在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事が10月5日に着任。早速、歓迎会や日系コミュニティのイベントに参加し、積極的に交流している。
着任から約20日がたった24日、バンクーバーの印象や自身でやってみたいことなど、総領事館で話を聞いた。
バンクーバー日系コミュニティの印象について
10月12日バンクーバー日系ビジネス連絡協議会主催の丸山総領事歓迎会が開催された。日系コミュニティから28団体約120人が参加、その一人ひとりと言葉を交わした。その後はリッチモンド市やバーナビー市でも日系コミュニティを訪問する機会があったという。
「本当に大きな日本関係の方々のコミュニティがあって」と驚きを口にする。ブリティッシュ・コロンビア州在留邦人約3万6000人、日系カナダ人約4万人という数字が示す大きさと、駐在員や起業家などの在留邦人、19世紀末から移民してきた日系人など「非常に多彩」で、それぞれが仕事や生活を営みながら、それでいてカナダ社会、日加関係の強化にも貢献している、「もう圧倒されるようですというのが着任してすぐの私の印象です」と語った。
加えて、その多彩さが「本当に新鮮なんです」と言う。「この新鮮な気持ちをずっと維持しながら、もうあらゆる方との出会いを大切にしたいです」
個人的に日系コミュニティには思い入れもあるという。自身の親戚がアメリカに暮らしていて「小さい頃から日系社会というのは個人的に格別です」と話す。「そういう個人的な思いも大切に踏まえて」、バンクーバーの日系コミュニティの「平坦とは言えない歴史も非常に重く受け止めながら、色々教えていただきたいと思っています」。
新型コロナウイルス感染拡大も徐々に落ち着き、バンクーバーではウィズコロナへと移行している。そのため、直接コミュニティの人々と会えることが可能となった。「それは、やっぱり貴重だと思いますし、あらゆる機会に出かけていきたいと思います」と丸山総領事。続けて、「そういう意味では、皆さまへのメッセージとして、『丸山がおじゃまする機会をたくさん作りたいと思いますので、よろしくお願いします』と申し上げたいと思います」と笑顔を見せた。
総領事館として日加関係を強化し、日系コミュニティの利益につなげていきたい
「総領事館っていうのは在留邦人の権益の維持増進、利益の確保、安全健康の管理、企業支援など色々なことをやるわけですが、それは当然日本の方々への利益になることをし、合わせてカナダ側との関係強化を図っていくということがあります」と語る。日加関係を強化することでお互いの利益になるし、それが邦人の利益確保にもつながるという。
日本とカナダの関係は、どの分野においても良好かつ友好的で、お互いに国民や文化を尊重し合う関係にある。バンクーバーでもそれは同じ。
「あらゆる機会を通じて、あらゆる分野を通じて、我々がやらなければいけないことは多彩にあると思います」
新型コロナで制限されていた直接的な総領事館主催イベントも、時期が来れば再開できるとの見通しだ。重要なキーワードの一つには食文化などがある。
「色々な分野で、できるだけ手を尽くして、できるだけエネルギーを投じて、日本とカナダの関係を強く作っていくということに尽きるんだろうと思っています」。個人的に特に関心を持っている分野や今までの土地勘があるところで、「より力を発揮できればそれはそれでいいことだなと思っています」。
バンクーバーの印象は「人々の生活と美しい自然が調和している街」
「これまでアジアの大都市ソウルや釜山で6年半暮らしていて、人口も違いますし、人口密度も違うので当然なんですけど、やはり落ち着いた成熟した雰囲気を感じます」と言う。
「人々の生活ときれいな美しい自然が調和している。そういう美しい街という印象です」。加えて、「多文化を受け入れる場所であるという印象」と続けた。「まだ(滞在が)短い期間ですけれども」と前置きして、知識として聞いていたことを「直接実感、納得する機会がずいぶんありますね」と語った。
バンクーバーでやりたいことは?
