日加ヘルスケア協会主催セミナー「大人の予防接種」:前編

 「大人の予防接種」をテーマに日加ヘルスケア協会主催オンラインセミナーが10月19日に開催された。

 2020年3月から世界中で感染が拡大した新型コロナウイルスだけでなく、今年はインフルエンザの予防接種も広く呼びかけられている。

 今回のセミナーでは、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州と日本で薬剤師の資格を持つ佐藤厚さんと千葉あゆみさんが講師を務めた。

 現在カナダで接種可能な4種類、新型コロナウイルス、インフルエンザ、肺炎球菌性肺炎、帯状疱疹の各ワクチンについて解説。内容を要約して紹介する。

 前編は、新型コロナウイルスとインフルエンザのワクチンについて。

新型コロナウイルス(COVID19)ワクチン

 現在は、mRNAのBi-Valent(オミクロン株対応2価ワクチン)の接種が始まっている。オミクロン株対応2価ワクチンとは、従来株とオミクロン株系統のそれぞれのスパイクたんぱく質の設計図となるmRNAを有効成分とするワクチン。

 BC州では薬局でファイザー製とモデルナ製を接種できる。ブースターとしてはファイザーが推奨されている。ただし、供給が伴わない場合はその時にあるワクチンを受ける方が、供給されるまで待つよりも効果がある。ファイザーを受けても、モデルナを受けても、基本的には変わりがないと説明した。

 新型コロナワクチン接種後の副反応としては、熱・倦怠感・頭痛・注射箇所の痛みなどがある。症状が出てもほとんどの場合は半日から1日で回復。2、3日もあれば治る。

 まれな副反応としては、迷走神経反射やアナフィキラシーがあるが、重症化することはあまりない。

Q&A

Q:接種回数について
A:4回接種していても5回目を接種した方がよい。新しい種類がでたら受けた方がよい。

Q:2価ワクチンについて
A:2価ワクチンを接種してもらいたい。種類は提供されるものを接種するのがベスト。気になる場合は電話で確認するなどして接種してほしい。

インフルエンザ(Influenza、Flu)ワクチン

 インフルエンザワクチンは、毎年世界保健機構(WHO)が流行する型を予測して名前を決める。ワクチンは流行するものを予測して作られるため、毎年効果は約3~4割。

 現在BC州では州民全て公費負担、つまり無料で受けることができる。ただし、高用量ワクチンは例外。

 無料で接種できるワクチンの種類は以下の4種類。

・Fluzone Quad:不活化ワクチン、4価、対象年齢は6カ月以上
・Fluad Adjuvanted:不活化ワクチン、3価、65歳以上が対象。アジュバントとはワクチンの効果を増強する物質のこと
・Fluzone High dose:不活化ワクチン、4価、65歳以上のロングタームケア、アシスティッドリビング、ファーストネーションズの人が対象、それ以外は有料で80ドル。4倍量の抗原で約20%増の効果がある
・Flumist:生ワクチン、4価、対象は2~17歳。鼻から入れる噴霧式ワクチン。針恐怖症の18~59歳も接種可能、ただし注射と比べると効果は限定的

 上記以外に、新製品Spemtekがある。3倍量の抗原、18歳以上が対象。卵不使用のため卵アレルギーの人も受けられるのが特徴。

 インフルエンザは毎年ワクチンの供給不足が起きる。特に新型コロナ以降は、新型コロナとインフルエンザの同時流行と言われることがあるため、供給量が足りない状況となっている。

 今年からはインフルエンザ予防接種もBC州の管轄するシステムを通した予約制になった。新型コロナワクチンと同じようにウェブサイトから予約ができるほか、電話でもできる。薬局によってはウォークインを受け付けているところもある。

Q&A

Q:同時にインフルエンザと新型コロナワクチンは接種できるのか?
A:同じ日に接種しても問題ない。副反応が倍になるということはない。

Q:同じ腕に2本接種しても大丈夫か?
A:問題ない。対応は薬剤師による。千葉さんは右腕と左腕に1本ずつ、佐藤さんは同じ腕に2本打つと説明。基本的にどちらでも効果は同じということだった。

プロフィール

佐藤厚(さとう・あつし)

2001年星薬科大学卒業、薬剤師免許取得、2008年カナダで薬局薬剤師(London Drugs)、2019年5月薬局マネージャー、国際渡航医学医療職認定(CTH)、認定糖尿病指導士(CDE)、薬局内トラベルクリニック(予防接種・渡航前健康相談)
バンクーバー新報オンラインコラム「お薬の時間ですよ」執筆

千葉あゆみ(ちば・あゆみ)

1997年東北薬科大学卒業、薬剤師免許取得、仙台の調剤薬局勤務、2014年カナダの薬剤師免許取得、現在Terra Nova Pharmachoice(リッチモンド市)勤務

日加ヘルスケア協会
https://www.nikkahealth.org/

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