海と山に囲まれ、自然のアクティビティに困らないバンクーバーだが、動物とのふれあいはどうだろうか? ブリティッシュ・コロンビア(BC)州ラングレー市にあるハッピーハード・ファームサンクチュアリーでは、ブタと触れ合いながら一緒にヨガを体験できるイベント「ピッグヨガ」が定期的に開催されている。
ピッグヨガはこの畜産動物のための保護施設、ハッピーハード・ファームサンクチュアリーの運営者であるダイアンさんの企画で、施設の運営費用を捻出するために始まった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時中止していたが、7月8日に3年ぶりに開催された。ヨガの後にはファーム内を一周するツアーが行われ、参加者らはここで暮らすさまざまな動物たちと触れ合った。
前編では「ピッグヨガ」を、後編では「ハッピーハード・ファームサンクチュアリー」の取り組みについてを紹介する。
「人と動物、お互いが支えあう関係」
ファームサンクチュアリーでは、主に虐待されたり捨てられたり危険にさらされていた牛や豚、鶏などの畜産動物が保護され飼育されている。世界最初のファームサンクチュアリーは1986年にアメリカで設立され、以降アメリカを中心に世界中で増えている。多くの施設では畜産業界の実情や動物の権利を訴える運動も行われている。
今回訪れたハッピーハード・ファームサンクチュアリーはバンクーバーで初めて設立され、寄付とボランティアで運営されている。
ピッグヨガはヨガインストラクターのシェルビーさんを招いて行われ、久しぶりの開催にもかかわらず約20人がイベントを聞きつけ参加した。参加者らはファームの芝生の上に持参のヨガマットを敷き、シェルビーさんの指導に従いヨガを進める。
そばで歩き回ったり草を食べたりするブタたちに始めは戸惑っているようだったが、徐々に距離も近づき、最後はブタと触れ合いながらリラックスしてヨガを。一方ピッグヨガに協力した4匹のブタたちは、ヨガに訪れた参加者らに緊張した様子もなく、人との交流を自由に楽しんでいるように見えた。
その後のファームツアーでは「コケコッコー!」という鶏たちの元気な鳴き声のなか、運営者ダイアンさんによってそれぞれの動物たちが施設に来た経緯や性格などが紹介された。ここで飼育されている動物たちは、道路で警察に救助されてやってきたり、一般の家から虐待などの通報で保護されてきたりとさまざま。「同じ動物でもシャイな子がいたり一匹一匹性格が違うんです」と母のまなざしで話すダイアンさん。参加者らはリラックスした様子で説明を聞き、紹介された牛や鶏、ヤギや豚など動物たちとの触れ合いを楽しんだ。
ダイアンさんは、動物たちには人を癒す力があると話す。ピッグヨガの収益は動物たちの生活費に充てられ、参加者は動物たちと触れ合うことで癒しを得ることができ、お互いに支え合う関係が築かれていた。
また、ピッグヨガ参加者のPattyさんは今回2度目の参加。ファームへの寄付も行っているという。「普段はあまりヨガをしないけれどとても楽しかったです。ここで動物たちのためにどんな活動をしているのか見ることもできてよい機会になりました」と、ヨガを楽しみ、よりいっそう保護活動への意欲が湧いたと笑顔で話した。
後編ではファームの活動内容を「『動物のための聖域』ファームサンクチュアリーとは?」で紹介する。
ハッピーハード・ファームサンクチュアリーWEBサイト: https://www.happyherd.org/
(取材 池田茜/写真・ビデオ 斉藤光一)
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