「セレンディピティ」とは「偶然の幸運を手に入れる力」のことだという。予想もしていないものが発見できたり、ひらめきによって新たなアイディアが浮かんだり、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、「ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることだ」という。
気が付いたらもう80何年か生きてきた。そして、その一生を振り返ると、正にこの人生『セレンディピティ』で生かされてきたみたいなのだ。
先ず言えることは「人との出会い」。娘たちに話すと直ぐに「ママ、バッカみたい!」と笑う。どうぞ笑いたい人は笑って下さい。思い切り。そして、私は自分に起きたことが、単なる偶然「わっはっはぁー」と笑っていたのが、終活を始めたら、やっぱり書いておきたい思い出になっているのです。何故なら自分に起きた事。またあった出会いが皆「セレンディピティ」なのです。最初に今も思い出に残っている、出会った人達の名前をリストしてみます。1960年代、香港の哲徳国際空港で働いていた時、最初の2年間は色々な人、特にVIPの世話をするのが仕事でした。それで、テレックスでリクエストされる人に会いお世話をします。三島由紀夫、兼高かおる、先代の若乃花、若大将の加山雄三、ケンタッキー・フライドチキンの創始者カネール・サンダース、髭の殿下「寛仁(トモヒト)親王」。まだ、沢山いたけれどもうすっかり忘れています。そして、これらの人達の名前言っても、書いても、もう今は知っている人はいないかもしれませんね。でも私の思い出なのです。
それは「人」に会う事だけではない「あっ、そうだ!その時に幾つか『セレンディピティ』があったのだ。忘れてはいけない」。今思えば当時香港からカナダへ移民出来たのは「セレンディピティ」のお陰だった。
実は当時、中国は「文化大革命」で「紅衛兵」が活躍、香港の街中に爆弾をしかけ、特に空港にしかけられた爆弾が危険状態だった。そして、香港の人達は誰もが外国移民に夢中だった。建築業の夫とその家族は建てた高層ビルが売れず、厳しい生活が始まった。結局、夫の弟がモントリオールのマギール大学の化学研究室で働いていたので、その彼に保証依頼して、私達家族4人移民申請手続きをした。
申請後2年。カナダ移民局から何の連絡もない。私は移民を諦めていた。
移民申請2年過ぎたその年、11月中旬夕方、空港で仕事中(ルフトハンザ ドイツ航空)私に電話が入った。相手はルフトハンザ ドイツ航空の香港総支配人だった。そして、電話口で彼が言った。「Did you apply immigrant visa for Canada?」(うわぁぁぁぁぁぁ!何故、知ってるの?うちなる言葉)
私は会社に内緒で2年前に移民手続きをやっていたから「あーら、首になったら困るわよ」と内心思ったのだ。電話口で返事に困っていると彼が言った。
実は、僕の妻が香港カナダ領事館の総領事秘書なんだ。そして、彼女が最近していなかった総領事のデスクを整理したら、澄子、貴女の「移民申請書類」が見つかったのだよ。そこに「ルフトハンザ職員」と書いてあるので、総領事が気にかけてくれ、彼が保管してくれてあったが、忘れちゃったみたいだ。たまたま、彼女がそれを今回見つけたから、彼女が僕に貴方が「今もカナダへ行きたいかどうか」確認しろと言うので、今、電話したのだよ。「まだ、カナダへ行きたいですか?」
彼はそう言った。私は迷わず「カナダへ行きたいです」と即答。すると彼がカナダのビザは2週間でとれるから、いつ出発したい?と聞いた。ルフトハンザが私の家族全員4人分のモントリオール行き切符を、無料で出してくれます。
それで、私は東京経由で、実家で家族とクリスマスと正月を過ごしてから、カナダへ行きたいと言った。すると彼はそのとおり、「香港、東京、バンクーバー、そしてモントリオール」の航空券を全部用意してくれた。更に12月初旬から1月中旬までの休暇手続きまでしてくれたのです。退社ではなくなっていました。その間はホリデイで給料を貰うようにしてくれました。私達家族全員が楽しいクリスマス、お正月、そして、日本でスキー旅行までして、モントリオールに着いた時、そこはマイナス38度、厳寒の日でした。
そして、モントリオール滞在3年間、政府から生活費と奨学金をもらいフランス語を習い、マギール大学で英語も勉強が出来ました。「素晴らしいセレンディピティ」でした。
結局、そこで就職は出来なかったけれど、沢山の日本語本も読め、色々勉強が出来たのです。その日本語本は皆「ルフトハンザ ドイツ航空、羽田空港のスタッフ」からの贈られた物でした。
カナダヘあの革命時期に移民出来たのは、私の「セレンディピティ」幸運を摘む。
セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。
許 澄子
2016年からバンクーバー新報紙でコラム「老婆のひとりごと」を執筆。2020年7月から2022年12月まで、当サイトで「グランマのひとりごと」として、コラムを継続。2023年1月より「『セレンディピティ』幸運をつかむ」を執筆中。
「グランマのひとりごと」はこちらからすべてご覧いただけます。https://www.japancanadatoday.ca/category/column/senior-lady/