MLSバンクーバー・ホワイトキャップスFCに2023年シーズンから入団したGK高丘陽平選手。日本人ゴールキーパーとして初めて北米プロサッカーリーグMLSに挑戦した1年を振り返り、2024年シーズンに向けての話を聞いた。
インタビューは2023年11月にバンクーバー市内で行った。
初挑戦した海外サッカーリーグMLSについて
-2023年シーズンを振り返って、自身がMLSにバンクーバーに来た時と今とでは自分の中で成長したと感じることはありますか?
成長してるところ…そうですね…成長なのかどうか分からないですけど、ポジショニングは日本にいた時と変わりましたし、その後キーパーの守り方というか考え方っていうのをすごく変えてもらったというか。
ただ単にボールを守るだけじゃなくて、その目の前にあるスペースをどうやって守るかっていうのをずっと言われてたので、そのためにはどこに立てばいい、どこに立たないといけないだとか、ここにボールが来た時はどういうステップを踏まなきゃいけないとか、体の使い方はどうだとか。そういうのを本当にこの1年間ずっと考えながらやってきたので、そういったところが試合の中で考えなくても徐々に出せるようになって。そういった部分では継続してきたことがある程度反射的にできた場面もありますし、まだまだの部分もありますし、日本を出て分かったこともあったので、そういった意味では充実した1年だったかなと思います。
ー自分にとって良い時も悪い時もあったと最後の試合の後に話されていましたが、MLSはレギュラーシーズンの他に色々トーナメントが入ってきて、結構な試合数だと思うんですが、1年間通してほぼフル出場だったので、疲れた時期とか体調的に悪かったなという時期はあったと思うのですが?
体調が良くない時もありましたし、なかなか調子が上がらない時期もありましたけど、僕としてはベストを尽くしたというか。試合も多かったり、移動も多かったりする中で、トレーニングをしながらかつリカバリーをして、リカバリーだけじゃ自分自身の成長はないので、そこの絶妙なラインを構築させながらやってますし、日本にいる時よりも自分の体のケアというところはより意識しました。ゴールキーパーは1年間通して試合に出続けないといけないのでけがも絶対できなかったですし、そういった意味で一つの目標であった大きなけがをせず試合に関わり続ける試合に出続けるっていうのは自分としてのテーマでもあったので、そこは果たせて良かったなと思います。
ーMLSのサッカーの印象っていうのは、来る前とシーズンを経験して終えた今とでは変わりましたか?
チームによってある程度スタイルは違いますし、LA みたいにこうしっかりサッカーを知るチームもあれば、フィジカルを前面に押し出してってチームもあります。そこは日本でも一緒なんですけど、よりダイナミックというかカオスを作り出すというか、オーガナイズを崩すというか、なんていうんですか…そんなにオーガナイズがちゃんとしてない中で、それを個人だったり…説明が結構難しいんですけど、カオスを作り出していくって感じです。
-MLSで1年間戦って印象に残った選手とかいますか?
LA(FC)のブワナ(Dénis Bouanga)とかめちゃくちゃ点決められました。あとはシンシナティのアコスト(Luciano Acosta)とか、その辺はやっぱり能力高いなって純粋に感じました。
-いい意味でも悪い意味でも自分自身で印象に残った試合というのはありますか。
印象に残った試合…やっぱり直近なんで最後の最終戦(LAFCとのプレーオフ)だったりは頭に残ってますし、アウェイでのシアトル戦とか残ってます。あとは、アウェイでLA戦に勝った試合とかも残ってます。基本全部覚えてます。
-日本と違って北米のスポーツ全体にそうですけど、移動がすごく大変そうで。しかもバンクーバーは北西の端っこですし。今シーズンは9月に7試合連続アウェイがありましたが大変ではなかったですか?
そこの7連戦はチームにとっても僕にとっても山場になるだろうなと思ったし、そこをどう乗り切れるか?っていうのはテーマでもあったんですけど、何勝何分けだったかは忘れましたけど、その試合の前まではアウェイであまり勝ってなかった中で、あそこである程度勝ちを積み重ねられたので、もちろん負けた試合もありましたけど、それをここで踏ん張れたのでプレーオフに行けた一つの要因だったと思います。
そこでいかに負けを引き分けにしたり、引き分けを勝ちにするかっていうのはやっぱり大事なことだと思うので、そこで勝ち点をより積み重ねていれば4位以内に入れたと思いますし、そういうところで勝ちを落としてしまったっていうのがトップ4に入れなかった一つの要因かなと思います。
-移動はそんなに影響しなかったって感じですか?
