エドサトウ
宮崎の草原に多くの馬が草をはみ、のどかな山里の風景があった。カルラは川で自分の馬を洗っている。隣の集落に住んでいるタケがやってきた。彼の集落の近くに竹やぶがたくさんあったので、彼はタケと呼ばれていた。
タケが「よう!一生懸命に洗っているな。やあ!きれいな馬になったなあ」。年頃のカルラはタケがくると、ドキドキした。「今度は、馬の乗り方を教えてやるから、麻の布と縄をもってこい!」。カルラが不安に思い「どうして、麻の布がいるの?」「それは秘密だ。誰にも言うな。おかん(母)には頭からかぶる着物を作ると言え」とタケがそう言って帰っていった。
翌日にカルラが、また、「私が馬に乗ることができるの?」と聞くと、「そうだ、俺は馬に乗れるから、お前に教えてやるから、誰にも言うでないぞ。だから、麻の縄と布があればもってこい。いいか。おらも、うちにある麻縄をもってきてやる。お前は女の子だから、馬に乗るズボンような胡服がいるから、自分で作ってみよ。いいか、それが出来たら、あの山のすその平原で練習をしよう」
タケは15歳、目がくりくりして可愛く、少しほりの深い顔立ちのカルラは14歳。彼女を誘ったのは、タケの初恋であったのだろうか?
カルラは母には内緒で、麻布を半分に重ねて二つ折にして、布の真ん中を下から足の長さくらいを黒曜石のナイフで裁断して、太い麻糸で縫った。
投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
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