第14回 おひとりさまが終活をしないと、どうなる?! Pさんのケース その1~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

​​7月になり、バンクーバーでは、やっとバンクーバーらしいカラッと気持ちの良い気候になってきました。この時期は、青空が広がり、爽やかな風が吹く日が多く、外で過ごすのがとても気持ち良いですね。短いカナダの夏を思い思いに楽しみましょう。私はビーチでのんびり過ごしたいところですが、息子たちの野球で、ほぼ野球場で過ごしています。

いきなりですが以前、私が会った人の中に、こんなことをおっしゃった方がいらっしゃいました。「自分は配偶者もいないし、子供もいないおひとりさまだから、終活はいらないと思っている。だって自分が死んだ後のことは自分がやることじゃないから、わざわざ高いお金を払ってまで遺言も作りたくない。正直に言って、本当に興味も関心もない!今を生きることで精一杯!」と言われた方がいらっしゃいました。誰もが自分の人生をどう生きるかは自由です。ただ終活の観点から見れば非常に残念だと言わざるを得ません。自分がいなくなった後に残された人たちがどうなっても構わないと言っているようなものだからです。

私は終活は自分や周りの人への「思いやり」だと思っています。自分自身も悔いなく、周りの人への感謝も込めて行うのが終活なのですが、頑なに「自分は必要ない!やらない!」という方がいらっしゃることも事実です。

では、実際にこのような方が終活をされないとどんなことが起こりうるのか、私の経験も織り交ぜて具体例を挙げて、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

Pさんのケース

Pさんは50代のカナダ在住の日本人男性。翻訳会社の社長(社員はPさんのみ)で独身・子なし。20代でカナダに移民し、両親はなく日本に妹が1人いる。趣味は節約とジョギング。Pさん名義の不動産あり。(自作の架空人物です。実在の人物や会社とは関係・関連ありません)

もしもPさんが突然亡くなったら、どうなる?

Pさんの仕事仲間で友人でもあるQさんが、何度メールしても、携帯に電話してもPさんが出ません。不審に思ったQさんは、数日後にPさんの住むマンションの管理人と一緒にPさんの部屋へ行くと、部屋の中でPさんが亡くなっていました。QさんはPさんの日本の家族に連絡しなければと思いますが、連絡先を知りません。共通の友人に尋ねても誰も知らないため、Qさんは途方に暮れてしまいました。

終活ポイントアドバイス
①Pさんが日本とカナダにいる家族や友人の名前や連絡先をあらかじめ伝えておけば良かった
②おひとりさま同士の安否確認ネットワークのようなものを作っておけば良かった

個々ではお互いのメールアドレスや携帯電話番号を知っていても、その家族や周りの人の連絡先を知らせ合っていないことが多々あります。近所の人が異臭に気づき、警察へ連絡したときにはすでにかなり日数が経っており、正確な死亡日を特定できないこともあります。Pさんのケースでは少なくともQさんがPさんの住所を知っていて、そこまで遅くならずにPさんの状況を確認できたのは良かったですね。

また、以前は会社に出勤してこないので会社の人が気が付くというケースが多かったのですが、最近では自宅で仕事をしているスタイルの人が増えているので、これに自分が当てはまると思われた方はぜひすぐに対策を講じていただきたいと思います。

家族や友達の連絡先を交換しておいても、安否確認ネットワークを作っても、もしかしたら全く使わないかもしれません。使わないならそれはそれで、「お金のかからない保険」と思うのはいかがでしょうか?使うことがなければそれは幸いなことですし、万が一のときには「あって良かった!」ときっと思うことでしょう。

結局、Pさんの日本の家族の連絡先がわからず、思い余ったQさんは日本大使館に相談しました。大使館を通じてPさんの妹さんに連絡を取ってもらいましたが、QさんがPさんの妹さんと話せたのは、Pさんの死亡が確認されてから3日後のことでした。その間、カナダの警察、葬儀社、マンションの管理会社などとの対応に追われたのはQさんでした。

まさかこんな形でカナダと日本両方の政府機関にお世話になり、迷惑をかけることになるなんて、きっと亡くなったPさん自身は思いもよらなかったはずです。また、「早く知らせてあげたい」、「もっと早く知りたかった」といったQさんとご遺族の気持ちの葛藤もあったはずです。

続く

*このコラムは終活に関する一般的な知識や情報提供を目的とするものです。内容の正確さには努めておりますが、必要に応じてご自身で確認、または専門家へご相談ください。このコラムを元にして起きた不利益は免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

海外終活アドバイザー・弁護士アシスタント
「終活をせずに亡くなった!認知症になって困った!途方に暮れた!!」を、「終活しておいて良かった!」「終活してくれていて、ありがとう!」に変えたい!そんな思いから2020年に終活アドバイザー資格を取得。海外在住の日本人向けの「海外終活」についての講座や説明会、ご相談はブログやFacebookなどのSNSをご覧ください。家族はカナダ人の夫+息子2人+猫1匹、バンクーバー在住。

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