朝日レガシーゲーム2023が9月4日、ナナイモパーク(バンクーバー市)で開催された。少し肌寒さが残る雨上がりの午後、選手たちの大きな声が球場に響いた。
2023-24年シーズン開幕、2025年ジャパンツアーに向け準備へ
朝から年齢別の「朝日」チームの試合が行われ、この日の最後に開催されるのがレガシーゲーム。戦前にバンクーバーで人気を博した日系人野球チーム「朝日軍」へ敬意を表して毎年9月に開催される現代版バンクーバー朝日選手による親善試合であり、「朝日」の本格的なシーズン開幕も意味する。
今年は、3月にジャパンツアーに参加した選手たちと、これまでジャパンツアーに参加した経験があるOBたちにコーチらが参加して、混合2チームで対戦した。
Asahiのユニフォームを着て白球を追いかける選手たちと、それを応援する家族や友人たちの、一つひとつのプレーに一喜一憂する楽しい声が今年の朝日の開幕を告げた。
選手たちはこれから来年春までトレーニングを積む。今シーズンは、2025年3月に実施予定のジャパンツアーに参加する選抜メンバーが決められる年でもあり、2025年ツアーに向けて新たな準備を始めるシーズンでもある。
この日白ユニフォームチームでプレーした、今年のジャパンツアーでキャプテンを務めた捕手カイ・コンキンさんは、日本での経験について「なにもかもがすごく楽しかった」と目を輝かせながら話した。「野球はもちろん、フードも、交流も、経験する全てがおもしろかった」とコンキンさん。野球は「たぶん、2、3試合は勝ったと思うけど…」と特に勝ち負けにはこだわっていなかったようで、日本での経験が財産になったと話した。
2015年の初ジャパンツアーに参加したイノウエさんも参加
今年のレガシーゲームには、2015年に実施された第1回ジャパンツアーに参加したアダム・イノウエさんも参加した。野球は大学まで続けたという。
ジャパンツアーは、「朝日軍」の意思を継ぐ日系人で構成された「新朝日」チームが日本で野球交流をすることを目的に第1回が実施され、当時は14人で始まった。
「今日はみんなと一緒にプレーできてすごく光栄に思います。自分たちがスタートした時は14人しかいなかったので、こうして多くの人がここにいてサポートしているのを見るのはうれしいです」とイノウエさん。当時は14歳、今でもチームメートとはつながっていると話す。
自身にとって朝日は「大切なもの」と言う。日系人強制移動を経験した家族もいると話し「家族に朝日軍でプレーした人はいなかったと思いますが、でも当時バンクーバーで日系カナダ人として生まれた彼らにとって、朝日は特別なものだったと思いますし、そのレガシーの一部にいま自分があることはとても光栄です」と語った。
日系コミュニティでスポーツを振興できれば
この日のレガシーゲームで始球式を務めたのはジャパンスポーツを主宰する馬目広三さんと、ブリティッシュコロンビア大学教育学部専任教員の長谷山康一さん。始球式前には「相手よりうまく投げたい」とやる気満々で臨み、大役を果たした。
今回始球式を務めることになった背景には、2人ともバンクーバーで日系コミュニティのスポーツ振興を図りたいという思いがあるという。
馬目さんと長谷山さんはサッカーでつながりがあるが、「色々なスポーツ団体とつながりを深めて、自分たちの活動がバンクーバー日系コミュニティのスポーツ振興につながるといいなと思います」と馬目さん。長谷山さんは、「こういうイベントがあると感じるのは、スポーツを通して日系コミュニティのつながりが強くなっていくことはとってもいいことだと思う」とこれからジャパンスポーツをサポートしながらスポーツを通してコミュニティを盛り上げたいと言う。2人は「今日はこういう機会をいただけて感謝しています」と語った。
朝日ベースボールアソシエーション
2016年に発足。当時の名称はカナディアン日系ユースベースボールクラブ。2015年に最初のジャパンツアーを実施し、これを機に2016年に創設した。現在は約200人が登録している。
朝日チーム・ジャパンツアー
2015年を第1回として、2年に一度、同アソシエーションでプレーする選手から選抜チームを結成し日本に野球遠征している。2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止に。2017、2019年には、横浜、静岡、滋賀、奈良などで、2023年は神戸を中心に関西地区で親善試合や野球交流を行っている。
朝日ベースボールアソシエーションウェブサイト: https://www.asahibaseball.com/
(記事 三島直美/写真 斉藤光一)
合わせて読みたい関連記事