアにルーツを持つ人たちの文化や伝統、功績などを再認識する機会となっている。

 カナダ統計局では、カナダで暮らすアジア人についての統計を発表している。その内容を紹介する。

2016年世論調査でのアジア系の母語の人口

  • 北京語が最も多く592,040人、続いて広東語が565,270人、パンジャブ語501,680人。
  • 近年、増えてきた韓国語を母語にする人は153,425人、日本語は43,640人だった。

アジア諸国からの移民が増加

  • 2016年の世論調査によると、最近移民した人の出生国のトップ10カ国には、フィリピン、インド、中国、イラン、パキスタン、シリア、韓国の6カ国がランク入り。アジア諸国からの移民が多かったことが分かる。
  • 2016年の調査では、移民全体の48.1%は中東を含むアジアで生まれ、カナダに移民した人の半数近くはアジア生まれだった。
  • 2016年以降も同様の傾向で、2017年から2019年の間にカナダに新たに来た人のうち63.5%が中東を含むアジア生まれだった。2011年から2016年の間の同数字は61.8%だった。
  • カナダ統計局は、アジア生まれの移民の割合は2036年までに全体の55.7%から57.9%になると予測している。(現在48.1%)

民族、文化的起源

  • カナダの民族的多様性に大きく寄与しているのはアジアからの移民や、カナダで生まれたアジア移民の子孫。
  • 2016年、カナダのアジア系人口は6,095,235人で、全体の17.7%を占めた。
  • カナダ人を民族的、文化的起源でみると、トップ20のうち、3グループがアジア系。中国(約180万人)、インド系(約140万人)、フィリピン(約84万人)となっている。

ビジブルマイノリティ*で多いのはインドなど南アジアと中国系

  • 2016年、カナダにおけるビジブルマイノリティのうち最も多かったのは、南アジアと中国系で、それぞれ100万人以上いた。
  • フィリピン系は4番目に大きなビジブルマイノリティグループ。フィリピン系人口は2006年から2016年までの10年間に2倍になった。増加率はビジブルマイノリティグループの中で最大。

パンデミックでアジア系へのヘイトクライム増加

  • 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、アジア系のほとんどで民族および人種差別を受ける相対リスクが増えた。特に中国系に対するリスクは、その他のビジブルマイノリティ以外のグループと比較して10倍多かった。
  • 民族や人種差別に基づく犯罪が警察に通報された件数は2019年の884件に対して、2020年は1,594件と8割増。東アジア、東南アジア、南アジア系が被害を受けている。
  • 2019年、東アジアや東南アジア系に対するヘイトクライムの警察への通報は67件だったのに対して、2020年は269件と301%増となり、このグループの被害の増加が著しかった。
  • 南アジア系に対してもヘイトクライムが増えていて、2019年の81件から2020年は119件に増加した。
  • 一方、アラブ系や西アジア系に対しては2019年の125件から2020年は123件と微減した。

アジア系カナダ人の貢献

  • 看護師助手やヘルパーなどに従事する人が、フィリピン系11%、南アジア系4%など、ほかより多いグループがある。
  • 2021年1月の調査では、就職しているフィリピン系の20%はヘルスケアや福祉支援の分野で働いていた。就職している人全体では14%。
  • 東アジア、東南アジア、南アジア、中東などアジア地域からの移民の2世は、3世以降よりも大学やカレッジを卒業するなど、高等教育の学位を持つ人が多い。
  • アジア系カナダ人の2世は、極めて高いレベルの学歴を持つ。例えば2016年の調査で中国系女性の2世の72.6%は大学を卒業していた。2世全体では平均 45.9%だった。 

貧困率が高いビジブルマイノリティ

  • 2020年の調査で、貧困率は全国平均で6.4%だった。
  • 一方、ビジブルマイノリティの貧困率は8.0%、それ以外の5.8%に比較して高かった。
  • 2020年、カナダにおける3大ビジブルマイノリティグループの貧困率は全国平均より高く、南アジア系(7.5%)、中国系(9.6%)、黒人(7.5%)だった。興味深いことにフィリピン系の貧困率は全国平均より低く3.6%だった。
  • 2022年3月の25歳から54歳までのフィリピン系の雇用率は88.3%で、ビジブルマイノリティグループの中で最も高かった。同じ年齢層のビジブルマイノリティ以外のカナダ人の雇用率は84.8%だった。日系の雇用率は77.3%。
  • 2022年3月の25歳から54歳までの失業率が最も低かったグループは、フィリピン系(4.2%)、韓国系(4.3%)、東南アジア系(4.5%)。一方、失業率が高かったのは西アジア(9.7%)、黒人(8.4%)。日系の失業率は発表されていない。

参考 Asian Heritage Month 2022… by the numbers
https://www.statcan.gc.ca/en/dai/smr08/2022/smr08_262

*編集部注)
ビジブルマイノリティは、カナダ政府の統計上分類で先住民を除く白人以外を指す。出生地には関係なく、日系、中国系、韓国系、東南アジア系、黒人など。ラテンアメリカ系で白人以外、片親が白人以外も含まれる。

(取材 西川桂子)

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