今年はかなり遅かったがようやく春到来。BC州の州花であるハナミズキ(Dogwood)や色とりどりの花もやっと咲きほころび、視覚だけではなく、嗅覚も大いに楽しませてくれる。いろいろな花の「匂い」である。
この「匂い」の漢字だが、つい最近、国字だと分かってびっくり。国字(こくじ)とは、日本で作られた和製漢字であり、日本的な知恵や工夫を凝らして、かなり昔からいろいろ作られてきた。代表的な一つが「働」で、「動」に「人」を付けて、「人が動く」すなわち、「働く」である。また「しつけ」の漢字「躾」も身だしなみを美しく・・・、すごい。「峠」や「凧」、そして魚の「鰯」などもなかなか趣深く、文化を込めた漢字の芸術かも。
この「匂」も平安時代に作られたとのこと。当時は「におひ」と発音していたようで、「ひ」をカタカナの「ヒ」にして、この「匂」を作った。平安朝貴族の漢字に対する粋な遊び心を感じる。でも、日本人はこの「国字」、学校で習った記憶もなく、ほとんど知らず分からず。我が輩も日本語教師になるまでは全く存ぜず。でも調べるとなかなか興味深く、漢字に関心がある上級者に説明するとすごく喜ばれるので、日本語教師としては何かと便利である。
さて、この「匂い」だが、ナント2010年にやっと常用漢字の仲間入り。現在では「におい」の漢字は「臭い」と「匂い」と二つある。確かにややこしいが「匂い」は良い「におい」であり、「臭い」は不快な「におい」として日本人はちゃんと使い分けている。
でも人によって快・不快の感じ方が異なる。例えば、タバコや秋刀魚を焼く「におい」などは微妙であり、また、ほのめかす意味の「犯罪のニオイ」などはひらがなやカタカナで書いたほうがよさそうである。
さらに、この漢字「臭」もかなりややこしい。中国では「自」と「犬」からなる会意文字であり、「自」は鼻を表わし、犬がクンクンすることから、「自」の下に「犬」の「臭」であった。でも戦後、日本は漢字改定で「犬」を「大」に変えてしまった。誠に残念だが、嗅覚などの「嗅ぐ」はまだちゃんと「犬」である。うーん、実にややこしい。
また、「臭い」は読み方が「におい」と「くさい」と二つあるので教師としては大変。日本人は「汗の臭い」と「汗臭い」など文脈から容易に判断できるが、生徒には難しい。もし「臭い臭い」はどう読むんですか、こんな質問されたら、うーん、どのように説明すれば・・・。いかにも日本的でよろしくないが、「臭いものに蓋をする」のごとく、なるべく公にせずこっそり、さりげなく説明したい思いである。
矢野修三(やの・しゅうぞう)
1994年 バンクーバーに家族で移住(50歳)
YANO Academy(日本語学校)開校
2020年 教室を閉じる(26年間)
現在はオンライン講座を開講中(日本からも可)
・日本語教師養成講座(卒業生2900名)
・外から見る日本語講座(目からうろこの日本語)
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