「簡単に高収入」に騙されないで!オンラインの「タスク詐欺」がカナダでも急増中

 在バンクーバー日本国総領事館から2月上旬に「タスク詐欺に関する注意喚起」のメールを受け取った人も多いだろう。最近増えているというタスク詐欺とは具体的にどんな詐欺か。被害に遭わないためにはどうすればいいのか。その現状と対策について取材した。

簡単なタスク・作業で稼げるはずが…詐欺の手口

 タスク詐欺とはどういう形の詐欺なのか。バンクーバー総領事館によると、「『パソコンや携帯電話を使って、商品の評価など簡単な作業(タスク)を行うことで高額収入が得られる』という求人広告に引かれて応募したものの、多額の支払いをさせられたケースが『タスク詐欺』、あるいはそれに類する被害として確認されている」という。

 総領事館ではタスク詐欺に関する相談が急増しており、今年に入りすでに4件の相談があったそうだ。

 2月6日付けの同館の注意喚起メールでは、「情報サイトの掲示板で『在宅で簡単に稼げる』との求人に応募して被害にあった事例」が挙げられていた。人定事項の提供や報酬を受け取るためのアプリのインストールを勧められたのち、単純な入力作業の業務(タスク)が与えられ、初日の成功報酬として数百ドルが振り込まれる。しかし、翌日以降のタスクで自分の認識しないエラーにより損失が発生したとして費用の支払いを要求され、数百ドル~数千ドルを相手方へ送金してしまったというケースだ。

 総領事館に寄せられた相談については、事業者とのやりとりは日本語と英語、いずれのケースもあるという。事業所の所在地とされる場所も、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパなど各国に分布しているそうだ。

 日本の消費者庁でも、SNSの広告を使った「動画のスクリーンショットを撮らせるタスク詐欺」の事例を挙げ、注意喚起している。事業者とのメッセージのやりとりの画像なども載っているので、一読しておきたい。 https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms103_250206_01.pdf

 カナダ政府のカナダ詐欺対策センター(Canadian Anti-Fraud Centre)のウェブサイトでも “Job Fraud”としてタスク詐欺を紹介している。同センターでは、仮想通貨を使ったケースが増えていると警告している。

 その典型的なパターンは、求職サイトに履歴書や連絡先を共有した後に、テキストメッセージやチャットアプリ、メールなどで事業者が連絡してくるというものだ。相手は、実在するカナダの企業を名乗り、「フリーランスとして製品やアプリ、動画のプロモーションをする仕事」を持ちかけてくる。

 その事業者が作成したソフトウェアをインストールし、アカウントを作成すると、「注文」や「タスク」が与えられる。タスクを完了すると、最初に少額の報酬やコミッションが支払われるが、これは事業者が信用を得るためのものだ。その後、事業者はより多くの製品をプロモーションして「より高額な報酬」や「レベルアップ」することを持ちかけてくる。そして、そのために手数料を支払うように要求してくる。

 報酬は仮想通貨のアカウントやウォレットに入金される。しかし、アカウント上では残高が表示されていても、実際に引き出すことはできないという手口だ。

被害に遭わないために

 総領事館によると、タスク詐欺の被害者の多くは、最近カナダに来た求職中の人だったという。「経験がなくても高額収入が可能という言葉に引かれてしまうのかもしれませんが、簡単に稼げると称する副業を信用しないよう気をつけてください」と担当者は話している。

 被害に遭わないための対策として総領事館では注意喚起のメールに、「『簡単に稼げる』『儲かる』ことを強調する広告は詐欺の可能性があるのでうのみにしない」「電話番号や正確な所在地が載っていない、あるいはGmailなどのフリーメールを連絡先として使っている会社は特に注意する」「収入を得る目的のはずが、逆に相手から振り込みを求められた時点で詐欺の可能性を疑い、警察や知人、友人などの第三者に相談する」「インターネット、ニュース、公的機関などから最新の詐欺の手口を知っておく」ことを挙げている。

 カナダ詐欺対策センターでは、なんらかの行動を起こす前に必ず相手となる事業者をリサーチすること、実在の企業からテキストやメールを受け取った場合は記されている連絡先ではなく自分でその企業の連絡先を調べて直接コンタクトを取るように呼び掛けている。

 それでも被害に遭った場合は地元の警察に連絡を。さらにカナダ詐欺対策センターでは、同センターへの報告を奨励している。詐欺についての捜査をするのは警察だが、同センターに蓄積されたデータが警察の取り調べの助けとなるからだ。

 総領事館では、被害者が警察やカナダ詐欺対策センターに被害届を提出する方法について案内したり、クレジットカードやデビットカード情報を業者に渡してしまった場合の対応についてアドバイスを行っている。また、カナダ詐欺対策センターへの報告については「電話で被害報告を行うことが困難な場合には、書面による報告も可能です。同センターのウェブサイトにアクセスし、オンラインによる報告手続きをお勧めします。翻訳ソフトなどを利用して容易に提出することができます」と話している。

在バンクーバー日本国総領事館
https://www.vancouver.ca.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

在バンクーバー日本国総領事館(タスク詐欺に関する注意)
https://www.vancouver.ca.emb-japan.go.jp/files/100791668.pdf

Canadian Anti-Fraud Centre
https://antifraudcentre-centreantifraude.ca/index-eng.htm

(取材  宗圓由佳)

合わせて読みたい関連記事