カナダde着物
第52話
*フォーマルな留袖 華やかな訪問着*
秋の兆しが見え始めるころ、収穫祭やハロウィーンなどのイベントが続き、空からの強い光や楓の深紅色が鮮やかに彩られ、とても豊かな気持ちになります。
市中の山居(*1)と思わせる新渡戸稲造記念庭園は、紅葉と濃翠の苔が秋の澄んだ空気と合わさり、訪れる私たちをなつかしい世界へ誘ってくれます。
目に映る風景は二度と同じものはないでしょう。
日々変わる庭と私の「一期一会」のようです。
皆さまも訪れてみてはいかがでしょうか。
*今日の着物*Today’s Kimono
「喜びを表す華やかな留袖と訪問着」
私たちは普段着として洋服を着ていますが、人生の節目に着物を選びたくなります。着物はハレの日をお祝いするのに相応しい華やかさと厳粛さを持ち、その場を演出する効果もあるからでしょうか。
女性の正装は黒留袖(第一礼装)、色留袖(五つの紋は第一礼装)、訪問着(準礼装)があります。(*2)
男性は黒紋付袴姿(第一礼装)、色紋付袴姿(準礼装)となります。(*3)
色留袖は、家紋の数が増えますと、ぐっと格が上がります。
五つの紋が入りましたら、黒留袖と同格になり親族の結婚式や披露宴、勲章授章式や表彰式にふさわしい装いとなります。
私には可能性が低そうですが、日本人の方々が文化勲章やノーベル賞の授与式に和装姿で参加してくだされば、世界に誇れる着物の魅力をもっと伝えることができるかと思います。
*今日の和の学校*Today’s Gathering
「カナダで茶道を伝承し続け60年、茶道裏千家淡交会バンクーバー協会60周年記念行事と茶会」
素晴らしいお天気に恵まれた、初秋の佳日。UBC敷地内にあります新渡戸稲造記念庭園に、記念茶会へ参加する人々が集まりました。
庭園で散歩をしていた人々は、何かあるのだろうかと思いながらも「Beautiful Kimono!!」と声をかけていました。
訪れた日本庭園で沢山の着物姿の人を見られた観光客のみなさんは、とてもラッキーでしたね。
この日、庭園内にあります茶室「一望庵」では、茶道裏千家淡交会バンクーバー協会の記念茶会が行われていました。
カナダで茶道や日本文化の継承にご活躍されている先生方や協会メンバーが、茶道を通じての出会いや経験を思い出しながら、それぞれが想う一服をいただきました。
私は協会のメンバーになり20数年になります。カナダ人の夫と生後7か月の長女との生活がバンクーバーで始まった頃「カナダに住んでいても日本の文化を愉みたい」と当時キツラノエリアにありました、裏千家バンクーバー出張所の門をたたきました。
3人の娘の世話をし、途中からは仕事をしながら茶道のお稽古へ通うことは、なかなか至難でした。
それでも着物に着替え、家から離れ毎週お稽古に向かうことは、一個人に戻る時間であり、自分を育てる場所だったのだと思います。
そのようなお稽古場をご提供してくださり、片付けもせず子供の迎えの時間になると、そそくさと帰る私を受け入れてくださった先生方や先輩方に感謝しております。
記念行事の茶席中、今は亡き協会のメンバーの皆さんの顔が浮かび「ちょっと座って飲んでいきなさいな」という声が思い出されました。
その当時の私は慌ただしい日々を送っており、お抹茶を点てる時のスピードが早いので「せかされて、心臓がドキドキしちゃうわ~。」とよく言われたものです。
せっかちなのは変わっていませんが、少し考えて行動できるようになっているような…気がします。
今は娘たちから手が離れ、私の人生の第2ステージがスタートしております。
今度は私が子育て中の皆さんを応援する番となりました。
裏千家バンクーバー協会のこれからの発展を願い、次世代の皆さまが茶道や日本文化にもっと興味を持っていただけるよう、私も微力ながら手伝いができましたら幸いです。
今回写真を提供してくれたナタリーさん(Ms. Natalie Yozhik)は、ウクライナ出身で今年の春にご主人とカナダへ移民してきました。カナダに来る前は、中国と日本に住んでいて、写真家の活動以外にもダンスや映像関係のお仕事をされていました。
今回の記念行事とお茶会では、裏千家淡交会バンクーバー協会60周年のために、ボランティアで写真撮影を担当してくださいました。
日本文化に興味があり、お寺の和の学校では七五三の写真撮影も始めました。日本語も勉強中です。
https://www.instagram.com/cameragirl_natyo/
(*1)市中の山居<しちゅうのさんきょ>
室町時代、侘茶の流行にともない、市中にありながら山住まいを思わせるような車室が作られるようになり、当時それらは「市中の山居」と呼ばれた。
(*2)黒留袖、色留袖、訪問着
女性の正装であり、格の高い着物の種類である。
(*3)黒紋付袴、色紋付袴
男性の正装である。染抜きの五つ紋が入った羽織と袴は仙台平が最上級となる。
参照
日本の行事・暦:http://koyomigyouji.com/index.html
きもの大辞典:https://www.someoriren.jp/dictionary/index.html
晴れ着の丸昌:https://www.hareginomarusho.co.jp/contents/irotomesode/222/
男のきもの大全:https://kimono-taizen.com/kind3/
「着物語り」
コナともこさんが着物の魅力をバンクーバーから発信する連載コラム。毎月四季折々の着物やカナダで楽しむ着こなしなどを紹介します。
2020年8月から連載開始。第1回からのコラムはこちらから。
コナともこ
アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
13年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。
年間を通じて季節の行事に加え、お寺での初参り、七五三祝い、十歳祝い、元服祝い、二十歳祝い、結婚式、生前葬、お葬式などの設えと装いのお手伝いもさせていただいております。
*詳しくはコナともこ までお問い合わせ下さい。tands410@gmail.com
東漸寺は非営利団体で、和の学校の収益は東漸寺の活動やお寺の維持の為に使われています。
カナダ人の夫+社会人と大学生の3人娘+老犬1匹(昨年末、虹の向こうへ)がおり、バンクーバー近郊在住。
和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/
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