開幕の大阪・関西万博、「再生」がコンセプトのカナダ館が人気 開幕に間に合うも、名物の販売施設開業は「追い込みの作業中」

大阪・関西万博のカナダ館が夜間にライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)
大阪・関西万博のカナダ館が夜間にライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)

 カナダ政府は、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)で4月13日に始まった2025年大阪・関西万博にカナダパビリオン(カナダ館)を出展して人気を集めている。コンセプトを「再生」とし、拡張現実(AR)を通じてカナダの革新性と多様性、創造性、環境に配慮した社会を知ることができる。カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表は「来館者から高い評価をいただいている」と手応えを示す一方で、カナダの「名物料理」を買える販売店は「オープンが開幕に間に合わず、追い込みの作業を進めている」と打ち明けた。

カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表(大塚圭一郎撮影)
カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表(大塚圭一郎撮影)

AR技術でカナダ

上空から見た大阪・関西万博の会場。回廊が大屋根リング(大塚圭一郎撮影)
上空から見た大阪・関西万博の会場。回廊が大屋根リング(大塚圭一郎撮影)

 会場を囲んでいる全長約2キロの木造の回廊「大屋根リング」に面したカナダ館は、独自にパビリオンを出展した「タイプA」。氷をイメージした外観は、厳しい冬にできた川の氷が春の訪れとともに溶け出し、氷の断片が川の流れをせき止める自然現象「水路氷結」に由来する。

 入り口には「CANADA」の赤い英文字を設けており、来場者が文字の前で記念写真を撮影できるようにしている。

2025年大阪・関西万博のカナダパビリオン(カナダ館)の外観(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダパビリオン(カナダ館)の外観(大塚圭一郎撮影)

 入館するとタブレット端末を貸してもらうことができ、内蔵カメラを展示物などに向けると拡張現実(AR)の技術を用いてカナダの全10州・3準州が織りなす多様性や創造性、豊かな自然などが画面に映し出される。

 主要な展示室には氷のオブジェが並んでおり、そのうちの一つにタブレットのカメラを向けるとカナダ西部ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーの複合施設「カナダプレイス」と停泊するクルーズ船が画面に出現した。カナダプレイスの東館は1986年に開催されたバンクーバー国際交通博覧会のカナダパビリオンの跡だけに、ここでもカナダ館のコンセプトである「再生」を体現している。

ARで映し出されたカナダプレイス東館とクルーズ船(大塚圭一郎撮影)
ARで映し出されたカナダプレイス東館とクルーズ船(大塚圭一郎撮影)

 他にも最大都市のオンタリオ州トロントにある塔「CNタワー」(553・33メートル)、先住民による彫刻作品の制作、カナダが強みを持つ宇宙開発の様子などが浮かび上がる。

「実は未完成」の部分とは

 出口のある部屋にはパークスカナダ(カナダ国立公園局)のビーバーのキャラクター「パーカ」が待ち受けており、一緒に記念撮影をしてもらえる。パークスカナダが国立公園の絶景ポイントに置いている赤いいすも用意されている。

ステージの前に立つパークスカナダの「パーカ」(左、大塚圭一郎撮影)
ステージの前に立つパークスカナダの「パーカ」(左、大塚圭一郎撮影)

 出る際には、「スタッフたちの手作りだ」というメープルクッキーを振る舞ってくれた。ピーターズさんに「開幕に間に合わないパビリオンもある中で、よくオンタイムに完成できましたね」と話したところ、「実は最後の準備を進めている部分があります」と打ち明けた。

 フライドポテトにグレイビーソースとチーズカードをかけたカナダの名物料理「プーティン」やカナダ産のワイン、ビールなどの販売店を設ける予定だが、まだ開業していないのだ。ピーターズさんは「4月中の開業を目指している」と解説し、カナダに割り当てられた独自イベントの開催日「ナショナルデー」の5月17日には「絶対に間に合わせる」と強調した。

カナダ館の料理アドバイザー、フィル・キャメロンさん(大塚圭一郎撮影)
カナダ館の料理アドバイザー、フィル・キャメロンさん(大塚圭一郎撮影)

 ピーターズさんは「メープル味のソフトクリームも販売すれば人気を集めるのは間違いないので、用意できるかどうかを検討している」とも明らかにした。カナダ館の屋外には飲食用のテーブルといすを備えている。

 カナダ館の料理アドバイザー、フィル・キャメロンさんは「カナダには素晴らしい食材と質へのこだわりがあり、それが多様性に富み、優れた料理につながっている。カナダ館を訪れて確かめてほしい」とアピールした。

120人を超えるパフォーマーが登壇へ

カナダ館のステージ(大塚圭一郎撮影)
カナダ館のステージ(大塚圭一郎撮影)

 館内にはステージも設けられ、カナダの音楽家といった120人を超えるパフォーマーが登壇して幅広い演目を披露する。6月6月にはカナダ人ジャズピアニストの故オスカー・ピーターソン氏の功績をたたえて国立芸術センター交響楽団が演奏。7月にはカナダ人と日本人がストリートダンスのショーを披露し、8月には先住民アーティストに焦点を当てる。

 ピーターズさんに商談や会議、パーティーなどに使う空間「コラボレーションスペース」に案内していただくと、割りばしを再利用して製造したテーブル、壁に貼った再利用可能な木材パネルといった環境負荷低減に配慮した部材が広く使われていた。来場者が目にする展示でも、バックヤードでも、コンセプトの「再生」を徹底したカナダ館は、持続可能性を追求するカナダの真摯な姿勢が貫かれていた。

コラボレーションスペースにある割りばしを再利用して製作したテーブル(大塚圭一郎撮影)
コラボレーションスペースにある割りばしを再利用して製作したテーブル(大塚圭一郎撮影)

 大阪・関西万博の期間は25年10月13日まで。来場には、万博の入場チケットが必要となる。日本での大規模万博の開催は2005年の愛知万博(愛・地球博)以来、20年ぶりとなり、今回で6回目。過去最高の158カ国・地域が参加した。

パークスカナダの「パーカ」(右)と筆者
パークスカナダの「パーカ」(右)と筆者

(文・写真:共同通信社経済部次長〈前ワシントン支局次長、元ニューヨーク支局特派員〉・日加トゥデイ連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者 大塚圭一郎)

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