在カナダ日系ツアーオペレーター協会がガイド育成プログラムを開講

ツアーガイド実践練習の日。小グループに分かれて一人ひとり細やかな指導を受けた。2024年5月23日、バンクーバー中央図書館。撮影 大島多紀子/日加トゥデイ
ツアーガイド実践練習の日。小グループに分かれて一人ひとり細やかな指導を受けた。2024年5月23日、バンクーバー中央図書館。撮影 大島多紀子/日加トゥデイ

 日系旅行会社の団体である在カナダ日系ツアーオペレーター協会(Japanese Tour Operators Association of Canada:JTOA)がガイド育成プログラムを開講した。

 このプログラムは週1回の講習で、10週間にわたって行われる。座学だけでなく、大型バスを使っての実地講習や、空港やホテル、主要な観光箇所といった現場での講習も含む実践的な内容となっている。また、ツアーガイドとしての仕事だけでなく、オフィスでの手配業務などについての講習もあり、旅行会社の業務について広く学ぶことができる。

 全10回の講習で、空港での観光客のアシストなど比較的容易な業務に付けるレベルまで育成することを目標としている。

 今回は4月4日から6月6日まで実施。JTOAの理事の一人、ARA Professional Travel&Support Inc.代表、荒木大輔さんに5月23日、講習が行われたバンクーバー中央図書館で話を聞いた。

ーこういった講座はあまりないのでは?

 諸先輩方によると、昔はこういったガイドを養成しようという取り組みはあったようなんですが、日系の旅行会社が主体となって、ここまで大きいプログラムの開催は初めてらしいです。

ー開講された経緯やきっかけは?

 最大のきっかけはやはり(新型)コロナ(ウイルス感染拡大)です。各会社に所属している日本語の現地ガイドの方々がコロナを機に転職されてしまったり、この機会にリタイヤされてしまった方などもいらっしゃいました。

 それ以前から、ガイドさんも含めて旅行業界に携わる人たちの年齢の空洞化が問題視されていました。50~60代、40代後半くらいまでの層はどこの会社さんでもいらっしゃるんですが、40代前半くらいから下の(若い)世代が少なくなっています。この世代のガイド、また事務スタッフも含めて養成していかないと、今後、上の世代が抜けて行ったあとを継いでいく人がいなくなってしまうという危機感が、以前より業界全体にありました。

 例えば、ワーキングホリデーで1年滞在している人の場合、ようやく一人前になったところでビザが終わってしまう。それから就労ビザに切り替えたいと思っても、それをサポートできる会社ばかりではないわけです。旅行業は景気の動きに左右されやすく、どの業界も波はあると思いますが、特に旅行業界は状況によって変わる度合いが大きいと思います。先のことが予測しづらい中で、就労ビザをサポートしましょうということは簡単なことではないんです。

ーこの育成プログラムは若い世代をターゲットとしているんですか?

 ワーキングホリデーで来ているような若い世代の方はもちろん、こちらにすでに永住されている方にも参加していただきたいですね。

 例えば、40代から50代で育児もひと段落されている方などで、パートタイムでガイド業に就くことに関心を持っている方にも、参加していただきたいと考えています。

 ターゲットは若い世代に限らず、また男性、女性限らず、広く考えています。まずは興味を持っていただくことが大前提ですね。

ー今回は何人の方が受講されていますか?

 34人のお申込みをいただきました。年齢層も20代から60代までと幅広いです。

ー今回のプログラムを受講された方は即戦力をつけたことになりますか?

 講座修了後、比較的容易な業務に付けるレベルの方を合格者とさせていただきます。

 JTOAでは13社の日系旅行会社が会員として登録しており、2社のガイドサービス会社が準会員となっています。この13社の会社が必要に応じて、ガイドサービス会社に要請してガイドを派遣してもらっています。

 今回の育成プログラムでの合格者は、このガイドサービス会社のいずれかに登録していただき、旅行会社からの要請に応じて、仕事に従事していただく予定です。

ー旅行業界の現状は?

 コロナも収まってきており、海外旅行をされたいという方が増えてきているとは思います。ただ円安や物価高もあり、旅行代金が高くなっています。そうした中、ツアーを組むのは難しくなっています。

 少し前のような格安の旅行はもう組むことができなくなっているので、いま、カナダに来れる方は高額な旅行代金を払える人、つまり金銭的にある程度余裕のある方になっていると感じます。そういった意味で、日本からの観光客は二極化している感じがしますね。

ー今後の旅行業界の展望をお聞かせください。

 時代の流れやオンラインの発達と共に、旅行者のニーズも変わり、改めて旅行会社の存在価値を試されている時代になってきました。

 オンラインでは伝わらない、現地在住ガイドがご案内する価値、旅行会社の存在価値を感じていただけるように、努力は怠ってはいけないと思っています。

***

 ガイド育成プログラムでは、現役でツアーガイドとして活躍する講師が丁寧かつ熱心な指導をするほか、豊富な体験談も聞くことができ、受講生にとっては学べる点が多々あったようだ。

 プログラムの中間時点で、希望者には受講後の仕事や適性など、個別での相談も受けつけるといったフォローアップも手厚い。

 この育成プログラムは今後も継続していく予定で、次回は今年の秋ごろの開催を考えているとのことだった。

在カナダ日系ツアーオペレーター協会(Japanese Tour Operators Association of Canada)

ウェブサイト:http://jtoa.ca/
問い合わせ:info@jtoa.ca

(取材 大島多紀子)

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