カナダ政府のマイノリティ政策として見る日系人の強制移動

 移民がつくった国、カナダ。世界的な流れとして反移民感情が強まる中、カナダはそれでも積極的な移民政策を取り、「多文化主義」を国の根幹におく。しかしカナダがマイノリティに常に寛容だったわけでない。

 愛知大学法学部教授でカナダ政治を専門とする岡田健太郎さんは、カナダ政府がマイノリティに対して行ってきた政策を調査し、それが現在にどのような影響を及ぼしているのか調べていると話す。

カナダ政府による日系人強制移動

 岡田さんによると、先住民に対する同化政策(レジデンシャル・スクール:寄宿舎学校)や日系人の強制移動といった問題は、カナダ政府がマイノリティをどのように見ていたか、という観点から共通の問題として考えることができるという。

 日系人の強制移動は彼らを「敵性外国人」とみなし、同化できない「敵」として扱うものだった。先住民の寄宿舎学校のように、隔離してキリスト教徒化しようとする同化政策とはその意味で異なる。

 日系人の強制移動政策は、今日に至るまでカナダにとってネガティブな歴史であり続けているが、だからこそ戦後カナダの多文化主義政策にも影響を与えた。1982年のカナダ人権憲章(人権と自由の憲章)の策定は、日系人の隔離政策への反省の意味もあると話す。

 カナダ政府が行ったマイノリティの人権を侵害するそれぞれの政策は、いずれも「人権を踏みにじった」という意味では同じ。「正義に反することをすると、のちのちそのしっぺ返しが必ずやって来るという、ごく当たり前のことが、いまのカナダで起こっているということだと思う」と語った。

岡田健太郎(おかだ・けんたろう)
愛知大学法学部教授
元バンクーバー総領事館専門調査員

*次回より寄稿記事として掲載します。

(取材 三島直美)

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