カナダde着物
第51話
*自由な着方ができる9月のコーデ*
日増しに夜が長くなる今日この頃ですが、その様子から夜長月そして長月と呼ばれるようになったそうです。
これから11月頃まで、月と人が近くなり、物語の中に吸い込まれるような夜もあります。
空気が澄み、収穫の野菜やくだものが美味しく、段々に並んだお団子が転げ落ちるのも嬉しい秋のワンシーンです。
*今日の着物*Today’s Kimono
「自由な着方ができる9月のコーデ」
洋装では1年の中で2回、6月1日と10月1日に衣替えがあります。
しかしながら暦通りにはいかないのが世の常でして、ショッピングモールで人々を眺めていましたら、袖なし姿でまだまだ夏気分の方もいますし、既にダウンジャケットを着て冬支度がばっちりの方もいます。
和装ではどうでしょうか。この時期は温度の変化があること、体感温度の差、地域の気候の違いなどがありますので、こちらも暦のようにはいかないのは普通です。
何を着ようかと悩むところですが、季節のグレーゾーンということで、実は自由に着物や小物を選べるという利点があります。
上旬は夏もので、中旬は半分夏ものと秋ものでミックスコーデ、下旬は気候によっては袷を着始めてもいいですね。
季節の先取りさんは既に上旬から、色のトーンを落とし、素材も軽いものから重めのものへ移行されているかも知れません。
その中でも、濃い色目の夏大島(*1)がお勧めと聞きます。透け感があり涼しいけれど、泥大島と呼ばれるように渋い色で冬に向かっていく雰囲気が出ます。帯は9寸名古屋帯(*2)又は8寸名古屋帯(*3)などが合わせやすく、下旬になりましたら、そろそろ冬帯も意識するでしょうか。
単衣の中には、居敷当て(*4)、胴単衣(*5)の着物もありますので、応用はさらに広がりそうです。
実はこの1か月間は、毎週違うコーデでお出掛けできる「きものキャンペーン中!」です。着物愛好者にとっては、自由で多様で、楽しい秋単衣のひと時となりそうです。
*今日の和の学校*Today’s Gathering
「日系まつり2023*夏の終わりを感じながら賑わう人々」
毎年、夏休み最後の週末に開かれる日系まつりは、着物初心者さんや着物を体験されたい方にぴったりなイベントかと思います。今回も浴衣姿の方々が会場に華を添えました。
私は初日の前夜祭から、最終日のタレントリサーチまで存分に楽しませていただきました。
今回は和の学校@東漸寺で稽古をしている、殺陣チームHITOTOSEがショーに参加しまして、数か月前からこの日の為に練習を重ねてきた成果をお披露目できたかと思います。
チームメンバーは、俳優やフィルム関係者、ガーデナー、介護士、学生や留学生、様々な年齢の老若男女が、ひとつの作品に向けて力を出し切りました。
私は衣裳の準備や舞台脇でのお手伝いをしましたが、会場の拍手と盛り上がりが何よりも嬉しい瞬間でした。侍の衣裳には、着物はつきものです。北米でもっと着物文化が広がることを願います。
日系まつりに関わった皆さま、お疲れ様でした。来年も楽しみにしております!
(*1)夏大島
盛夏用に強い撚りをかけた糸を用いて織られた大島のこと。 透け感と通気性が生まれる。 鈍い光沢とシャリ感があり、涼感のあることがいちばんの特徴である。 透けるような涼やかさ、軽くシャリ感のある風合いが魅力。
泥染(どろぞめ)
主に、大島紬の褐色を染める方法を指す。鹿児島・沖縄地方の海浜に自生する車輪梅〈シャリンバイ〉という植物の幹被には、褐色色素とタンニンが含まれている。これを染色液に用いて、絹を染めると赤茶色に染まる。大島紬の褐黒色は、この煎汁で煮染した後、鉄分を多く含む泥(泥土液)に浸して得る。
(*2)9寸名古屋帯
9寸名古屋帯の仕立て前の帯の幅は、35㎝前後。芯が入っていて、端に折込がある。8寸帯より格が上である。クジラ尺で約9寸である事から9寸名古屋帯と呼ばれる。
(*3)8寸名古屋帯
8寸名古屋帯の仕立て前の帯の幅は、30㎝前後。芯がなく生地に張りがある。クジラ尺で約8寸である事から8寸名古屋帯と呼ばれる。
(*4)居敷当て<いしきあて>
着物や長襦袢の後ろ身頃、腰辺りに付ける白い当て布のこと。居敷当ては、単衣(ひとえ)や絽、浴衣などの夏物にだけ使用する。
(*5)胴単衣<どうひとえ>
着物の仕立て方の一つで、袷の着物の胴裏をつけないで仕立てることをいう。胴の部分だけが単衣仕立てになるので、汗をかきやすい人などにおすすめである。八掛だけをつけて、上半身には裏地をつけないので胴抜き仕立てともよぶ。
参照
日本の行事・暦:http://koyomigyouji.com/index.html
きもの大辞典:https://www.someoriren.jp/dictionary/index.html
「着物語り」
コナともこさんが着物の魅力をバンクーバーから発信する連載コラム。毎月四季折々の着物やカナダで楽しむ着こなしなどを紹介します。
2020年8月から連載開始。第1回からのコラムはこちらから。
コナともこ
アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
13年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。
年間を通じて季節の行事に加え、お寺での初参り、七五三祝い、十歳祝い、元服祝い、二十歳祝い、結婚式、生前葬、お葬式などの設えと装いのお手伝いもさせていただいております。
*詳しくはコナともこ までお問い合わせ下さい。tands410@gmail.com
東漸寺は非営利団体で、和の学校の収益は東漸寺の活動やお寺の維持の為に使われています。
カナダ人の夫+社会人と大学生の3人娘+老犬1匹(昨年末、虹の向こうへ)がおり、バンクーバー近郊在住。
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