バンクーバーファッションウィーク(Vancouver Fashion Week: VFW)2024年秋冬コレクションが4月23日から28日の6日間、バンクーバー市David Lam Hall Chinese Cultural Centre of Greater Vancouverで開催された。
北米で2番目の規模となるファッションショー、世界各国から選ばれたブランドが来場者たちを魅了
バンクーバーファッションウィークは2001年に初めて開催された、ニューヨークに次ぐ北米で2番目の規模となる国際的ファッションイベント。今回はカナダ国内をはじめ、アメリカ、メキシコ、ウクライナ、イギリス、インド、日本、韓国など各国から注目のデザイナー50人以上が発表。かつてない盛り上がりを見せた。
多文化・多国籍都市バンクーバーで開催するVFWのコンセプトは「多様性」
ファッションウィークとは、約1週間の開催中に複数のブランドが各国の都市に集まり、最新のコレクションを発表する期間。なかでもミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドンは4大コレクションと呼ばれ、世界で最も注目される。VFWは若いデザイナーたちにとって、その4大コレクションへの登竜門となっている。
VFWのコンセプトは多文化・多国籍都市バンクーバーらしい「多様性」だ。始まった当初から、さまざまな人種、性別、サイズのモデルと共にする機会がデザイナーに提供されている。
日本からはSOLIT!、meihana、macu macu、COLORFUL BOUTIQUE MORE、Pipiro☆Hiro、le graine、Kubo san made、topao、CHIDORI、MOEMUSISAN、Retoru、nolum、FREijAの13ブランドが参加した。
その中から今回は注目のブランド「SOLIT!」と「FREijA」のデザイナーやモデルに話を聞いた。
前編では「SOLIT!」を紹介。
オールインクルーシブな社会の実現を目指すブランド「SOLIT!」
ファッションという手段で、だれも何も取り残さないオールインクルーシブな社会の実現を目指すブランド「SOLIT!」ショーのコンセプトは「IT’S SOLIT! – Duh!」
「特別なものでなく、これは当たり前のことなのだ。多様な存在と、自分らしく表現することが『素敵だね』で終わらず、むしろそこで立ち止まらずに早くこっちにおいでよ、と言いたい」というメッセージが込められている。
ショーの直後に「SOLIT!」を起業した田中美咲さん、デザイナー兼ディレクター三原いつおさん、モデルひわさゆうきさん、芳坂映由花さんに話を聞いた。
-ショーが終わられて今どのようなお気持ちですか?
ひわさゆうきさん:他のモデルの方々からかっこいいねと声をかけられたり、会場のお客様の歓声や視線はもちろん、モデルも含めて皆さんが温かかったなと思います。
芳坂映由花さん:日本のモデルは約9カ月間スタッフの皆さんと準備してきました。VFWの方から現地のモデルが起用されることを聞いていたので、ずっとどんな人が来てくれるのだろうと、恋い焦がれているみたいに楽しみにしていました。多様なモデルがランウェイを歩くということに感動しました。
-日本での「SOLIT!」のプロダクトへの反応と、バンクーバーでの反応の違いはありましたか?
三原いつおさん:日本だと僕らの服は、色々な体型に合っているとか機能面を評価されることが多いのですが、バンクーバーはファッションとして評価をしてもらったことが一番大きく違ったと思います。
田中美咲さん:今まで購入してくださった方も評価する方も、福祉用具としておしゃれだという判断をされます。バンクーバーでは私たちの背景をほぼ知らないまま見ている人が多いからこそ、一瞬で見たものがどうなのかっていうところを見られているように思います。
-準備期間から本番を含めて一番大変だったことは何ですか?
三原いつおさん:ファッションショーへのチャレンジが初めてだったので、そもそも何が起きるかを予見できていない状態でした。バンクーバーに来るまでの気持ちの落ち着かなさが大変でした。いい意味で期待と違ったのが、現地のモデルたちがとても意欲的に僕らのやろうとすることを感知して動いてくれたことですね。
田中美咲さん:色んなモデルを起用したり、初海外の人や未成年の子もいたので、渡航すること自体がまずとても大変でした。アウトプットは10分しかありませんが、その背景で色んなことが起きた9カ月間があって、ついにこれが終わったのだなと。凝縮された10分間楽しかったです。
芳坂映由花さん:ランウェイで「日常を表現する」というところです。洋服を奇麗に見せて帰ってくるランウェイは経験してきました。今回の「日常」をコレクションでどう見せるのかということに個人的に悩んで色々考えました。さらにモデル同士で話し合いもしました。
-折れない意志を保つ秘けつは?
田中美咲さん:SOLIT!が3社目の起業なのですが、1社目の時は責任感、2社目は怒りや悔しさによるエネルギーで行っていました。ただ今回は、もちろん引き続き責任感や倫理観、怒りや悲しさなどの感情もあるのですが、何よりも「好きだから」に尽きると思います。究極、数字(お金)につながらなかったとしても続けてしまうものだと感じています。
-ショーを終えて何を社会に伝えることができたと思いますか?
田中美咲さん:来場された方や配信を見た方からのフィードバックでしか確かめることができないと思っています。ただタグ付けしていただいた投稿を見る限り、私たちのコンセプトが伝わり、いい意味で胸が痛かった、感動した、涙が出たと言っていただきました。それが答えなのだと思います。
後編では「FREijA」デザイナー梶田由美さんへのインタビューを紹介する。
(取材・写真 古川紋/動画 斉藤光一)
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