移動はきつかったですよ。
-日本とは全然違う距離ですけど、どうやってアジャストしてたんですか?
もう基本寝られる時にできるだけ寝て。3列シートで基本寝転がれるので、そこはチャーターなんでできる良さでもあるんですけど。基本寝て、休める時に休む。食べ物とかもリカバリーするために意識的に取ったりとか。ほんと基本的なことをして、スペシャルなことを目指しているつもりはなかったですけど、小さな積み重ねが自分のコンディションだったり、パフォーマンスに影響してくるっていう風に思っていたので、小さいことをいかに積み重ねられるかっていうのを意識してしました。
-MLSの中で驚いたこととか初めて経験したことっていうのはありますか?
アウェイでもいいプレーしたら良かったよとか言ってくれるんでビックリしました。基本アウェイのサポーターがアウェイチームの選手に何か言うというのはないんですけど、いいプレーしてたら「いいプレーしてたよ」とか「ナイスプレー」とか言ってくれたので、そういうのはなんかいい意味で驚いたというか、ちゃんといいものはいいって言ってくれるんだなと。日本だとホームチームのサポーターが言ってくれるんですけど、アウェイチームのサポーターに試合後にロッカー引き上げる時になんか言われたのとかは良い意味で驚きでした。
海外生活の一歩目のスタートとしてはバンクーバーはパーフェクトな環境
-ホワイトキャップスでのチームの中での人間関係はうまくいってましたか?
ずっとそうですね。基本みんな良い選手で良い人間ですし、僕がキャンプに来た時から積極的に話しかけてくれましたし、ウェルカムみたいな感じをすごく感じました。そこは良い意味で驚きでした。それはシーズン終わった後でも変わらなかったですし、バンクーバーのクラブの人とはすごく良い関係を築けていけてるのかなと思います。
-最後の試合のあとのインタビューで監督が「陽平にとっても良いシーズンだっただろう」といっていたのですが、監督の印象はどうでしたか?
やりやすいとかやりやすいとかっていうような感じで、僕は監督を見てないというか。サッカーに対する情熱を持ってるかとか、どういう戦術や選手とどうやってコミュニケーション取るかとか、スタッフとのコミュニケーションをどうしてるのかとか、マネージメントの部分を結構見るので。
そういうところで、僕も日本人監督だけじゃなくて、イタリア人監督だったりブラジル監督だったり、いろんな監督と一緒にやりましたけど、新しいスタイルの監督だなという印象です。いろんなことで、イタリア人的な感じで、パッションがすごい出る監督なのでおもしろかったです。
かといってその情熱だけでやってるわけでもないですし、ちゃんとチームがどうやって上向きになるかとか、コミュニケーションの部分も非常に大切にする監督なので、この1年僕自身も勉強になったことたくさんありましたし、おもしろかったです。
-バンクーバーのファンのやることで驚いたことはありますか。
新鮮でしたね、やっぱり。日本で10年、9年ぐらいやってて初めてこうやって海外に出てきて、応援のスタイルとか、日本は、特にゴール裏で言えばちゃんとオーガナイズされて歌ったりしますけど、それとはやっぱり違います。
もしかしたら日本が特殊なのかもしれないし、ヨーロッパとか素朴に楽しんでましたし。(バンクーバーでは)ファンサポーターが最終節もなんか僕の写真?バナーみたいなのもありましたし。そういうところからもみんなから信頼をしてもらってというか、応援していただいてるなって感じましたし、そういったところから1年間通して自分がパフォーマンスで出してきたものを評価してくれているのかなというようなありがたさというか感謝があります。
-日本人に限らずファンから声かけられることありましたか?
ありますね。街中を歩いてて、帽子とサングラスとかしてたのになんか声かけられて、どうやって分かったのみたいなこともありました(笑)。あとは普通に歩いてたら車で後部座席の窓が開いて子どもから「ヨウヘイ」って言ってもらえたりとか、どうやって気づいた?みたいなこともありました(笑)。
見てるんだなって、すごい感じましたし、サポーターとかも気持ちよく声をかけてくれるんで、そういったところは良かったです。「がんばってね」とか、「応援してるよ」とか、シンプルに声かけてくれるんですごい気持ちはいいですね。
-ちょっとサッカーから離れて。この1年間過ごしたバンクーバーでの印象は?
