カナダde着物
第63話
*初秋に単衣の着物*
秋らしい澄んだ夜空と真ん丸な満月を想像させる幻想的な「仲秋」(*1)は、カナダの9月にとても合う季語に思いますが、日本では気温が高過ぎて、その情緒が感じられないと日本に住む友人が呟いておりました。
カナダでは、この時期に見える月を、ハーベストムーンと呼ぶそうです。
河辺で見かける、ふっくらとした茶色の植物キャットテールは、かつて農民たちが付き明かりを頼りに収穫していた頃を想像させてくれます。
フレーザー川沿いを歩ける遊歩道が各所にありますので、初秋を感じながらお散歩もいいですね。
*今日の着物*Today’s Kimono
「初秋に単衣の着物」
単衣(ひとえ)の着物は、裏地のない一枚仕立てで、6月と9月に着ることが多いです。
破れやすい個所に「居敷当(いしきあ)て」(*2)などを施してあるものもあります。
友人の呉服屋さんは、仕事では1年中単衣で過ごしているそうです。
確かに店内は暖房で暖かく、動き周っていたら、それは暑いでしょう。
着物はPTOに合わせて、臨機応変に対応するのがポイントですね。
「ドラマSHOGUN将軍*エミー賞2024作品賞の他、多数を受賞!」
カナダBC州で撮影されたドラマ「SHOGUN将軍」が、ついに念願のエミー賞を受賞しました。
俳優の皆さま、撮影に関係された皆さま、本当におめでとうございます!
歴史に残る素晴らしい快挙であり、カナダ在住の日本人にとりましても、大変に名誉なことだと思います。
「日本の文化を正しく世界に紹介したい」という想いを強く持ち、作品の主演及びプロデューサーを担当された真田広之さんは、エミー賞の壇上で日本語でもスピーチをされました。
「これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々、そして監督や諸先生方に心より御礼申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は、海を渡り国境を越えました!」
多くの撮影に関わった日本人の皆さん、そして、真田さんの20年間の北米での苦労や努力が報われた日だったのではないでしょうか。
日本に住む日本人や海外に暮らす日本人は、今までのハリウッド作品の中で日本文化が出るたびに「どうして、こうなるのか」と残念な気持ちになることがあったかと思います。
私もお寺で日本文化を継承する活動をする上で、何度かステレオタイプや偏見に悩まされたことがありました。
ある7歳のお嬢さんの七五三参りと写真撮影の時に「どうして、うちの娘は芸者の格好をするのか」と真面目に質問をするお父さんがいました。
その想像する「GEISHA」というものが、どのようなものなのか…。たぶん、いかがわしいイメージの上でのその質問だったかと思います。
他にも「結婚式に招待された時に、着物は相応しくない。主役より目立ってしまうから」というご意見もありました。
着物の種類の中には、目立つためのものでなく、その場にふさわしい謙遜や尊敬を表すものもあります。
もちろん、着て行かれる方が納得され、お好きな装いや着物で行かれるのが一番の正解かと思います。
エミー賞の話しに戻りますが、今回の受賞や作品の報道は、日本や世界中に配信され、とても注目を浴びたと思われます。
文化は時代や人々の想いで作り上げられてきましたから、今までの伝統や文化を継承し続けながら、これからも新しいものが世に出てくるかも知れません。
まさに「故きを温ねて新しきを知る(ふるきをたずねてあたらしきをしる)」(*3)でしょうか。
メディアで次の制作が発表された、シーズン2も楽しみですネ!
参照
日本の行事・暦:http://koyomigyouji.com/index.html
きもの大辞典:https://www.someoriren.jp/dictionary/index.htm
家庭画報.com:https://www.kateigaho.com/article/detail/165406
VOGUE JAPAN MAGAZINE:ドラマ「SHOGUN 将軍」、エミー賞2024で作品賞を受賞!
*言葉*
*1)仲秋(ちゅうしゅう)
「仲秋」とは、旧暦の8月を指す言葉です。 現在の新暦においては9月7日前後の白露から10月7日前後にある二十四節気「寒露」の前日までの1か月間が「仲秋」です。 読み方は「ちゅうしゅう」ですが、昔は「ちゅうじゅう」と呼ばれていたこともありました。秋の半ば頃を指す言葉であり、虫の声もより一層響き渡り、月も輝いて見える風情溢れる時期を表現する言葉なんですね。(語彙力com)
*2)居敷当(いしきあ)て
居敷当てとは、着物や長襦袢の後ろ身頃、腰辺りに付ける白い当て布のことです。 居敷当ては、単衣(ひとえ)や絽、浴衣などの夏物にだけ使用します。(https://kimono-rentalier.jp/column/kimono/ishikiatetoha/)
*3)故きを温ねて新しきを知る(ふるきをたずねてあたらしきをしる)
古いことを調べて、新しい知識や意義を再発見するという意味。(https://proverb-encyclopedia.com/hurukiwotazunete/)
「着物語り」
コナともこさんが着物の魅力をバンクーバーから発信する連載コラム。毎月四季折々の着物やカナダで楽しむ着こなしなどを紹介します。
2020年8月から連載開始。第1回からのコラムはこちらから。
コナともこ
アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
13年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。
年間を通じて季節の行事に加え、お寺での初参り、七五三祝い、十歳祝い、元服祝い、二十歳祝い、結婚式、生前葬、お葬式などの設えと装いのお手伝いもさせていただいております。
*詳しくはコナともこ までお問い合わせ下さい。tands410@gmail.com
東漸寺は非営利団体で、和の学校の収益は東漸寺の活動やお寺の維持の為に使われています。
カナダ人の夫+社会人と大学生の3人娘がおり、バンクーバー近郊在住。
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