「カナダの生活は初めてですし、色んな文化が存在している、社会の在り方が非常に興味深いです」と語り、「全部がとても新鮮で、新しいことにどんどん触れてみたいと思います」と笑った。
ファーストネーションのスピーチにもすでに触れる機会があり、カナダ多文化にも「新鮮」なものを感じているという。
「新しいもの全部、ぜひ色々直接触れてみて、その結果を自分の中で何かこう違いが生じるとか、元々あったものがより明確に見えてくるとか、そういう自分の中の変化を見つめる機会になるのではという期待感がありますね」
大好きな「書」でコミュニティと交流ができれば
「音楽が好きですごく聞くんですけど」と言ったが「楽器はできないです」と笑った。ただ、「『書』が好きですね」と遠慮がちに話し始めた。
前任地釜山では、総領事館ウェブサイトに自身の「書」と短いコラムを掲載していたという。「少し自分の個人的なキャラクターが出る方法をしてもいいんじゃないかということで、3週間に1回ぐらいのペースで」。掲載は全41回。第1回は釜山の景色から「背山臨海」。第20回東京オリンピック開催時は「聖火」、第40回には日韓関係への思いを込めて「一衣帯水」、最終回は「感謝」を掲載したという。
「ちょっとしたコラムとそれに関係する言葉を『書』で書いて、組み合わせて発信という試みをやっていました」
どれくらい意味があったか分からないと照れながらも、「だんだん反応が増えてくるのは楽しみでしたし、バンクーバーに行っても続けてくださいって一般読者が言ってくれて、うれしかったです」と笑顔を見せる。
「(バンクーバーでも)できたら何かやろうかなって考えてはいるんですが」、まだ船荷が届いていないのだという。バンクーバーでは、ファーストネーションの語りや佇まい、日系コミュニティの動き、バンクーバーの姿など、「自分にとっては一つひとつがヒントになったり、触発されることがあるので、カナダの文化からインスパイアされるような作品もできるとおもしろいなと思っています」。
すでに今月22日に訪れた日系センターで「インスパイア」される機会があったようだ。現在開催されている「和紙」の展示を見学。「和紙の展示はものすごく興味深かったですし、いいなと思いながら、不謹慎ながら自分のことを考えて」と照れ笑い。「自分の作品をこういうところに掛けたらとか、勝手に想像しながら、この壁はこう使いたいなとか、ほんとに楽しい経験をしながら、ギャラリーを楽しみました」
韓国では昨年11月に二人展を開催、釜山では日本人学校の6年生5人のクラスに「書」の授業をするなど、「書」を通じて現地コミュニティと交流を図ってきた。バンクーバーでも「そんな機会があれば積極的に取り組みたいと思います」と語った。
バンクーバー日系コミュニティにメッセージ
「まずはすぐに歓迎をしていただいて感激光栄でしたし、本当にうれしく思っております。日本関係コミュニティの利益確保・増進というのは、我々の第一任務ですし、そこに真剣に取り組んでいきたいと思っています。
私が驚いたように本当に多種多様な方がそれぞれ色んな思いで情熱を傾けて仕事や活動をなさっていて、それがカナダ社会の繁栄にも貢献されているってこと、本当に敬意を表したいと思います。
そのさまざまな取り組みについて、これから色々な機会にお目にかかり、教えていただきたい。それによって我々の取り組みがより効果的、有益な方向になるようにするためにも、さまざまな教えをいただきたいと思っておりますので、着任2週間ですが、改めましてよろしくお願いします」
丸山浩平(まるやま・こうへい)
2022年10月より在バンクーバー日本国総領事館総領事
1987年(昭和62年)外務省入省、在米国日本国大使館一等書記官、在中国日本国大使館一等書記官、中東アフリカ局アフリカ第2課首席事務官、在韓国日本国大使館公使・総務部長、在釜山総領事などを歴任。1964年9月24日生まれ、東京都出身、家族は夫人と長女
(取材 三島直美/写真 斉藤光一)
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