町もきれいですし、海もあって山もあって。ウィスラーすごい大好きだったんですけど、ウィスラーも何回も行きました。色んな国籍の方もいたりとか、色んな多様な文化を感じれるというか、本当に海外生活の一歩目のスタートとしてはパーフェクトな環境なのかなという印象はありますね。
-基本サッカーが中心の生活だと思うんですけど、ウィスラー大好きだったっていう話でしたが、バンクーバーの生活はそれそれなり楽しんでたんですね。
基本はやっぱりシーズン中はもうサッカーに集中してるのであんまり遠出とかはしないですし、基本、家と練習場の往復だけですけど、シーズン中でも何連休かあった時はできるだけ外出たりとかするようにしてます。せっかくこうやって海外でやらせてもらってるので、なるべくいろんなものを経験したいなと思って来てたんですけど、やっぱりシーズン中はなかなかこう自分の気が張ってるんで、気を抜きすぎてもダメなんで、バランスをうまく取りながらはやってました。もうちょっと来年は色んなところに行ってもいいかなっていう気はしてますね。
-バンクーバーの日系コミュニティと触れ合う機会はありました?
こちらの日系のサッカーチームにちょっと遊びに行ったりとかしましたし、その子どもたちが応援に来てくれたりもしましたし、楽しかったです。
-英語はどうですか?来た時からバッチリだったので聞こうかどうしようか思ったんですけど。1年間生活してみて英語は慣れましたか?
英語はやっぱりまだ今でも難しいです。昨日とかも(他の)選手とご飯に行ったりしましたけど、みんなでこうばぁって話してる中に割って入るのとかはやっぱり難しいし、もうネイティブ同士が話してる時だと全然普通に分からない時もあるので、そういった部分もまだまだ全然改善は必要だと思いますけど、試合後のインタビューとか記者会見とかは普通はそんなにほぼストレスなくというか。もちろんたまにわかんないことありますけど、聞けば全然教えてくれるんで、インタビューとかはストレスなくできますし。あとはもっと自分の会話力を上げてもっと言いたいこと、もっと喋りたいこととかもいっぱいありますし、深い内容も話していかなきゃいけないなと思ってるんで、そこの語彙力だとかボキャブラリーとかはやっぱりもっともっと改善しなきゃなと思います。
-ゴールキーパーなので色々前にいる選手とかにずっと声かけたりとかしていましたけど、サッカーっていう共通語があるので難しくはないと思うのですが、試合中にもっと細かいことが言えればと思っていたんですか?
試合中は短い言葉で伝えるしかないので。ハーフタイムとか試合前、試合終わった後に会話するんですけど、それをもうちょっとわかりやすく伝えたいなと思います。わからせなきゃいけない部分もあるんで、そういったところでもっともっと伝え方の部分だったり、英語で聞くところはまだまだ鍛えなきゃいけないなと思います。
2024年シーズンに向けて
-来季(2024年)ですが、今シーズン1年戦った上で、来季は自分なりにこういう風なシーズンにしたいとか、こういうことにチャレンジしたいというかそういうのはありますか?
そうですね。今年1年MLSでやらせてもらって、リーグの特徴というか色だったり、アウェイチームのスタジアムの雰囲気だとか、いろんなチームのスタイルとか個人の選手の特徴だとかもある程度つかめたので、そういった部分で来年はやっぱり今年以上のパフォーマンスが求められると思いますし、僕自身もそこは出さなきゃいけないと思うんで、本当に今年以上のパフォーマンスを来年はしたいなと思います。
-今シーズン対戦できなくて、来シーズンは対戦してみたい選手とかいますか?
特にないです。
-私たちは吉田(麻也)選手がLAギャラクシーに移籍したので直接対決を見てみたいと思いますし、楽しみにしているんです。
同じカンファレンスですし、来シーズン試合できると思って、そこは一つのお楽しみではあります。
-最後にファンに来年に向けて一言お願いします。
今年もたくさんの応援していただいてましたし、本当に最終節はプレーオフの最後の試合は3万人以上入ってたくさんのサポーターが来てくれました。これを来シーズンのベースにしたいです。僕らも勝ち続けることでサポーターの方々が来てくれると思うんですけど、そういった意味でも勝ち続けてホワイトキャップス強いよとみんなに思ってもらいたいですし、応援してもらえる存在であり続けられるように僕らかがんばらないといけないなと思います。
-ありがとうございました。
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バンクーバー・ホワイトキャップスFCのレギュラーシーズンは3月2日BCプレースで開幕する。その前には、CONCACAF Champions Cupがあり、2月7日にメキシコのUANL Tigersと対戦する。
昨季はレギュラーシーズンでほぼフル出場した高丘選手。今年はそれ以上の活躍に期待がかかる。
バンクーバー・ホワイトキャップスFC:https://www.whitecapsfc.com/
(取材 三島直美/写真 斉藤光一)
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