「いい旅 バンクーバー島 1」~投稿千景~

エドサトウ

 8月も半ばを過ぎて、少々涼しくなり、もう晩夏という感じである。この週末は雨模様の予報ではあるが、すでにバンクーバー島へ行くフェリーの予約を入れてチケットは買ってある。ドライバーの息子はコロナウィルスの時から、ホリデーを取っていない。ここは無理をしてでも行かねばなるまい。

 朝の8時半、土砂降りの雨のなか車に乗り出かければ、フレイザー河の下をくぐってているトンネルの中ほどは低く、結構な水たまりになっていた。ドライバーの息子が勢いよく通りぬければ、すごい水しぶきがトンネルの壁から跳ね返り、車のフロントガラスの視界が水しぶきで見えなくなるほどであった。

 しかし、前線が通り抜けたのか、フェリー乗り場に着くころには小雨となり、少々ホッとする。小雨ぱらつく中、フェリーはバンクーバー島の中ほどにあるナナイモ市に向けて、ゆっくりと動きだす。

 ナナイモは、割と雨の少ないところだと、以前、泊まった宿の主人が言っていたことを僕は少々頼りにしていた。9時15分、ゆっくりと港を離れてゆく。僕たちは、キャフェテリアに行き昼食を兼ねて、朝食のトースト、スクランブルエッグ、ハッシュドポテト、ソーセージのトラディショナルブレックファーストとコーヒーを注文した。料金は20ドルぐらいであったが、ボリュームもあり、おいしかった。

 朝食兼昼食を済ませて、少しゆったりとしたラウンジの柔らかいシートに座って外を見れば、雨もやみ、空が明るくなっている。朝の土砂降りの雨は、すっかりと止み、いい旅になりそうである。

 ナナイモの港に昼前に到着。太陽が照り始めた高速道路を最初の目的地パークスビルを目指して、我らの少々古いホンダシビックスポーツは快調に走る。出発前にエンジンオイルがエンジンからわずかに滲みでてオイル焼の臭いがするのでエンジンのガスケットなどを交換してもらい、少々お金がかかったが凄く調子がいい。

 この先のキャンプ場や宿の様子などを知りたいのでパークスビルの街の手前にある旅のインフォメーションセンターに寄るが、土曜日と日曜日は休みとある。それで、すぐ隣に新しくできた郷土歴史博物館があり、古い昔の建物が復元されて、いくつも建っていた。それによれば、この辺りは1866年頃、つまり江戸時代末期に英国のコロニー(植民地)となり、材木の切り出しが行われていたようである。当時の船は多くが木製であったから、バンクーバー島の大きなイエローシイダ(日本のヒノキに似る)が水に強く腐りにくいので船の船体を作るのに良く、ここで切り出されて製材されたものが、アメリカや英国に輸出されたのかもしれない。

 そのためか、早くに鉄道も敷かれて、ナナイモの港まで材木が運ばれたのかと想像される。その昔、ネイティブ(先住民)の人々しか住まない小さな集落の近くに白人の人々が住み、食料や鉄の道具を売る店もでき、学校ができて、次第にパークスビルの街も大きくなっていったようである。

 丸太を四角く切り、それを積み上げて壁を作り屋根を作り、風が入らないように丸太の間にはしっくいなどを詰める。小さな室内には窓とドアがあり、ドアの近くに四角いキッチンストーブがあり、料理と部屋の暖房が出来る様になっている。その横に小さなテーブルがあり、食事ができる。さらにその横に壁に沿ってベッドが置かれてあるが、トイレとシャワーはない。たぶんトイレは外にあったのかもしれない。シャワーはないから、ストーブで沸かした熱いお湯で身体を拭くぐらいであったのかもしれない。

 週末には、お湯で身体を拭いて近くの教会へ行ったのかもしれない。食料は自分達の畑で作り、ほとんど自給自足であったのであろう。近くの海でサーモンはとれるし、山に行けば、鹿や熊の肉がハンティング(狩猟)できたのであろう。

投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
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