朝日の精神を次世代へ、新年会で2025年ジャパンツアーを発表

 朝日ベースボール・アソシエーションの2025年新年会が1月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で行われた。

 昨年9月に102歳で亡くなった戦前の朝日軍の元選手上西ケイさんを偲び、今年日本に遠征するジャパンツアーチームを激励する新年会となった。

上西ケイさんを偲ぶ、レガシーは次世代に引き継がれていく

記念品には上西ケイさんの写真も。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
記念品には上西ケイさんの写真も。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 新年会は上西ケイさんへの黙とうで始まった。ジョン・ウォン会長は「ケイさんは、私たちが悲しむのではなく、彼の人生を祝い、記憶を生かし続けることを望んでいると思います」と思いを語った。

 その後「ケイ・カミニシ・アワード」の授与式が今年も行われ、Kai Konkin選手が受賞した。2023年の日本遠征でキャプテンとしてチームをまとめたリーダーシップや野球以外での活動が評価された。

2025年「ケイ・カミニシ・アワード」を受賞したKai Konkin選手。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
2025年「ケイ・カミニシ・アワード」を受賞したKai Konkin選手。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 Konkin選手は「この賞は自分一人の努力ではなく、チームメートやコーチ、家族の支えのおかげです」と感謝し、上西ケイさんが伝えたスポーツマンシップを次世代にも引き継いでいきたいと話した。朝日と上西ケイさんのレガシーは若い選手たちに受け継がれている。

ジャパンツアー概要発表、バンクーバー市と横浜市の60周年記念イベントにも参加

 今年のジャパンツアーは3月14日から24日までの10日間で、千葉、東京、栃木を訪問する。最初の週末は千葉で現地チームとの合同練習を通じて日本の選手たちと交流するほか、千葉ロッテマリーンズのトレーニング見学も予定している。東京ではバンクーバー市と横浜市の姉妹都市60周年記念イベントに参加。最後の訪問先栃木では、世界遺産のある日光を観光し、選手たちは野球だけでなく日本文化や歴史についても学ぶ。

 ジャパンツアーは、戦前バンクーバーで活躍した日系人野球チーム「朝日」の精神を受け継ぐ「新朝日」チームが、日本で親善試合や文化交流を行うことを目的に2015年に始まった。以降2年に一度実施され、野球の技術向上だけでなく、日加両国の絆を深める重要な機会となっている。

 在バンクーバー日本国総領事館・岡垣さとみ首席領事は、昨年1月11日が「Vancouver Asahi Day」として制定されたことは戦前の朝日軍の活躍をたたえる非常に意義深い出来事だと述べ、今年のジャパンツアーも「カナダと日本の絆を一層強めることを確信しています」と期待した。

キャプテン「日本とカナダの野球の違いを現地で直接学びたい」

 2025年ジャパンツアーチームのキャプテンに選ばれたKota Hirai選手は、チームについて「これまで築いた絆は家族のように深いもの」と語り、「​​皆さんのおかげで私たちはここまで来ることができました」とチームメートや家族、ボランティア、そしてコーチたちに感謝した。

2025年ジャパンツアーチームのキャプテンに選ばれたKota Hirai選手のスピーチ。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
2025年ジャパンツアーチームのキャプテンに選ばれたKota Hirai選手のスピーチ。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 カナダで育ち、幼い頃から野球に親しんできたというHirai選手。スピーチ後に話を聞くと「バンクーバー朝日のことはみんな知っている」と歴史やインパクトに引かれて入団を決意したことを明かした。

 ジャパンツアーへは「日本とカナダの野球の違いを現地で直接学びたい」と意欲を示し、「日本語を使わない選手が多いので僕が日本語を使ってみんなをサポートしたい」と、野球以外でもリーダーシップを見せる。

 それでも「みんなは日本に行ったことがないから、日本食(を一緒に食べられること)もすごい楽しみ」と無邪気な笑顔も見せた。

日本らしい野球に欠かせない「チームビルディング」

 今年のジャパンツアーの監督を務める小川学さんは数年前からチーム作りに力を入れてきたと話す。カナダと日本の野球の違いを意識した指導を行い「カナダでは個人の成果が重視されがちですが、日本の野球には教育的な価値観やチームワークの文化があります」。その中で、選手同士が「阿吽の呼吸」のように自然に連携できるチームワークの構築を目指し、選手たちに互いを補い合う姿勢を教えてきたという。

 朝日の活動は毎年8月から翌年3月まで。その後、選手たちは各地域のチームに戻る。遠征に向け限られた期間の中で選手たちが一体感を育むためのチーム作りが重要となる。

 今回の遠征には、約45人のトライアウト参加者から選ばれた17人が参加する。選考では「単に技術力だけではなくて、どれだけチームに献身してくれるか、成長したいという意欲があるかを大事にしました」と監督。

 遠征を間近に控え、「まずはとにかく楽しんでほしい」と話しつつも「日本で朝日がただのカナダのチームと思われないようにしたい」と監督としての強い思いも見せた。選手たちには「日本の野球文化を体験し、そこで得た学びを次の世代に伝えてほしい」と期待した。

成長し続ける朝日

 新年会は、和太鼓の演奏やケーキカットセレモニーで盛り上がる中、選手だけでなく、家族、元選手、ボランティアコーチなど多くの関係者が一堂に会し、親睦を深める時間となった。朝日を陰に陽に支えている人たちだ。

イベント最後の集合写真にはボランティアコーチたちも。選手たちに囲まれ少し照れた様子で笑顔の撮影。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
イベント最後の集合写真にはボランティアコーチたちも。選手たちに囲まれ少し照れた様子で笑顔の撮影。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 その中で日本で野球を経験してきたボランティアコーチは朝日の成長を支える重要な役割を担う。学生から社会人まで背景はさまざまで、選手たちの練習を支えている。小川監督も「実際に日本で野球をしていた彼らが教えることに深い意味がある」と頼りにしている。

 戦前の「朝日軍」の意思を継ぐ「新朝日」チームは、当初14人のメンバーからスタートし、現在では200人以上が参加するチームとなった。朝日の成長は多くの人に支えられている。選手たちは過去のレガシーに憧れ、このチームで経験を重ねながら、次世代へ繋ぐ役割を担おうと努力を続けている。ジャパンツアーは野球だけでなく、日加をつなぐ架け橋としての役割も担っている。

朝日ベースボール・アソシエーション

2016年に発足。当時の名称はカナディアン日系ユースベースボールクラブ。2015年に最初のジャパンツアーを実施し、これを機に2016年に創設した。https://www.asahibaseball.com

1月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館でAsahi Baseball Associationの新年会が開催された。今年3月のジャパンツアー詳細も発表された。
1月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館でAsahi Baseball Associationの新年会が開催された。今年3月のジャパンツアー詳細も発表された。

(記事 田上 麻里亜)

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