朝日レガシーゲーム2024、今年は10周年の特別な試合に

 例年より少し夏の暑さが残った9月2日、今年も朝日レガシーゲームがナナイモパーク(バンクーバー市)で開催された。戦前にバンクーバーで人気を博した日系人野球チーム「朝日軍」に敬意を表して毎年9月第1月曜日に開催される現代版朝日軍の親善試合。今年は2015年の第1回レガシーゲームから10年、さらに、戦前の「朝日軍」創設から110年の記念の年となることから特別式典が開催された。

上西ケイさんや戦前活躍した朝日軍の子孫が式典に参加

開会式に招待された上西ケイさん(中央)と朝日軍選手の子孫、丸山総領事、シム市長ら。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
開会式に招待された上西ケイさん(中央)と朝日軍選手の子孫、丸山総領事、シム市長ら。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 「朝日軍」の選手で現在102歳となる上西ケイさんが式典に参加したほか、朝日軍の選手の子孫、ジャスティン・オールトさん、ロブ・ナガイさん、リーナ・カダさん、エド・カミニシさん、ジョイス・シモクラさん、マンディ・シンタニさん、ロリーン・オイカワさん、デレック・ウォーターズさんやその家族も参加した。それぞれ祖父や大叔父が朝日軍の選手としてプレーしていた家族たち。

 現在唯一の元選手上西ケイさんに代わって長男エド・カミニシさんがあいさつ。「1914年に始まった朝日野球クラブの歴代監督、選手たち全員が現在の『朝日軍』に対する敬意を喜んでいると思います」。戦前の朝日軍がモットーとしていた「フェアプレー、スポーツマンシップ」を野球だけでなく普段の生活でも現在の朝日選手が実践してくれていることに感謝し、その輪が広がっていくことを期待すると新朝日チームと関係者に感謝した。

上西ケイさん(中央)とあいさつをするエド・カミニシさん。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
上西ケイさん(中央)とあいさつをするエド・カミニシさん。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

2025年ジャパンツアー、いよいよ本格始動

 この日の試合は、ブルーのユニフォームを着た2025年3月に日本遠征する2025ジャパンツアーチームと、黒のユニフォームを着たこれまでにジャパンツアーに参加した選手で作られた同窓チームが対戦。2025ジャパンツアーチームが「先輩」に胸を借りる親善試合は、ツアーチームの本格始動を意味する。

2025ジャパンツアーのキャプテン、コウタ・ヒライ選手。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
2025ジャパンツアーのキャプテン、コウタ・ヒライ選手。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 ジャパンツアーは2015年から2年に1度、選手が日本を訪問して、野球を通じた交流を図っている。チームは朝日に登録しているメンバーから選抜された主に15歳から17歳の選手で構成されている。

 2025年ジャパンツアーチームのキャプテン、コウタ・ヒライ選手は、「日本ツアーでは色々な経験を楽しみたいと思っています。それと日本のチームがどのような野球をしているのかを見て新しいことを学んできたいです」と遠征に期待する。2025年チームは楽しく野球をするチームと言う。全てのことに敬意を払うという朝日の精神を大切にして、野球を楽しみたいと語った。

 2025ジャパンツアーチームを率いる小川学監督は「これまで練習してきてしっかりとプレーできる選手たちが揃いました」と期待する。朝日は秋から春にかけて活動する。それは各選手が春から夏までの野球シーズンは各所属チームでプレーしているからで、中にはその所属チームで世界大会を経験した選手も今回含まれているという。そうした選手たちが集まって構成されているのが朝日。「各チームで活躍している選手たちが集まって一緒に朝日として日本に向かうことにとても意義があると思っています」と小川監督。朝日では低学年の頃から一緒にプレーしている選手たちでチームワークもいいと太鼓判を押す。日本では野球の試合と一緒に文化交流も楽しんでもらいと語った。

丸山総領事、シム市長も参加

 10周年を記念した式典は、Go太鼓の和太鼓から始まり、櫻会の神輿、そして始球式が行われた。

丸山総領事の始球式。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
丸山総領事の始球式。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 始球式の大役を務めたのは在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。「ボールが届くかどうか心配だったんですけど」と終わった後に笑っていたが、ど真ん中のストライク投球でレガシーゲームの幕を開けた。この日、上西ケイさんの元気な姿を見て「とてもうれしく思っています」と語った丸山総領事。昨年8月には総領事自身が在外公館長表彰を授与していることもあり、102歳になっても元気できょうの式典に出席する姿に目を細めた。「バンクーバーの日系社会に存在感を示してくださっていますし、(野球を通じて)若い世代にフェアプレーの精神を伝えられている姿はすばらしいことだと思います」といつまでも元気でいてほしいと語り、野球を通じても日本とカナダの友好な関係が続くことを願った。

あいさつをするシム市長。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
あいさつをするシム市長。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 バンクーバー市ケン・シム市長は、「きょうは参加できて光栄です」と語った。シム市長は今年1月11日をVancouver Asahi Dayに設定。「朝日の歴史を知った時にチームの存在を認識することは重要だと思った」と理由を語った。1月11日は上西ケイさんの誕生日。「上西さんは102歳になられても元気で」と式典では上西さんの隣に座り、うれしそうに見守っていた。2025年はバンクーバー市と横浜市の姉妹都市提携60周年。「もう何度も日本を訪問したことがある」というシム市長は朝日のジャパンツアーの日程に合わせて日本を訪問する予定にしている。

これからもレガシーを受け継いで

 Vancouver Asahi Baseball Associationジョン・ウォン会長は、この日の10年の節目に「みんなにとってすばらしい日となった」と喜んだ。始めた当初はメンバーも少なく、10年後にここまで来ることは想像していなかったと笑う。現在メンバーは約200人。年齢も幅広く、この日も朝から年齢別に試合が行われ、「Asahi」のユニフォームを着た選手たちが白球を追いかけた。

 2015年のジャパンツアーをきっかけに創設されたVancouver Asahi Baseball Association。戦前の「朝日軍」がモットーとしていたフェアプレー精神を受け継ぎ、日系だけでなくカナダコミュニティに広がってきた。上西ケイさんは以前「日系だけでなくて色んな人種の子どもたちが一緒に野球をするのがうれしい」と語っていた。ウォン会長はこれから先の10年も「続けていけるように努力したい」と語った。

全員で記念写真。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
全員で記念写真。2024年9月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

(記事 三島直美/写真・動画 斉藤光一)

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