日系コミュニティと歩んだ2年間 丸山浩平総領事インタビュー

バンクーバー総領事就任時から続けてきた「書」。書いている最中は「正直寂しかった」という「感謝」と丸山総領事。撮影 斉藤光一/日加トゥデイ
バンクーバー総領事就任時から続けてきた「書」。書いている最中は「正直寂しかった」という「感謝」と丸山総領事。撮影 斉藤光一/日加トゥデイ

 在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は、10月下旬にオタワの在カナダ日本大使館へ異動することが決まった。総領事としての2年間を通して、自身の気持ちを「書」とコラムで表現し、領事館HPに「CGのShow(書)Room」を掲載してきた丸山総領事は、最後の「書」として「感謝」の2文字を選んだ。書いている最中は「正直寂しかった」と語る丸山総領事に、バンクーバーでの2年間を振り返ってもらった。

—この2年間の率直な感想をお願いします

 今まで赴任してきた都市に比べて、バンクーバーのように日系コミュニティが非常に大きい都市というのは初めてでしたし、もう一つは、ダイバーシティですよね。多文化、多人種、本当にいろんな国、いろんな背景の方たちが共存しているという点が最も印象的でした。

—日系コミュニティとの思い出を教えてください

 この2年間で、バーナビーの日系文化センター・博物館やスティーブストンをはじめ、ビクトリア、ナナイモ、ユーコン(準州)など、さまざまな歴史を持つ日系コミュニティそれぞれでお話をうかがったことは全て印象深い思い出です。

 カナダとアメリカでは事情が違いますが、私自身、アメリカのロサンゼルスに日系人の親戚がいまして、実際に日系カナダ人の方たちから苦しかった歴史も含めていろんなお話を聞いた上で、今年その親戚と久しぶりに再会をしたときに、自身のルーツについての理解も深まりました。

「バンクーバーのように日系コミュニティが非常に大きい都市というのは初めてでした」と振り返る在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2024年10月1日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/日加トゥデイ
「バンクーバーのように日系コミュニティが非常に大きい都市というのは初めてでした」と振り返る在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2024年10月1日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/日加トゥデイ

 また、バンクーバー日本語学校などを訪問した際は、日本語の勉強をがんばっている若い世代を見て、半分親のような気持ちで、心から応援したいという気持ちになりました。

—カナダは多文化・多言語の国ですが、色々な国に赴任されている丸山総領事にとっての「言語」とは? 

 言語に関していえば、外交官にとって、外国語は日常的であり、ある意味死活的な重要な要素です。私自身、必ずしも外国語が得意ではないため、苦しい部分もありますが、外国語の重要性は言うまでもなく、積極的に学び続ける必要があります。

 一方で、私が韓国語と日本語の通訳の仕事を長年経験して感じたのは、母語の大切さです。母語は私たちの思考の基盤であり、私たちの中心的な部分を構成していると思います。日本語の中には、外国語に訳しにくい表現もありますが、その難しさがおもしろさでもありますので、そうした部分を楽しみながらお互いの文化の理解を深める努力が必要だと感じています。

—任期中に成果はありましたか?

「バンクーバーのように日系コミュニティが非常に大きい都市というのは初めてでした」と振り返る在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2024年10月1日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/日加トゥデイ
「バンクーバーのように日系コミュニティが非常に大きい都市というのは初めてでした」と振り返る在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2024年10月1日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/日加トゥデイ

 成果とまでは言えませんが、BC(ブリティッシュ・コロンビア)州と日本の姉妹都市は30以上ある中、バンクーバーと横浜、バーナビーと釧路、ビクトリアと盛岡など、多くの姉妹都市関係が周年を迎えつつあるタイミングで、関係都市の関係強化のために、交流を深めるための基盤作りには力を入れました。また、日本と他のコミュニティ、例えば、韓国系コミュニティとの交流を促進するための種まきのところまでは何とか行いましたが、まだまだ道半ばです。

—以前の赴任地である韓国と比べて国家間の関係にはどのような違いを感じますか?

 日韓関係は地理的にも近く、歴史的に複雑な側面もありながらも、交流や友好の歴史も豊富です。それに対して、日加関係は地理的な距離があるため、関心の密度や知識の深さには自ずと違いはあります。しかし、近年、日加間のお互いの関心の高まりを非常に感じています。

 特に世界情勢が不安な現在、日本にとって、カナダはエネルギーや食料の供給地として非常に重要な存在です。また、昨年にはBC州やユーコン準州の州首相が最初の公式訪問先として日本を訪問し、現在州が抱えている住宅供給問題解決のヒントを日本の成功例に求めるなど、お互いの協力関係が構築されてきています。

—次の赴任地であるオタワで期待していることは何ですか?

 来年のG7サミットがカナダで開催されることもあり、我々のやるべきことは遺漏なきを期すということかと思います。カナダ政府との関係をより強固にし、日加関係の重要性がさらに高まることを期待しています。

 個人的に楽しみにしていることは、私は寒いのは嫌いではないので、寒いのが楽しみというと変かもしれませんが、バンクーバーとは違う気候、東側の雰囲気、文化など、新たなものを発見してカナダをより深く理解できたらいいなと思います。

—最後に、バンクーバーの方々にメッセージをお願いします

 私がバンクーバーの総領事在任中には、日系カナダ人、在留邦人のコミュニティの方たちをはじめ、たくさんの方たちとの出会いがあり、私が全く知らなかったことに目を向ける機会を多くいただくことができました。そうした全てのことに対して、心から感謝しております。またお目にかかれる機会があるのではないかと楽しみにしております。本当に2年間ありがとうございました。

丸山総領事のバンクーバーでの最後の「書」。2024年10月1日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/日加トゥデイ
丸山総領事のバンクーバーでの最後の「書」。2024年10月1日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/日加トゥデイ

(記事 佐々岡沙樹/写真 斉藤光一)

合わせて読みたい関連記事