エドサトウ
雪が降る。激しく、悲しく舞う粉雪に思いを乗せて、二人は大阪から新幹線に乗り、北九州の博多に向かった。
遠い過去の日の遺伝子が、二人の魂を呼び起こしているのか?不思議な運命の繰り返し、つまり、日本人の持つものを突き詰めれば、縄文時代の血が二人の中に流れていたのであろうか?
カナとトオルの二人は、大学の考古クラブの先輩と後輩なのである。二人は思いついたように、九州歴史博物館の展示を見ていた。カナがトオルに言う。「私は何か不思議に思うの、あの時代の倭国は、当時の朝鮮より文化が高かったように思うの。たぶん、朝鮮でも中国の影響を受けた楽浪郡は別かもしれないけれど。倭国の一部でもある朝鮮の南の海岸線では早くから鉄を生産していて、日本側の出雲とか佐賀などに送っていたような気がするの?」。すると、トオルが言う。「いや、僕もそんな気がするなあ。だから、ジマ大国は北九州から出雲にかけてあったかもしれない。だから、奈良の古墳などは百済などの有力者のお墓のようにも見えるけれど、実はそれは、装飾品だけで、それも中国製かもしれない。だから、奈良の古墳は、本当は日本の有力者とか大王(おおきみ)だとも、想像を飛躍すれば思えなくもないなあ!」「そうそう、私もそう思うの」とカナが答える。
カナの生家は、奈良県明日香村から少し南の山奥に入った処にあった。
彼女が中学三年生の時に、三歳年上のトオルと偶然にネットで知り合い、メール交換をしていたのである。
投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
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