広島G7で思う「心が動いてくれればいいと思います」
在広島カナダ名誉領事 石田優子氏インタビュー(前編)

在広島カナダ名誉領事に就任した広島経済大学・石田優子学長。広島経済大学内にある在広島名誉領事館で。写真提供:広島経済大学
在広島カナダ名誉領事に就任した広島経済大学・石田優子学長。広島経済大学内にある在広島名誉領事館で。写真提供:広島経済大学

 在広島カナダ名誉領事に広島経済大学・石田優子学長が就任した。2023年3月5日付の中国新聞に掲載されたカナダ駐日大使イアン・マッケイ氏インタビューによると、「地域の女性リーダーの一人」として活躍している石田氏を任命したという。

 正式に就任したのは2022年11月2日。任命は「突然のことで驚きました」と笑う石田氏だが、名誉なこととして大役を引き受けることにしたと語った。それ以降、これまであまり縁がなかったというカナダについて理解を深めている。

 そんな折、先進7カ国首脳会議(G7サミット)が広島で開催された。来広したジャスティン・トルドー首相と面会する機会はなかったが、カナダを意識するG7サミットとなった。

 広島出身として、大学学長として、そして、名誉領事として、G7は石田氏にどのように映ったのだろうか?5月31日、広島市内で話を聞いた。

「心が動いてくれればいいと思う」

 広島市では開催前から連日G7が大きく報道された。1カ月も前から平和公園や会議があったホテル周辺は多くの警察官が警備にあたり、開催前日からの4日間は市内のいたる所で通行止めになるなど物々しい雰囲気となった。

 来広した首脳はG7のみならず、欧州連合、韓国やインドなどの招待国、そしてウクライナの大統領などが一堂に会した。

 石田氏は「改めて大きなイベントが広島で開催されたと感じています」と振り返った。そして注目したのはやはり「平和」についてだ。

 「広島はいつも核兵器のない世界という目標を発信していますが、今回はそうした内側からの見方ではなく、カナダ名誉領事としてカナダ側の立場で、海外の見方、カナダがどう考えているかにも注目しながらG7を見守りました」

 今年1月26日にはカナダ大使館で開催された「カナダ・ネットワーク・シンポジウム」にも参加し、カナダの立場を聞いたという。

 中国新聞のマッケイ大使インタビュー記事(2023年3月5日付)では「北大西洋条約機構(NATO)加盟国として、カナダは現時点では核抑止を優先する」とあるが、カナダ大使館はカナダとして「核抑止と核不拡散・軍備管理・軍縮は連動しており、核不拡散は核兵器廃絶の目標達成のための重要な取り組みである」と説明した。核廃絶には「対話を重ねるしかない」とも。

 トルドー首相は5月19日に岸田文雄首相と公式に広島平和記念資料館を訪問しただけでなく、21日にはプライベートでも訪問したことが後日発表された。

 石田氏は「国の立場があって言えないこともあったと思いますが、個人としては核のない世界を願っていることが伝わりました」と理解を示す。

 トルドー首相だけでなく、他のG7首脳も全員が資料館を訪問した。「(報道された)資料館の芳名帳に残された各国のメッセージを見ると、知ることの大切さが伺えます。知ってもらうことから始まって、そして、心が動いてくれればいいと思います」と語った。

後編「カナダと日本は力強いパートナー」に続く

石田優子(いしだ・ゆうこ)
学校法人石田学園副理事長・広島経済大学学長
2022年11月2日より在広島カナダ名誉領事

石田学園は1907年創立、1945年8月6日の原爆投下により学園の全校舎、付属建物、備品の全てを焼失、9月15日には仮校舎で授業再開(広島経済大学沿革より)
1967年広島市安佐南区祇園に広島経済大学創設。卒業生には福岡ソフトバンクホークス柳田悠岐選手がいる
在広島カナダ名誉領事館は2022年12月1日に広島経済大学内図書館にオープンした

(取材 三島直美)

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