インドのプッタパルティからバンクーバーへの帰国は又東京経由だった。東京へ着いた途端、何故か目黒のサイセンターに又行きたくなった。行ってどうと言う事はない、数冊本を入手してバンクーバーに戻った。戻ってから、早速、又バンクーバーのサイセンターを探し、行ってみる。E. BroadwayとVictoria Dr.のコーナーからちょっと奥まった通りにある古い綺麗な小さな教会だった。その日、土曜日で色々な行事もあり、日本の人もいた。でも結局、私の体験と彼らの体験は別だと理解し、インドの言葉でマントラを覚えたり、賛美歌(バジャンソング)を歌ったり私にはできない。そして、サイババの教書を読み始めたが、これって宗教団体なのかなぁ?と考えてみた。サイセンター教会にはキリストも、仏陀も、イスラーム教のアッラーも、インドの数えきれない色々な神様の写真も飾られている。どうやらどの神様を拝んでもいいみたいです。
そして、これだけセンターで色々体験して、寄付を頼まれたことはない。それどころか、センターでは御馳走になる。私はカトリックの信者でバプタイズしている。教会へ行けば毎回献金をする。このサイセンターで一緒になる人達の雰囲気が温かく良いので、私は暇さえあれば行くようになった。行って何する?一緒に歌うふり?
とうとうある日、オッペンハイマー公園横にある「St. Paul’s Roman Catholic Church」の無料給食配給施設で1000人のホームレスへ給食をすることになった。センターから参加者は多国籍の人達だ。でも日本人は私一人だった。食事配給場所の席数は100席だから、1回100人入れて、それを10回繰り返すのだ。
全部採食で自分達で朝から作り、もしかすると半日前から用意していた人もいたと思う。夕方から給食が始まる。コーヒーやお茶のサービスもする。結局、980人分をサービスしたが、本当に疲れた。それから30年近く、その教会も今はもう無くなっているが、サイセンターの行事として1000人の給食はそれ以来、又行われることはないみたいだ。
でもねぇ、オッペンハイマー公園の周りにぐるーっと大勢のホームレスが列なして食事を待つ姿、忘れることはできない。
その後、日本人グループが出来て教会ではなく、パウエルストリートの仏教教会の隣にあるホームレス娯楽施設で毎年シーズン毎に、給食を始めた。始めてから15年くらい続けたが、今はもう皆メンバーが高齢化して出来なくなった。
そして、そのサイセンターも、今は小さな教会から引っ越してW. Hasting & Victoria Dr.の近くの広い場所に移っている。
「セレンディピティ」幸運をつかむは、1回40-50人の食事を一生懸命作って食べてもらう。食べる前に、ホームレスの人達が皆でそろって大きな拍手をしてくれる。
その瞬間の「幸せ感」。ああ、やってよかったぁ。
セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。
許 澄子
2016年からバンクーバー新報紙でコラム「老婆のひとりごと」を執筆。2020年7月から2022年12月まで、当サイトで「グランマのひとりごと」として、コラムを継続。2023年1月より「『セレンディピティ』幸運をつかむ」を執筆中。
「グランマのひとりごと」はこちらからすべてご覧いただけます。https://www.japancanadatoday.ca/category/column/senior-lady/