全カナダ日系人協会・会長として1988年9月22日、ブライアン・マルルーニ首相と共に日系カナダ人の戦時補償の合意書に署名したことで知られるアート・ミキさんが、今年4月に著書を出版した。「Gaman – Perseverance: Japanese Canadians’ Journey to Justice」(Taronbooks 2023)
「Gaman」とは「我慢」を指す。ミキさんは、「リドレス運動中の状況を表していたと思ったから」と語った。戦後補償のリドレス運動は日系移民100年祭を機に盛り上がりを見せ、紆余曲折しながらようやく1988年に身を結んだ。その中心にいたのがミキさん。
当初はリドレス運動について書く予定だったという。「いつか本にしたいと思って、リドレス中にメモを多く残していたんです」。30年前の話だと笑う。それから約3年前に「そろそろやらなくては」と執筆のためにメモを整理し始めた。その時にリドレス運動にも大きく関わったが、他にも自分が関わった先住民族の問題や市民権委員としての仕事なども入れて、「回想録(メモワール)にすることに決めました」。
構想30年、執筆2年、「資料をたくさん集めたりして、すごく大変だった」と笑った。そうして完成した本の表紙には3本の木がデザインされている。ミキさんの孫息子がデザインしたという。「三木」を表している。
昨年は戦時補法合意から35周年だった。カナダ政府の日系カナダ人強制移動政策も、リドレス運動も、いまのカナダの在り方に大きな影響を与えている。リドレスとは何だったのか、戦後補償がカナダに与えた影響とは。そのヒントが見つかるかもしれない。
日本語での翻訳予定を聞くと「日本で興味を持ってくれている団体はあるけど」との回答。日本は来年戦後80周年。そう遠くない昔、日本からカナダに渡った人たちのカナダでの「Gaman」と努力を日本にも紹介できるといいかもしれない。
(記事 三島直美)