毎日寒いし雨は降るし、と本格的にレインクーバーのシーズンがやって来ました。こんな時は大好きな映画館に行くのさえあきらめてしまう私…(苦笑)。ありがたい事に、夏から秋の映画祭シーズンで好評だった作品やドラマシリーズの新作がどんどん配信されてきているので、もうこうなったら出不精を極めようという境地にまでなっています。
そんな今日ご紹介するのは、カンヌ国際映画祭でメインキャストの4人が一斉に女優賞を受賞、トロント国際映画祭とバンクーバー国際映画祭でも上映されて話題になった「Emilia Pérez」(ジャック・オディアール監督)。11月13日にいよいよNetflixで配信開始となった作品です。
あらすじ:優秀なのにボスにいいように使われてばかりの弁護士のリタ。クズみたいな男たちが簡単に無罪になる裁判を見るのに嫌気が差していたある日、メキシコ中で恐れられている麻薬カルテルのリーダー、マニタスから依頼を受ける。「大金を払うから全てを捨て女性として新しい人生を送る手はずを極秘に整えて欲しい」と。全てが無事に終わった数年後、イギリスで暮らすリタの前にエミリア・ペレス、かつてのマニタスが再び現れ二人の世界は大きく動くことに…。
演じるのは、賢く有能な弁護士、リタ役にゾーイ・サルダナ、エミリア・ペレス役に実際にトランス女性であるカルラ・ソフィア・ガスコン、エミリアの元妻ジェシー役にセレーナ・ゴメス、そしてエミリアが出会う女性エピファニア役がアドリアナ・パス。
この映画、とにかく内容が盛りだくさん。ざっと言えば、ジェンダーアイデンティティと抑圧された女性の物語を、アクションとメロドラマありな犯罪者の贖罪を描くマフィア物で描き、メキシコの社会問題を足して一部はミュージカルで仕上げた作品…という感じ。なのに全体がバランス良くちゃんとまとまっていて、重くもなりすぎずにエンタメとして最後まで楽しませてくれました。凄い。
心に合わせて体も女になりたい、と望んだマニタス。でも彼はメキシコの麻薬カルテルの大ボス。残酷で荒くれで、マッチョの中のマッチョみたいな彼がずっと本当の自分を隠して生きてきたなんて、考えたらすごく思い切った切ない設定ですよね。そして無事に女性の体を手に入れた後、自分が過去に犯した罪に向き合うことになるんですが、男性の時と女性になってからの両方をトランス女性であるカルラが見事に演じています。(いや、本当に同じ役者さんって信じられない!)
ハラハラあり、ノリノリの音楽シーンあり(セレーナとゾーイに拍手‼)、そして少し笑えるシュールなシーンもあり。男性の体から出たかったエミリア、男性優位の社会で実力を発揮できなかったリタ、マフィアのリーダーの夫に逆らえず籠の鳥だったジェシー、夫のDVに苦しめられていたエピファニア。閉じ込められてきた女性たちが自分なりの幸せを求めて、もがきながら生きる物語は決して完璧ではないけれど、それでも力強くて美しいものでした。
カナダではNetflixで配信中。
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バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
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Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
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