今年も278作品が上映され大いに盛り上がったトロント国際映画祭(TIFF)。中でも一段と熱かったのが午後11時59分に上映開始、真夜中にホラーやファンタジーなどの映画を観て楽しむ「ミッドナイト・マッドネス」部門。そこで新作「ザ・ゲスイドウズ」が上映された宇賀那健一監督が現地で取材に応じ作品への思いなどを語った。
ザ・ゲスイドウズ あらすじ
売れないパンクバンドの「ザ・ゲスイドウズ」。CDがあまりに売れなかったため田舎に移住しそこで曲を作って来いと事務所から命じられる。音楽以外は何をやってもダメなメンバーたちが田舎で畑仕事を手伝い周囲の人たちと触れ合いながら曲作りに励むなか、自分たちの音楽と居場所を作りあげてゆく。主演は夏子。多国籍バンドALIの今村怜央、ゴールデンボンバーの喜屋武豊、アメリカで映画監督をするロッコ・ゼベンベルゲンらが出演。
―これまでホラー映画も撮ってきた宇賀那監督ですが「ザ・ゲスイドウズ」はホラーではなくロックコメディ。今回音楽をテーマにされたのはどういう思いからですか?
「この物語はホラー映画が大好きな主人公がパンクな音楽をやっていて、社会と馴染めずにいるなか、新しい環境に触れ自分と自分の音楽の居場所を見つけるという話しなんです。もともと『物を作り続ける』というのがテーマにあって、何か物をつくり続けていいんだ、という温かい目線を向ける物語を作りたかった。自分が作るホラー映画と同様にパンク音楽も社会で少し白い眼で見られがちだったりするので、パンク音楽のミュージシャンが周囲に受け入れられながら曲を作りあげてゆく話になりました」
―バンドのメンバーには今村怜央さんと喜屋武豊さんというミュージシャンが本業のお二人もいますね。
「音楽映画で当て振り(録音済みの音源を流しそれに合わせて演奏するふりをすること)だと冷めてしまうので、そこは本業の人でと考えていた。夏子さんは音楽はやっていなかったけどカリスマ性でお願いしました。夏子さんは作品中で唄うのは初めてだったし、喜屋武さんも普段はエアギターのところをベースを弾いてもらうなどチャレンジはあったんですが、撮影開始ぎりぎりまで皆で練習していたので大きなライブを前にしたバンドメンバーの様な強いつながりができてとても良かったです」
―出来上がった作品にはホラー映画を思わせるシーンもあります。
「自分は母親の影響で小さい頃からホラーを観て育ったためホラーは自分の原点と言えるので、そういうホラー味はやっぱり入りますね」
―今回はミッドナイト・マッドネスでの上映となりました。
「トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネスに出品するのが本当に目標のひとつだったのですごくうれしいとともにお客さんの反応が楽しみで怖くもあります。ここまで来たのだから他の作品もできる限り見ようと毎日すごく映画を見て楽しんでいます」
―映画をこれから観る方にメッセージをお願いします。
「もともと何か物を作り続けている人、夢を見続けている人に向けた応援映画にしようと思って作りました。結果として夢を追い続けている人だけでなく、夢をあきらめた経験のある人(監督も映画をあきらめて会社員をやっていた時期が3年ほどあった)や夢が見つからない人など、何かをがんばっている人全員に対しての応援映画になったと思います。パンク音楽やホラー要素があるととっつきにくいかも知れないですが、実際は怖い要素は無いし誰にでも楽しんでいただけるエンターテインメントになっているので幅広い人にご覧いただけたらと思います」
プレミア上映当日・・・
レッドカーペットには多忙なスケジュールをぬって駆け付けた出演者さんたちの姿が!
宇賀那監督「いよいよ憧れの場所で皆さんに見てもらえるので興奮しています。楽しんでいただきたいですね」
数時間のみの滞在(!!)という今村怜央さん「こんなすごい舞台に連れて来てもらい嬉しい。皆に届くといいなと思っています」
喜屋武豊さん「こんなに歴史のあるすばらしい劇場で上映されるというのは、なかなか味わえる経験ではないので最高の気分。このレッドカーペットで寝たいくらいです(笑)」
夏子さん「音楽を生業にしてらっしゃる方たちとバンドを組むという役だったので最初は自分に務まるかと思いました。群馬での撮影も含め毎日が本当に楽しく大変なこともあったけど皆でやり遂げたという感が大きい撮影でした」
上映終了時は午前2時前。にもかかわらず監督、出演者の登壇に会場は多いに盛り上がり活発なQ&Aも行われた。
記事 Michiru Miyai
合わせて読みたい関連記事