1960年創立のスティーブストン日本語学校。19世紀末から20世紀初めにかけて和歌山からの多くの移民が暮らしていたスティーブストンにある日本語学校で、前身は1911年に生まれた旧スティーブストン日本語学校。
パンデミックにより、オンライン学習への対応を余儀なくされるなど、突然、訪れた障害にも、教師やボードメンバーが強い使命感を持って立ち向かい、学校運営を続けてきた。
スティーブストン日本語学校の鈴木知子校長に話を聞いた。今回は、前編「日系社会のみならず、地元のつながりを大切に」に続く後編。
多様化する社会を生きていく子どもを育てる
-教育目標や、力を入れていることなど教えてください。
目標は多様性のある環境の中でお互いを尊重して学び合うことです。
国語の教科書を通して勉強しながら、普通科(継承語)の生徒には相手を尊重し、思いやりの心を育て、環境に応じて感じたこと、考えを自分の言葉で伝えることを学んでもらっています。
言語学習には読む、書く、聞く、話すとありますが、読むことで人の心を読み取ったり、心の動きを知ることができます。ですから、とにかく読んでもらいたいと、教員の間でいつも話しています。
最近の教科書にはお勧めの書籍の紹介もあるので、できるだけ生徒に勧めるようにしています。これから教室授業になれば、一緒に読むこともできます。
また、言葉の裏に何があるかまで聞くことができる人になってほしいと考えています。思いやりですね。
学年が上がり、教科書が進むにつれて、人の意見を尊重して自分の意見を言うなど、内容も変わってきます。最近の教科書は多様化に対応しています。国語を通していろんな考えの人がいて、それを受け入れた上で、自分の感じたこと、自分の意見を、自分の言葉で伝えることができるようにする、ということを先生方は目指して教えています。
教育理念に掲げているように、日本語、国語の勉強を通して周りを思いやる心を育てていきたいとも考えています。思いやる心を持つことで、時代の変化に対応していくことができるのではないでしょうか。
一方、基礎科では日本語を学習しながら、日本や文化背景を知ってもらうよう努めています。外国語でのコミュニケーションすることの喜びを知り、自分の世界を広げてもらっています。
当校の生徒の22%はアダルトですが、私自身がさらに多くのアダルトの方に勉強してもらいたいと考えています。コミュニティに根差すというのは大人の方が勉強するということになると思うのです。
授業に関して言えば、オンライン化が進み教育界でも新しい技術が出てきました。言語の新しい教育方法などを学び、必要に応じで授業に柔軟に取り入れる努力をすることも目標です。
7月1日の「スティーブストン・サーモンフェスティバル」での着付け体験ブースなど、コミュニティのイベントでも日本文化を伝える重要な役割を果たせるように努力していきます。
スティーブストンのコミュニティに日本文化を伝える
-コミュニティとの関係も重要視していると聞いています。
スティーブストンという土地で日本とカナダの歴史を深く学び、またコミュニティの人に歴史とともに日本の伝統文化を伝えていくことも大切な役目だと認識しています。
スティーブストン日加文化センターで授業を行っていて、センターの方にはとてもお世話になっています。スタッフやセンターを利用している方が、子どもたちを見守ってくれている安心感があります。
ハロウィンに日系の高齢者のグループが作ったクッキーをいただいたこともありました。普段日本語に接することが少ない基礎科の生徒だったため、日系のおじいちゃん、おばあちゃんに日本語でお礼の言葉を書いて、コミュニケーションする機会がありました。
スティーブストン日本語学校では感謝を示すために、センターにある図書館に本を寄贈したり、昨年末にはスタッフへの感謝を表す意味で千羽鶴を贈呈しました。鶴は生徒保護者教師が作りました。
小さなコミュニティにある学校だからこその、密な関係に結ばれています。
鈴木知子校長
2009年からスティーブストン日本語学校で教鞭をとる。2014年9月に校長就任。現在は高校生と大人クラスを教えている。
スティーブストン日本語学校
住所:4111 Moncton Street, Richmond, BC(スティーブストン・コミュニティセンターと同じ住所)
電話:604-274-4374
https://sjls.ca/
(取材 西川桂子)
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