若手デザイナーの登竜門 バンクーバーファッションウィーク
バンクーバーファッションウィーク(VFW:Vancouver Fashion Week)2023年秋冬コレクションが4月12日から5日間、バンクーバー市内David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouverで開催された。
バンクーバーファッションウィークは2001年に初めて開催され、今ではニューヨークに続き北米で2番目の規模となる国際的ファッションイベント。毎年世界各地からデザイナーやメディアが招待され、若手デザイナーが世界で活躍するためのステージにもなっている。
ショーには多国籍・多文化な都市バンクーバーらしく、カナダをはじめアメリカ、ウクライナ、メキシコ、フランス、イギリス、オランダ、ベルギー、インド、フィリピン、台湾、韓国、日本と13カ国からブランドが参加した。
年に2回、世界が注目する1週間
ファッションウィークとは、開催される約1週間に複数のブランドが各国の都市に集まり、最新のコレクションを発表する期間。9~11月の春夏コレクション、1~4月の秋冬コレクションと年に2回開催され、なかでもミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドンは4大コレクションと呼ばれ、世界で最も注目される。
バンクーバーは北米ではニューヨークに続く規模であり、若いデザイナーにとっては4大コレクションへの登竜門とされている。
今回のバンクーバーファッションウィークには日本から、CERITA TUR、NIERCLOTHING、TSUZUMI FUTAMATA、WEARING MAIA、SATOMI, ELBESO、HAPPI TOKYO、NORIKO KIKUCHI、ATELIER REN KIMONOREMAKE、UNSERTEN、KONOMA CLOTHING STUDIOのブランドが参加した。
伝えたい気持ちや思いを、ファッションでどう表現するか
注目したのは「TUZUMI FUTAMATA」。
「着ることで裸になる」を今回のショーのテーマとし、視覚的な柔らかさや色合いから人肌を彷彿とさせるその際立ったデザインを手掛けるのは、武蔵野美術大学に通う現役大学生のふたまたつづみさん。
日本での活動や渋谷・原宿でのゲリラファッションショー*などをきっかけにバンクーバーファッションウィークからショーの依頼を受けたのだという。
*ゲリラファッションショー=業界やメディアへの告知なしに突然実施されるファッションショーのこと。
今回その新進デザイナー、ふたまたつづみさんに話を聞いた。
-今回のショーのテーマは「着ることで裸になる」ですが、なにをイメージして?
具体的なモチーフはないです。人間の体を感じられるようなかたちにしたいなと思って、こういう質感だったり、形を作っています。
-発想はどこから?
私が伝えたいメッセージっていうのは、正直ある意味ちょっと強い、というか、あまり人に寄り添うという感じではないと思っていて、「人は変わるべきだ」とか「あなたは今着ている服で本当にいいの?」というようなメッセージで、ある意味とても強いもので、だけどだからと言って強く刺すような表現では届かない。それをそのまま伝えるのはあまりおもしろくない。でも柔らかくってもちもちとしていておもしろおかしくて、それであって、人間の体ってみんなが見るものじゃないですか、そういう親しみやすさみたいなものが必要だなって感じて、こういう表現をしています。
「自分が世の中に必要だと思うことをやりたい」
肌の質感をデザインに取り入れることによって根源的な懐かしさを感じてもらい、見ている人と共有していくようなメッセージの伝わり方に変えたいというふたまたさん。デザインを始めたのは、だれかに何かを伝えたい、自分だけで完結せずに変えていきたいと思ったのがきっかけだと話す。
続いて、21歳にして自身のブランドを立ち上げ国境を越え活躍しているふたまたさんに、こんな質問をしてみた。
-選択に迷ったときや何かに悩んだとき、決断するための軸や大切にしていることは?
私は難しい方を選びたいなといつも思っています。簡単な道と難しい道があったら、たぶんほとんどの人が簡単な道にいくと思う。でも私は、それぞれどういうことをしたいか、どういうことを目標にしているかによって違うと思うんですけど、私はみんなと同じように生きていたら、私のやりたいことはできないというか。私はみんなを変えたいなと思って活動しているので、その場合はやはり難しいことを選ぶ方が私の目標のためには近いなと思っています。
-以前インスタグラムの自身のアカウントで発信していた「死ぬ以外の怖いことは全部やりたい」ということばがありましたが、怖いことにいつも立ち向かっているのですか?
私は正直、人よりも怖いことが多い方だと思っているので、やっぱりだからこそやる意味があると思っています。
-これからの夢、やっていきたいことは?
特になくて。私はいま、自分が世の中に必要だと思うことをやりたいので、何年後になってもその時々で私が必要だと思ったことをできる環境にいたいです。
***
新しい環境や挑戦に怖いと感じることも多いと話すが、自ら環境を選び意欲的に発信を続けるふたまたさんの瞳には強い意思が感じられた。
来場者のファッションスナップを紹介
そのほか個性が光る来場者のファッションにも目が離せない。デザイナー、メディア、モデル、観客それぞれがファッションを通して多様な情報を発信し、最新のトレンドを探る5日間だった。
(取材 池田茜音/動画 斉藤光一)
合わせて読みたい関連記事