「先祖への敬意を現在につなぐ『チーナ』に込めた想い」Cheena代表ショーン・リトンさんインタビュー(後編)

Cheena代表ショーン・リトンさん。Cheena事務所で。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
Cheena代表ショーン・リトンさん。Cheena事務所で。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 両親が立ち上げたビジネスを引き継ぎ、「クオリティに妥協せず、多くの人に喜んでもらえる商品を変わらず届けたい」と話すショーン・リトンさん。ビジネスとして商品開発への意欲を語る一方、「チーナ」がつなげている、先祖、祖母、そして両親への敬意が言葉の端々にあふれていた。

「極上のカナダグルメを楽しんでもらいたい」Cheena代表ショーン・リトンさんインタビュー(前編)

先祖はスコットランドからやってきた冒険家、祖母は著名なアーティスト

 会社名「チーナ(Cheena)」も、そのロゴも、食品を扱う小売店としてはかなり個性的だ。名前やロゴからはすぐにビジネスを想像できない。しかし、そこには先祖への敬意が込められている。

 「チーナ」は1978年にウェイン&かおり・リトンさんが創業した。ショーンさんの両親だ。

 先祖は冒険家として知られたAdam Grant Horneさん。1851年にスコットランドから移住しハドソン・ベイ・カンパニー(HBC)と契約、バンクーバー島ナナイモでの経営を任されていたという。その当時に地元の先住民族と信頼関係を築き、彼らの案内でバンクーバー島を探検したとされている。

 Adam Grant Horneさんのひ孫でショーンさんの祖母Georgina Abrams-Lyttonさんは著名なアーティストで、代表作には先住民族を描いた作品が多い。現在オタワのNational Gallery of Canada(カナダ国立美術館)にも所蔵されている。

 ショーンさんは「祖母はハイダ族ととても親しかったそうです」と話す。そしてその親密な関係を通してハイダ族をテーマにした作品をいくつも描いたと説明した。「その代表作の一つがカヌー(を描いた)作品です」

 1800年代半ばにカナダにやってきて先住民族との信頼関係を大切にしてバンクーバー島を探検した先祖の精神と、ハイダ族と良好な関係を築き、彼らの生活を絵画として残した祖母の思い。ショーンさんは「リトン家の歴史と現在を何らかの形で結びたいと思っていました」と話す。

ハイダ語で「最高のサーモン」を意味する「Cheena」

 ショーンさんによると、チーナのビジネスの始まりはウェインさんの経験とアイデアからだったという。日本からビジネスで来加した水産関係者をブリティッシュ・コロンビア州北部に案内した時、漁をしていた漁師が昆布を捨てていることに気づいた水産関係者が「これは日本では高級食材だよ」と言ったという。

 漁師が捨てていたのは数の子昆布。その言葉からヒントを得て、ウェインさんが数の子昆布を販売することを思いついた。しかもただ販売するだけではなく、きれいに切って化粧箱に入れた。日本へのお土産にサーモンも同様に用意した。当時スライスしたサーモンはなかったと話す。ここからお土産用のスライスしたスモークサーモン販売を思いついた。化粧箱に入れ高級感を出す。「地元産の原材料にこだわりクオリティの高い商品に付加価値を付けて日本向けに販売する」。それにふさわしい会社名は何かと考えたという。

 クオリティの高いカナディアンフードを通して、カナダと日本の架け橋となれる会社にふさわしい名前…。

 その時に先住民族との関係を大事にしているウェインさんの母Georginaさんに思い至った。「そこで祖母を通してハイダ族の首長に話して、自分たちの思いを伝えて父に渡されたのが『チーナ』でした」

 先住民族の首長から名前を与えられるのは稀なことだという。それから「いまでは著名となったアーティストのDonald Yeomanさんと両親とでチーナのロゴを完成させました」

 「Cheena」はハイダ語で「輝くサーモン」や「最高のサーモン」という意味だという。「この名前とロゴが示すものは、最高のカナディアンフード、カナダ産商品だと思っています」とショーンさん。Georginaさんが描いたハイダ族のカヌーの絵とAdam Grant Horneさんファミリーの写真は、チーナの名前とロゴと一緒にカナダ建国150周年を記念する限定ギフトボックスのデザインとなった。

 先祖と祖母がカナダで果たしてきた努力への敬意と両親への思いが一つになった。

日本の顧客に喜んでもらえる商品を

 カナダと日本をカナディアンフードでつなげたいという思いは今も変わらない。「台湾や韓国、中国にも輸出していますけど、最大のマーケットは日本です」と語る。

 常に日本の顧客に喜んでもらえる商品をという思いで商品開発している。「例えば、スモークサーモンジャーキーはビールだけでなく日本酒にも合う『おつまみ』として人気があります」と説明する。

 またメープルシロップは、本来は色が濃いほど濃厚な味わいが楽しめるが日本では淡い色のメープルシロップが好まれるという。そこで、日本向けに「メープルヌーボー(Maple Nouveau)」を用意した。「メープルシロップの収穫シーズンの最初の日に1回だけ採れる貴重なメープルシロップです」。全てのメープルヌーボーには限定番号が付けられ「特別な商品となっています」。

 アジア市場への進出が続くが「日本は私たちにとって最も大切で特別な市場です」とショーンさん。

 日本へのお土産商品から始まった「チーナ」。世代が交代し、事業が拡大しても、1978年にバンクーバーダウンタウン1号店を始めた創業時から、引き継いだフィロソフィーは変わらない。「クオリティに妥協せず、多くの人に喜んでもらえる商品を届けたい」。両親の思いを受け継いで、ショーン・リトンさんの挑戦はこれからも続いていく。

Cheenaカナダ社
1978年ウェイン&かおり・リトンさんがブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市に設立。スモークサーモン商品、メープルシロップ商品を主力として販売。日本や韓国などアジアを中心に展開している。
カナダから日本へ届ける専用サイト(日本語):https://cheenashop.com/
日本国内専用サイト(日本語):https://cheena.co.jp/
北米顧客用シーフード商品サイト(英語):https://cheena.com/
北米顧客用メープル商品サイト(英語):https://mapleterroir.com/

(記事 三島直美/動画 斉藤光一)

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