カナダと日本の間には姉妹都市・友好都市を結んでいる都市が多い。お互いの都市を知り、2国間の友好関係を深める役割を担っている。
今回は、群馬県藤岡市と友好都市のサスカチュワン州レジャイナ市のサンドラ・マスターズ市長に話を聞いた。
カナダ中部に位置する平原州として知られるサスカチュワン州。農業が盛んで、最近では情報技術や環境エネルギーにも力を入れている。そのサスカチュワン州の州都レジャイナ市。アメフトリーグCFL(カナディアン・フットボール・リーグ)サスカチュワン・ラフライダーズの本拠地で、その熱狂的なファンを知らないカナダ人スポーツファンはいないほど。
観光地としてはあまり知られていないレジャイナ市だが、藤岡市との関係や街の魅力について話を聞いた。
友好都市「藤岡市」とは教育関連の交流を中心に関係を構築
マスターズ市長によると、藤岡市との関係は1991年まで遡るという。学生派遣事業を機に始まった交流関係は友好都市協定として2019年に提携した。
市長は「友好都市関係の第一の目的は、都市間のコミュニケーションと理解を深め、情報を共有し、友好を深めることにあると思います」と言う。
ただ、マスターズ市長が就任したのは2020年。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、お互いの都市を行き来できない状況にあった。「本来は今年(2022年)の夏に藤岡市を訪問する予定でしたが、叶いませんでした」と振り返った。
それでも藤岡市の職員とは連絡を取り合い、情報交換をしながら、お互いに市について理解を深めているという。
「最近では、絵本を贈り合ったり、本を贈ったりと、教育的な交流をしながら、常にコミュニケーションのチャンネルをオープンにしています。そうすることで、お互いに異なる部分と共通する部分を学ぶことができますし、また企業も2都市の関係をサポートしてくれることに関心を示しています」
ただ、レジャイナ市民のどのくらいの人が藤岡市との友好都市関係を知っているかを聞くと、政府関係者とかこれまでの交換留学などを考慮して「22%くらいの人でしょうか」と笑った。「学生たちが定期的に訪れていますし、ソーシャルメディアなどへの投稿もありますし、大体そのくらいではないかと思います」
日加往来の相互交流再開を待ち望んでいる
「新型コロナは(日加間の)往来を完全に止めてしまいましたが、交流にはやはり実際に行き来することが重要だと思っています」と語った。
市の関係者の往来は隔年で実施しているという。2022年はレジャイナ市の関係者が藤岡市を訪問する予定だったが実現しなかった。今年は藤岡市関係者がレジャイナを訪れる予定だと話す。
「藤岡市との友好都市という結びつきは私たちにとって特別なもので、大事にしたいと思っています」
学生の交流から始まった交流は、今では多方面に広がっているという。お互いに行き来をして街の様子に触れることが「関係を前進させる最善の方法だと認識しています」
マスターズ市長が当選した後、藤岡市から連絡があったという。意見交換をしているうちに、大都市ではないが郊外の中心都市であるという役割を担っている類似点などを見つけた。また、藤岡市との共通点は安全な街で、物価もそれほど高くないリーズナブルに暮らせる街だということ。
「本当に(藤岡市を)訪問する日を楽しみにしています。送ってもらった写真には信じられないような美しい桜がありました。レジャイナには桜がないのです」とマスターズ市長。
1日も早い交流を待ち望んでいると語った。
後編は「マスターズ市長レジャイナ市の魅力を語る」
*インタビューは2022年10月に実施した。
レジャイナ市と藤岡市との友好都市締結
2019年8月3日、レジャイナ市で、レジャイナ市と藤岡市との友好都市協定調印式が行われた。在カルガリー日本国総領事館小林成信総領事(当時)が立ち合い、レジャイナ市はマイケル・フーゲル市長(当時)、藤岡市は新井雅博市長が出席した。
産経新聞によるとレジャイナ市と藤岡市との交流は1991年(平成3年)に藤岡市からレジャイナ市への中学生ホームステイ派遣事業からスタート。JETプログラムのALT(外国語指導助手)の呼びかけがきっかけだったとしている。
レジャイナ市
カナダ西部の州、サスカチュワン州の州都。サスカトゥーン市に次ぐ都市。カナダでは16番目に大きい。州の南に位置する。人口は約22.6万人。面積は182.42平方キロメートル。緯度:北緯50度26分、経度:104度40分。市制施行1903年、サスカチュワン州(1905年)の州都になったのは1906年。
Land Acknowledgement:レジャイナ市は、「サスカチュワン州南部とアルバータ州、マニトバ州の一部にまたがる35の先住民族との間で締結された条約 “the Treaty 4 Territory” の伝統的な土地にあり、クリー族、ソールトー族、ダコタ族、ナコタ族、ラコタ族のoriginal landsであり、メティスのhomelandであることを認識している」と市のホームページで宣言している。
サンドラ・マスターズ市長
2020年9月の選挙で現職のマイケル・フーゲル市長を破り当選。サスカチュワン州の主要都市で初めての女性市長となった。
(取材 三島直美)
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