カナダde着物
第68話
*着物を10倍愉しむ*お稽古編*
バンクーバー近郊でも、梅の花を目にすることがあります。
今年の年初は、お天気が良かったり雪が降ったりと、自然の植物たちは対応に大慌てしているかもしれません。
それでも、蕾を膨らませる花々は、自然の変化や時間の流れ、そして「待つことの大切さ」を感じさせてくれます。
春の温かな日差しを待ちながら、少しずつ成長していく様子は、子育てにも似ていますね。
「早く大きくな~れ」、でも、一歩ずつ踏みしめて。
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*今日の着物*Today’s Kimono
「着物を10倍愉しむ*お稽古編」
好きな趣味や趣向品で特別なものを見つけたとき、それまでの楽しさが10倍に感じることがあります。これは、知らなかった頃と比べて、という意味です。私たちが知らないことは無限にあります。そして、好奇心が旺盛で多種多様な趣味を持つ人でも、限られた人生の中でどれだけ新しい楽しみを見つけられるかは分かりません。
ところで、日本には「お稽古文化」があります。これは、何かを目的とした「勝負のための練習」や「体を鍛えるトレーニング」とは異なり、その一瞬一瞬を「本番」として捉える作業です。たとえば、茶道では、お茶会のための練習ではなく、毎回のお稽古で相手にお茶を差し上げ、その一服を大切にします。
私はこれまでの茶道のお稽古で洋服を着て出かけた日は数えるほどです。ほとんどのお稽古には、雨の日も雪の日も猛暑の日も、着物で出かけます。それは、今日のお稽古を「本番」と考えると、お茶会の日のように、着物を選ぶことが自然の流れとなるからです。
時々思うことがあります。それは、着物でお稽古に出かける日は、もしかしたら自分の中で10倍の価値を感じる愉しみになっているのかもしれない、ということです。
話は変わりますが、以前、飛行機で隣に座った初老の男性が、「世界中にある世界遺産を、この命ある限り見て回りたい」と話していました。定年前まで高校の社会科の教師をしていて、この夢を実現させるために長年働いてきたそうです。
おそらく、何度も生徒たちに教えてきた世界遺産を実際に目にしたときの感動は、私が感じるそれの10倍以上かもしれません。そこには、ワクワクや達成感も含まれ、深い愉しみがあるのでしょう。
着物に関しても、織物や染め物、文様やその歴史には、日本固有の深い意味やストーリーが込められています。それを知ることで、物を通じて私たちの心に潤いを与えてくれると思います。
皆さまは、10倍愉しめるものはありますか?
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*今日の和の学校*Today’s Gathering
「練切菓子ワークショップ*新春編」
今年の初雪が降った週末、お寺で練切菓子(ねりきりがし)のワークショップが開かれました。
このワークショップは、京都で修行し、菓子職人として働いていた講師による少人数の初心者向け教室です。
材料はとてもシンプルですが、人前に出せるお菓子を作るには、技術と経験が必要だとすぐに感じました。
生徒たちは、ほんのりとしたピンク色の花びらを作りながら、それぞれの個性が光る梅の花を仕上げていきました。
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
*参照*
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「着物語り」
コナともこさんが着物の魅力をバンクーバーから発信する連載コラム。毎月四季折々の着物やカナダで楽しむ着こなしなどを紹介します。
2020年8月から連載開始。第1回からのコラムはこちらから。
コナともこ
アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
14年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。
年間を通じて季節の行事に加え、お寺での初参り、七五三祝い、十歳祝い、元服祝い、二十歳祝い、結婚式、生前葬、お葬式などの設えと装いのお手伝いもさせていただいております。
*詳しくはコナともこ までお問い合わせ下さい。tands410@gmail.com
東漸寺は非営利団体で、和の学校の収益は東漸寺の活動やお寺の維持の為に使われています。
カナダ人の夫+社会人と大学生の3人娘がおり、バンクーバー近郊在住。
和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/
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