カナダとの縁が深い和歌山県の三尾から「語り部ジュニア」がバンクーバーを訪れた。8月18日には日本カナダ商工会議所(Japan Canada Chamber of Commerce: JC-COC)主催の歓迎会がSELC Collegeで行われ、「語り部ジュニア」の4人が三尾についてパネルを使いながら英語で紹介した。
一行は、語り部ジュニア3期生4人と、スタッフはNPO法人日ノ岬・アメリカ村の理事・語り部ジュニアリーダー柳本文弥さんを含めた5人の9人で、16日から22日までバンクーバーで活動した。
滞在中には、「カナダの三尾」とも言われるほど三尾との繋がりが強いリッチモンド市スティーブストンや、第2次世界大戦中・後と日系人が強制移動された歴史を展示するタシメミュージアム(サンシャインバレー)などを訪問し、日系カナダ人の歴史にも触れた。
語り部ジュニア4人が三尾の魅力を発信
今回バンクーバーで発表したのは、祭本知里さん、森美月さん、森祐月さん、宮本芽衣さん。高校生2人、中学生2人が、2人1組のペアになって発表した。
4人は、約1カ月間この日のために毎週日曜日に練習したという。この日の発表について聞くと祭本さんは「結構緊張したけど、うまいこと言えたからめっちゃ自分の中では結構いけたなぁって思いました」と話した。宮本さんは「緊張したけど最後まで練習の成果を発揮できたのでよかったです」と練習の成果に胸を張った。
森美月さん、祐月さんも「緊張しないか心配だったけど」と話したが、一緒にうまくできたと笑顔を見せた。
初めての訪問というバンクーバーの印象を聞くと、「あんまり違和感なかったです」「日本と違う感じの景色がよかったです」「自然豊かで、日本より住みやすそうなので、とってもいいし、時差ボケはないです」と元気な回答が返ってきた。
柳本さんは「日本で練習していたよりも声も大きくて、本番に強いなっと思いました。よかったです」とうれしそうだった。
今回三尾から語り部ジュニアがバンクーバーを訪問するのは第一期生の2019年に続いて2回目。2021年にも来加予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインでの交流となった。来加交流は今後も続けていきたいと話す。
バンクーバー滞在中に「(4人は)日に日に目の輝きが違ってきて。たくさんの人から歓迎されて目つきが変わってきましたね。すごく勉強になっていると思います」と柳本さん。有意義な滞在となっていると目を細めた。
語り部ジュニアの活動目的の一つは三尾の活性化。日ノ岬・アメリカ村では「すてぶすとん食堂」や「カナダミュージアム」など人が集まる施設を運営しているが、「バンクーバーと三尾との交流がもっともっと盛んになれば、そのことが三尾の活性化にもつながるし、街づくりに貢献できると思っています」と語った。
バンクーバーとつながりの深い三尾の活性化を応援したい
オープニングでは、三尾にあるカナダミュージアムに自身が制作したトーテムポールを寄贈したスコーミッシュ・ネイション(Squamish Nation) のダレン・イエルトン(Darren Yelton)さんがBlessingで歓迎。在バンクーバー日本国総領事館・岡垣さとみ首席領事も出席して4人の発表に耳を傾けた。
主催したJC-COCサミー高橋会長は、NPO法人日ノ岬・アメリカ村の柳本さんたちが2018年に来加し、三尾の活性化を目指していることを知って応援したいと思ったという。その後、知人を通じてトーテムポール建立を希望していることを知り、不思議な縁でイエルトンさんとつながり制作を依頼した。2021年5月には無事に三尾でトーテムポールの除幕式が行われた。
2019年には語り部ジュニア第1期生が来加してパウエル祭で発表。それをきっかけに「今回は2回目の訪問団がいらっしゃるということで、じゃあ歓迎会をしよう」と、JC-COCで開催し、語り部を披露する場をバンクーバーで設けた。日本の若者が英語を勉強していることにも目を細める。「これは英語の勉強にもなるんですよね。ALT(JETプログラムのAssistant Language Teacher)で行ってる先生も語り部ジュニアの英語の練習でボランティアをしているそうなんです」
今後は三尾の活性化のために学校を作りたいという。「世界中の留学生が集まるような大学のキャンパスを作りたいという話をしています」。若者が交流できる場を作ることで町が活性化すればうれしいと語った。
NPO法人日ノ岬・アメリカ村
和歌山県美浜町三尾地区の町おこしのために2018年1月に設立。地域再生とふるさと教育に関する事業を行い、地域の振興に寄与することを目的としている。カナダミュージアム、アメリカ村食堂「すてぶすとん」、語り部養成などの活動を行っている。ウェブサイト: http://americamura.wakayama.jp/
和歌山県三尾地区
和歌山県日高郡美浜町にある旧三尾村。1954年に3村が合併し美浜町となる。1888年に三尾村からカナダに渡航しスティーブストン(リッチモンド市)のサーモン漁で成功した「カナダ移民の父」と呼ばれる工野儀兵衛の出身地。最盛期には三尾村から2000人以上がスティーブストンに移民したとされる。彼らのうち、村に戻った人々が北米文化を持ち帰ったことから「アメリカ村」と呼ばれるようになった。
(取材 三島直美)
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