岩手県より達増(たっそう)拓也県知事と県商工会議所連合会、JA岩手県中央会の会長らを含むトップセールス18人が、2022年12月11日から15日までカナダを訪問。短い日程の中でトロント(オンタリオ州)、オタワ(同)、モントリオール(ケベック州)、バンクーバー(ブリティッシュ・コロンビア州)の4都市で、県産の和牛や農産物を積極的にアピールした。
輸入拡大に向けて
今回のカナダ訪問は輸入拡大に向けて県産の和牛や農産物、日本酒を売り込むのが目的。達増拓也岩手県知事率いる一行は各地で在カナダ日本国大使館および総領事館の協力を得てカナダ政府関係者、レストラン関係者やメディアなどに県産食材を使った料理を紹介するレセプションを主催したほか、関係者との意見交換会を行った。
12月14日、オタワからバンクーバーに到着した一行は時差による疲れも見せず、ブリティッシュ・コロンビア州ウエストバンクーバー市で岩手県産食材を取り扱っている「Aburi Market」に直行。開催中の「いわてフェア」を視察し、正午から先着100人に岩手米「銀河のしずく」(300グラム)を贈呈した。
続いてレセプションが開かれたバンクーバー市内ダウンタウンの「Aburi Restaurant Miku」では、日本カナダ商工会議所幹部、ラグビー・ワールドカップカナダ代表選手、Aburiグループ幹部、メディアなど約30人の招待客に県産食材を使った料理を紹介した。
うまみと甘みの霜降り肉「いわて黒毛和牛」
冒頭で達増知事は、レセプション開催に協力した丸山浩平在バンクーバー日本国総領事に感謝の言葉を述べ「カナダの皆さんに岩手県産食材をショーケースできる機会を持てたことを光栄に思っています」と英語であいさつした。
達増知事によると、岩手県では2011年の東日本大震災で被害を受けたあと「サステイナブル・デベロップメント(持続可能な開発)」という、国連が提唱した概念に沿って復興作業に取り組んできたという。農業では、有機肥料の使用率を高めることにより健全な土壌再生サイクルが生まれ、化学肥料や農薬使用を削減する資源循環型を実施している。
「県産の黒毛和牛ブランドは資源循環型農業の一環として生産されており、うまみと甘味のある美しい霜降り肉です。すき焼きや寿司のネタとして最適です」と話し、農薬を使用していない米「銀のしずく」、寒い気候から産まれるりんご、澄んだ水を用いて発酵させた日本酒「南部美人」など、食の安全性とおいしさをアピールした。
和食文化のプロモーション
丸山総領事は「岩手県というと『雨にも負けず、風にも負けず』の宮沢賢治をまず思い出します」と述べ、岩手県民の東日本大震災からの復興への努力、岩手の人とその文化をカナダの人にも伝えたいと話した。2023年は和食がユネスコ無形文化遺産に登録されてから10年目にあたることから、総領事館でも和食文化のプロモーションに力を入れていきたいとのこと。
岩手県釜石市では、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップの際、台風でカナダ・ナミビア戦が中止となったが、カナダ代表選手が台風の被害を受けた地域でボランティア活動をしたというエピソードがある。達増知事はこの日出席したカナダ代表選手のヒューバート・バイデンさん、ルーカス・ランボールさんにお礼を述べ、岩手牛と岩手米「銀河のしずく」を贈呈した。
また、県産食材を多く利用しているAburiグループ、Aburi Restaurant Mikuに「いわて牛取扱推奨店認証」の盾を贈呈した。
創作料理と日本酒に舌鼓
日加商工会議所会長サミー高橋さんの音頭で乾杯したあとは、お待ちかねの試食タイム。サンふじアップルソルトがかかった生ガキ、ウイスキーとしょうゆなどを用いた岩手和牛タルタル、赤みそでマリネしたラムチョップりんごのコンポート添え、柚子こしょう、りんご、からしがほんのり香る岩手和牛のにぎり、デザートは赤みそとキャラメルを使ったりんごのタタンなど。
Mikuのエグゼクティブ・シェフ林和弘さんの解説に、「皆さんが知っているこれまでの和食とちょっと違うかもしれませんが、岩手の食材を取り入れたマルチカルチャーな創作料理をご試食ください」と、岩手産農産物のプロモーションを担当しているバリアブルリンク北米支社長の鈴木美和さんが説明を加えた。
この日、振る舞われた日本酒は南部美人酒造の純米大吟醸「南部美人」、同じく純米大吟醸の「心白」、糖類無添加の梅酒。「ウエルカムドリンクで出された『心白』が食事に合っていた」「和牛のにぎりがとろけるようだった」など出席者から歓喜の声も。おいしい食事とお酒で会話もはずみ、歓談のひとときが続いた。
(取材 ルイーズ阿久沢)
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