プロボクシングトレーナー吉川英治さんによるチャリティボクシングイベントが、2月11日にブリティッシュ・コロンビア(BC)州リッチモンド市のRaincity Boxing Studioで開催された。
チケット代金として集められた寄付金は、希少がんで闘病中の米澤幸也(ハリー)さんとフィリピンの孤児へ送られる。当日までにチケット約200枚分の寄付金が集まった。
吉川さんが招待した、カナダの国民的ヒーロー、テリー・フォックスの広報担当だったBill Vigarsさんが試合前にリングの上からあいさつ。「みなさんに会場にお集まりいただいたこと、ハリーさんのための支援をどうもありがとう」と感謝を述べた。
多くの人が駆け付けたチャリティ試合
第1試合の4ラウンドがチャリティ試合で、その後は公式戦が続いた。闘病中のハリーさんと同じ学校に通う学生や講師、友人など多くの人が観戦に訪れた。
吉川さんと勢いのある3人の若手ボクサーとの立て続けの打ち合いに、会場からは「You can do it! Go Eiji!」と応援の歓声や拍手があがった。
チャリティ試合スケジュール
Round 1 吉川英治 vs 徳永篤(プロボクサー)
Round 2 吉川英治 vs 高橋勇輔(キックボクサー)
Round 3 & 4 吉川英治 vs Robert Couzens(前カナダ、ウェルター級チャンピオン)
「言葉じゃなく、行動で見せる」
チャリティ試合を企画した吉川英治さんは、第1ラウンド開始後すぐに肋骨を骨折するケガを負ったが、最後まで試合を続行した。「病気や戦争や差別で苦しんでいる人が世界にはたくさんいる。それに比べたら、骨折なんか痛くもかゆくもない。カッコ悪くても、キツいことに正面からぶつかる。言葉じゃなく、行動で見せる」と、チャリティへの熱い思いを語った。
試合後は多くの観客が吉川さんに歩み寄り、「どんなに打たれても前に前に進んでいく姿に励まされた」「自分も困難に立ち向かおうと思えた」など感謝の言葉を伝えた。
一人一人それぞれできることをやる、それが大事
第1ラウンドで出場したプロボクサーの徳永篤さんは闘病中のハリーさんと同じSELC Collegeに在学している。野球の経験があることや同じ学校に通う留学生であることなど共通点が多く親近感を持ったという。また、試合のチケット販売にも携わり、「自分の利益のためではなく人を助けるため、それがこれまでの試合より大きなモチベーションになった」と話す。
最後にハリーさんへ「病気になる前の元気な姿に戻って、ぜひ一緒にキャッチボールがしたい。病気はつらいし苦しいし孤独を感じることもあると思うけれど、そういうときこそ大事な人やこれからやりたいことを思い浮かべて、がんばってほしい」と力強く応援のメッセージを贈った。
前カナダ・ウェルター級チャンピオンのRobert Couzensさんは、体重で8階級上回る180センチの長身。吉川さんからの依頼を即答で受けたチャンピオンは、ハリーさんについて「どんな人物なのか深くは知らなくても、闘っている青年のために支援したいというEijiの熱意は参加の理由に十分だったよ。きっとすばらしい青年なんだろうね。毎日少しずつでも良くなって、病気に打ち勝ってほしい」とコメントした。
ハリーさんが通っていたSELC Language College校長のサミー高橋さんは、今回のチャリティ試合にハリーさんへの支援を加えることを吉川さんに提案し、即座に快諾を得た。このイベントをきっかけに、たくさんの人にハリーさんのことを知ってほしいと話す高橋校長は「きょうは本人は会場に来られなかったけど、みんな真剣にトレーニングをして、この試合に挑んだ。ハリーくんにもがんばって闘って元気になってほしい」と応援のメッセージを伝えた。
同じくSELC Collegeで学生へのアドバイザーを務めるTaro Whitredさんは、ハリーさんの在学中にボランティアや留学生活について相談に乗っていたという。「このような厳しい状況のなかでも多くの人に影響を与え、病気と闘っているハリーさんを誇りに思います」とその人柄を称えた。
ハリーさん、病室で笑顔
2月16日、サミー高橋さん、吉川英治さん、SELC Language College卒業生の丸岡裕典さんが米澤幸也(ハリー)さんに会いに病室を訪れた。ハリーさんは、集中治療室から現在は病室に移って治療を続けている。
募金活動は高橋さんが主導し、SELC Language CollegeやSELC Collegeの学生、日本カナダ商工会議所関係者などから寄付を募り、吉川さんのチャリティボクシングイベントへ寄付。イベントで集まった寄付金の半分(もう半分はフィリピンの孤児のために寄付)に、さらに追加して計3,305ドルが米澤さんに渡された。
吉川さんは「次は6月10日に試合するから一緒に会場に行こうって、ハリーに言った。治るまでずっとリングに上がる。骨折した翌朝から走ってるよ。命を救うには命を賭けなきゃ」と、打撃を受けて黒くなったパンダ目で話した。
(取材 池田茜音、編集部)
*2月17日に掲載した記事に加筆して更新しました。
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