「多文化の地で広がる未来」バンクーバー日本語学校入学式

2024年度バンクーバー日本語学校入学式。2024年9月7日、バンクーバー市。写真提供:バンクーバー日本語学校
2024年度バンクーバー日本語学校入学式。2024年9月7日、バンクーバー市。写真提供:バンクーバー日本語学校

 バンクーバー日本語学校2024年度(2024年9月~25年6月)入学式が9月7日にバンクーバー日本語学校並びに日系人会館(VJLS-JH)で行われた。今年度は、キンダー(幼稚園)クラス、小学科1年生、基礎科Aクラスに新入生として合わせて83人が入学。小学科、基礎科、午後からの中学科、高等科、ユースクラス、アダルトコース合わせて380人が土曜日に通学する。平日クラス、オンラインクラス、プライベートクラスを入れると約500人の生徒となる。

 午前中に行われたキンダー(幼稚園)クラスから小学科の入学式では、新入生が会場の大きな拍手に迎えられて入場し、日本とカナダの国歌を斉唱した。

 小学科4年生のクラスに入学する生徒は学校で楽しみにしていることを聞かれ、「友達に会えることが楽しみです」と丁寧な言葉遣いで答えた。始めた漢字の学習は「楽になるから好き。ひらがなをいっぱい書かなくてよくなるから」と笑顔で話した。

日本語への関心 急上昇

 同校の多くの子どもたちは、家族の勧めで入学している。入学式に出席した保護者のプロッサー彩佳(あやか)さんは「海外生活が長いため、子どもたちに日本語を維持してほしい」という思いで3人の子どもを通わせていると話す。また、2人の子どもが同校に通うアルベロ妙(たえ)さんは、カナダに来る前にアメリカで10年以上生活していた経験から、「ずっと海外で生活している子どもにとっても、授業がしんどいと思わない、無理のない形で日本語の勉強を続けさせたい」との考えからこの学校を選んだという。

 大学生・社会人を対象としたアダルトコースは入学者数が昨年度の約1.5倍。通常、初級レベルは1クラスだけだが、今年度は3クラスに増設して対応する。同校ゼネラルマネジャーの杉山ヨシさんは、「日本文化やアニメをきっかけに、日本語自体への関心の高まりを感じます」と話す。

日本とカナダを繋ぐ架け橋になる人に

新入生に向けてあいさつをするバンクーバー総領事館・丸山総領事。2024年9月7日、バンクーバー市。撮影 佐々岡沙樹/日加トゥデイ
新入生に向けてあいさつをするバンクーバー総領事館・丸山総領事。2024年9月7日、バンクーバー市。撮影 佐々岡沙樹/日加トゥデイ

 あいさつで「今日はこれから日本語を勉強する皆さんを応援するためにやってきました」と新入生にエールを送った在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は、こうした日本語学校がバンクーバーにあることの意義は非常に大きいと話す。「日加関係の増進には、お互いの言語を理解し、交流を深め、信頼関係を築くことが重要です。その基礎となる大きな部分が『言語』にあると思います。言葉以外のコミュニケーションももちろん大事ですが、言語の役割は非常に大きく、無視できないものです。習得は大変ですけどね…。私も外国語の勉強にはずっと苦心していますが、小さい子どもたちが日本語の勉強を始める姿を見て、今日はすごく自分もフレッシュな気持ちになりました」と語った。

入学式で新入生を激励する本間真理校長。2024年9月7日、バンクーバー市。撮影 佐々岡沙樹/日加トゥデイ
入学式で新入生を激励する本間真理校長。2024年9月7日、バンクーバー市。撮影 佐々岡沙樹/日加トゥデイ

 1906年に設立された同校は、カナダで最も古い日本語学校であり、日系カナダ人コミュニティによって運営され、日本語教育と日本文化の継承・普及に努めている。ここで40年以上教師を続ける今年度校長に再任した本間真理校長は、同校の教育方針について「『今日これだけの漢字を覚えたよ』というようなすぐ見える結果ではなく、ずっと先まで、子どもたちが日本語学習や日本文化に興味を持ち続けることが一番大切」と述べ、「オーバーな話ですが、日本とカナダを繋ぐ架け橋になる人材育成をモットーにがんばっている」と熱意を語った。

 カナダは多文化主義の国で、人口のおよそ4分の1が移民であり、200以上の言語が母語として使用されている。本間校長は、こうした環境こそ言語を学ぶにはうってつけだという。「日本でいろんな言葉を習うのは難しいですが、ここでは隣の人は日本語ではない言語を話し、日本とは異なる文化を持っていることが当たり前。すでにもう子どもたちは国際人なんです。そういうすばらしい環境の中で育っている子どもたちのさまざまな可能性をもっと広げてあげられたらいいな」と思いを語った。

(記事 佐々岡沙樹)

合わせて読みたい関連記事