「足立区議選挙に立候補して感じた選挙に参加する意義」Crescent Moon Enterprisesオーナー佐藤広樹さんに聞く(前編)

 バンクーバー市ガスタウンにある雑貨屋さんGIFT&THINGSとウィスラーにある姉妹店SMILE GIFTを運営するCrescent Moon Enterprises Ltd.オーナー佐藤広樹さんが、今年5月に実施された足立区議選挙に立候補した。当選はできなかったものの、得るものが多くあったという。

 日本の選挙と言えば投票率の低さや立候補者の減少などネガティブな面が強調されるが、自身が立候補して感じたことはポジティブなことも多かったと話す。

 7月7日、バンクーバーに滞在中の佐藤さんに立候補した側から見た選挙、そして、GIFT&THINGSで店長を務める久保ゆうやさんも同席し若者の目線で佐藤さんの立候補がどのように映ったのかなど、2人に話を聞いた。

議員活動の良さが見えた立候補

 区議選への初めての挑戦で今回は当選できなかったが「やって良かったと思う」と語った。議員活動というものをポジティブに捉える機会になったという。「議員ってどうせ働いてないんだろうって思ったりしてたんですけど(笑)、実際に会って話をしてみると、みんな勉強していたり、がんばっていたり、人間的にも魅力がある、いい人が多いと思いました。信頼できるんだなと。区議について言えば、議員年金もなく、かかる経費や仕事内容の割に、給料もそれほど高いわけでもないですけど、信念があり、意思があるからやっているのだなというのがよくわかりました。とても勉強になりました」

 そうした人と接点を持てたことで自分自身の区議になった時の活動についての考え方も明確になったと感じている。

 「全く知らない世界でしたけど、ただ単に『出馬しよう』と思った出る前と、今回選挙を経験した後では、考え方も明確になりました。前は、元職員と一緒に仕事をしたい、エコ活動をしている仲間の考えを伝えたいなどと思っていましたが、今は足立区を良くしたい、子どもがもっと視野を広げられる活動をしたいとか、したいこと、自分にできることが明確になってきました」

 区議に立候補したのは、足立区職員時代の同僚たちと、カナダで経験したこと、同僚たちとは違う経験をしたことを、今度は区に戻って、議論したり、仕事をしたり、「みんなと一緒に違う立場で足立区を良くしたいなと思ったんです」

 でも立候補を経験して、それだけではない何かが見えた。今はもう一度議員を目指そうと明確に思えるという。「自分の意識が高くなってきていると思いますし、自分のやってきたことが何かの役に立てると思えるので、議員という仕事に希望が持てました」

選挙に挑戦したからこそ見えた問題点

足立区議選挙に立候補して、選挙活動期間中に地元で街頭演説する佐藤広樹さん。2023年5月17日、東京都足立区。Photo by Japan Canada Today
足立区議選挙に立候補して、選挙活動期間中に地元で街頭演説する佐藤広樹さん。2023年5月17日、東京都足立区。Photo by Japan Canada Today

 これまでは投票する側からの視点だけだったが、出馬したことで違う問題点が見えたという。一つ目は投票率。市民の投票への関心は低いと感じたと語る。投票率が低ければ大きな政党や知名度がある人の方が有利に働く。政策をそれほど持っていなくても、有名人というだけで票が集まってしまうと話す。

 では投票率を上げるにはどうすればいいのか。「まずは議員自身がもっと市民に投票に行くよう促すことだと思います。それから、議員自身が自分のやっていることをどんどん発信すること。SNSなど今は既存メディアを使わなくても自分で発信できる時代。そうやって有権者にアピールして投票に行ってもらうこと」

 さらに、「選挙について学校教育でももっと深く教える必要があると思っています」。選挙は国民の義務だが、選挙権は国民の権利でもある。投票年齢が18歳に引き下げられたことで高校3年生も投票できるようになった。学校教育の大切さを感じるという。

 久保さんは若者の視点から、疑問点を指摘する。「日本で投票するときに思ったのは、投票日が日曜日というところです。僕たちは月曜から金曜、中には月曜から土曜まで働いている友達もいました。それで唯一の休みの日に投票に行く気が起きないと。18歳まで年齢が下げられましたけど、学校もバイトも忙しいのに、それに日曜日に投票に行けと言われるのはという感じではないでしょうか。もう少し投票に優しい環境を作ってもらいたいです」と話す。

 選挙からは自分の一票が何かを変えるという手ごたえを得にくい。自分一人が1票を入れたところでどうせ何も変わらないという思いを抱く人も多い。

 しかし佐藤さんは立候補してみて、1票の大切さを身をもって感じたと語る。それはどの議員も同じだと。「立候補している人は本当に1票の大切さをよく知っていると思います。特に無所属だったり、初めて立候補する人は、名前や顔を覚えてもらって、政策も知ってもらって1票を入れてもらうのは本当に大変なことです」と言う。

 「まずは選挙に関心を持ってもらって投票に行ってもらう。投票に行こうと思えば、立候補者を調べたり、そこから行政や税金などにも関心が高まります」と佐藤さん。それは区議選でも、国政選挙でも同じこと。まずは選挙に関心を持ってもらいたいと語った。

後編「若い人に選挙に関心を持ってもらいたい」に続く。

佐藤広樹(さとう・ひろき)
Crescent Moon Enterprises Ltd.オーナー・代表取締役
1998年ウィスラーにSMILE GIFT、2008年バンクーバーにGIFTS AND THINGSを開店
2023年3月設立、一般社団法人「東京のCO2削減で都内観光を推進する会」代表理事(https://www.tokyo-co2.com/
東京都足立区出身

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